Googleの行動規範であり意思決定の要「Do the Right Thing」
田中:前編に続き、3つ目の話題に移らせてください。Googleはなぜこれほどまでに速く、かつ継続して成長できるのかということです。その成長の秘密をGoogleさんのカルチャーの面からお話しいただければと思います。
この記事で紹介しているGoogleのカルチャーを形成する行動規範や考え方とマーケティングの原則
1.Do the Right Thing:Googleのミッションを具現化する行動規範
2.Think Big:Googleのイノベーションを支える中核的な哲学の一つ、「Think 10X」はその発展形
3.20%ルール:社員の自律性と創造性を向上させる働き方
4.Know the User, Know the Magic and Connect the Two:Googleにおけるマーケティングの大原則
Geminiを使い、いわゆるGAFAMのCAGR(年平均成長率)を遡れる範囲で算出し、比較してみました。5社の中でもっとも高いのはMeta(40.0%)なのですが、Metaは割と歴史が浅いので脇に置かせていただきます。GAFAMの中でその次に高いのはGoogleで、CAGR19.6%です。ここまで高い成長率を継続しているというは驚異的です(※CAGR算出については末尾を参照)。その背景にGoogleの組織文化やカルチャーがあるのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。
岩村:確かに組織カルチャーは、Googleの成長のドライバーの基盤となっています。そのカルチャーの中でも、ミッションや価値観を大切にするという点が重要だと思います。
Googleにはもともと世界中の情報を整理して、誰でもアクセスして使えるようにするというミッションがあります。

この壮大なミッション実現にあたっての行動規範や考え方を、創業間もない頃から「Googleが掲げる10の事実」としてまとめていますが、日常業務の中で最も頻繁に援用されるのが、User First、Do the Right thingです。
ユーザーにとって正しいこと、世界にとって正しいことをする。このモットーは、Googleのブランド形成に寄与しています。この規範があることで、どちらの意思決定がユーザーにとっていいかという基準で物事が決めやすくなる、つまり意思決定もしやすくなるのです。
10%成長ではない、10Xを目指す「Think 10X」のカルチャー
岩村:もう1つ、イノベーションを生み出すカルチャー形成も重要です。「Do the Right Thing」と両輪になりますが、「大胆に考えよう」というカルチャーです。Googleは、イノベーションは1人の天才が生み出すものではなく、多様な人材によるチームで生み出すものと考えています。そのために重要なのはやはりカルチャーです。
また、カルチャーを守り育てることは、トッププライオリティの一つで、そのためのコミュニケーションにトップマネジメントが時間を多く使っています。毎週CEOがライブストリームで全社集会を行っているんですよ。
田中:イノベーションに関して言うと「Think 10X」という考え方があるそうですが、それについても教えてください。
岩村:Think10Xとは、10%ではなくて10倍で考えようという意味です。たとえば、10%成長を目指そう、というと既存の路線で考えてしまいます。ですが、10X=10倍となったとたん、まったく違うアプローチを考えなくてはいけなくなりますよね。
交通事故による死傷者を10分の1に減らすためには、多くの事故の原因となるドライバーの不注意をなくなさければならない。そこで自動運転という発想が生まれ、Waymoというイノベーションにつながるわけです。