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MarkeZine Day 2025 Autumn

世界動向の先を読む「もう1つの視点」

AIに勝る共感コンテンツ産業への投資 広告会社ADK事業買収と「電通S&E」事業の転換

電通Gが仕掛ける、アニメ×スポーツのグローバルプラットフォーム

 「電通S&E(スポーツ&エンタメ)」の事業展開は、世界初の事業起案であり、以下の点で世界的に見ても特異な高い事業成長ポテンシャルを有している。

1.「文化×スポーツ」の融合が生む、巨大なのグローバル市場

 電通S&Eの最大の特徴は、アニメ・ゲーム・音楽・映画・ドラマなどの「文化コンテンツ」に加え、オリンピックやMLB、サッカーリーグなどの巨大「スポーツコンテンツ」と融合させ、一つの市場として捉えている点だ。

 これはNetflixが「文化=完パケ番組」コンテンツに強みを持つ一方で、ライブスポーツでは後れを取る状況と対照的である。ライブ(生)で共有される興奮や感動は、「共感」の引力が最も高まる。この領域を取り込むことで、電通はAmazon、Apple、Googleといったスポーツ放映権に兆円規模の投資を行うメガプラットフォームと同じ土俵に立つことが可能だ。

 事実、DisneyやAmazonなどが、今年度だけで合計約12兆円という巨額を投じてNBA放映権契約を結ぶなど「文化×スポーツ」の融合市場に積極的に舵を切っている。

2.買収に頼らない「双方向」のグローバルプラットフォーム

 従来の日本発コンテンツが「輸出」という一方向モデルであったのに対し、電通S&Eは世界21ヵ国・約1,300社に及ぶ既存のクライアントネットワークを基盤とした、各国とコンテンツを繋ぐ双方向プラットフォーム(ハブ)を構築しようとしている。この既存資産を「Re-build(再構築)」して新たな価値事業を生む戦略は、企業買収(M&A)に伴う巨額の「のれん償却」といった経営リスクも回避できる。オーガニックかつ持続的な成長モデルだ。

3.他社にはない独自の優位性

 世界の競合広告代理店グループ(WPP、Omnicom、Publicisなど)と比較しても、この「文化×スポーツ」事業領域において、「長年の実績」「多様なコンテンツホルダーとの関係」「グローバルネットワーク(拠点)」の三つを兼ね備えているのは、電通グループだけである。これは一朝一夕には模倣できない、極めて強固な参入障壁だ。

AIとの両輪で「共感の経済圏」を築く

 マーケターや広告企業がこれから目指すべき姿は、AIか人間か、という二択ではない。単なるメッセージ配信や広告アウトプットの効率化、AI投資によるデータプラットフォーム構築や分析・運用代行を目的としたものでもない。「AIによる効率化」を土台に「人間ならではの価値創造」という二つのエンジンを両輪として駆動させることである。

 さらに、新たに見えてきたのは、人と人との「蓄積された価値観(過去)」+「相互」+「ライブ(生の瞬間)」の間に広がる“共感”の経済圏だ。これはブランドの事業成長という成果も生み出す。

 「AIによる効率化」と共に、日本企業が持つ「エンタメ(アニメ)」と「ライブスポーツ」の共感経済圏を活かすことは、グローバル競争おけるエンジンとして、既に競争優位(プレミアム)に動いている実例の紹介としよう。

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/22 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49698

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