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アプリ成熟期こそ、広告の活用を。CyberZとMetaがリエンゲージメントに注目する理由

 アプリLTVの最大化は多くのマーケターにとっての課題だが、既存顧客に向けた施策は「CRM以外の選択肢がない」と考えている担当者は少なくない。しかし、アプリマーケティングにおいて国内トップレベルの知見を持つCyberZとMetaは「リエンゲージメント広告の活用が重要」との考えを示す。それはなぜか? CyberZで広告の提案や実運用を担当する藪下氏と、Metaで日本市場におけるアプリ広告の推進に携わる髙橋氏を取材した。

アプリマーケで今、リエンゲージメントが注目される理由

━━そもそも、アプリマーケティングにおけるリエンゲージメントとはどのようなものですか?

藪下:休眠ユーザーに再度アプリの利用を促すことを目的とした広告で、継続的なエンゲージメントとLTV最大化を図ります。リエンゲージメント施策は特に、アプリの成熟期において、ユーザー維持と収益貢献を強化する上で重要な取り組みです。

アプリリエンゲージメント広告
アプリリエンゲージメント広告

 アプリリリース後は新規ユーザーの獲得を、サービスが成熟期に入った段階でリエンゲージメント広告により休眠ユーザーの復帰を促すイメージです。サービスの形態や業種によって異なりますが、新規ユーザー獲得の広告と比較して50%以下のコストでアクティブユーザーの獲得が可能です。

株式会社CyberZ 広告代理事業部 パフォーマンス本部マネージャー 藪下 拓也氏
株式会社CyberZ 広告代理事業部 パフォーマンス本部マネージャー 藪下 拓也氏

━━なぜ今、改めてリエンゲージメント施策の提案を行っているのでしょうか?

藪下:アプリマーケティングにおいて「広告を活用して休眠復帰を促す」という考え方は、特にiOSデバイスに対しては、最近まであまり浸透していなかったと感じています。その背景には、プロダクトサイドでソリューションが整備されていなかったという事情がありました。しかし直近では、プッシュ通知や会員向けメール配信といったCRMと比較して、広告配信のほうが休眠復帰単価を抑えて獲得できることがわかっています。また、CRMではアプローチできなかったユーザーに対しても改めてアプローチが可能です。

髙橋:CRMはもちろん重要ですが、CRMのみの活用に限界を感じられている広告主様は少なくないですね。アプリをアンインストールしてしまっている方や、メールを見ない方、その他のアプリにより通知が埋もれてしまっている方など、CRMのみではアプローチしきれないケースが多く存在します。

 実際にリエンゲージメントに対する興味も高まっていると感じています。2025年6月にリエンゲージメントをテーマにしたセミナーを実施したところ、参加者の方々の満足度は97.3%の結果と高く、このセミナーをきっかけに「早速リエンゲージメントを始めたい」と話される大手アプリの広告主の方もいらっしゃいました。

Metaによるリエンゲージメントの“解”

━━多くのプラットフォームがリエンゲージメント施策に対応している一方で、ATT(App Tracking Transparency)の影響で計測のハードルが上がっているのが現状かと思います。その課題をどのようにクリアしているのでしょうか?

藪下:リエンゲージメントに価値があるとはいえ、その効果に懐疑的な広告主様も少なくないと感じています。大きな要因のひとつとして、Appleが2021年に制定したATTによるプライバシー規制の影響が挙げられます。特にiOSにおいては、IDFA(Identifier for Advertisers)と呼ばれる広告識別子が取得できないユーザーに対するアプローチ手段が限られていました。

 しかし、AEM(アプリ合算イベント測定)というMeta社独自の計測フレームワークを活用することで、IDFAが取得できないユーザーに対してもプライバシーを守りながらリエンゲージ配信が可能になりました。

髙橋:AEMはiOS14以降のデバイスの利用者が起こしたWebイベントおよびアプリイベントの測定に使います。ATTの影響を受けながらも、ユーザーのプライバシー保護を行いながら、リアルタイムに結果を計測できる仕組みです。AEMを活用することによって、結果をリアルタイムかつSKAN(StoreKit Ad Network)の閾値の制限を受けることなく確認できるようになりました。

 また、AEMはDeep Linkと併用すると、より高い効果が期待できます。iOSでは、これまで広告の「アプリを開く」ボタンを押すとホーム画面に遷移していましたが、AEMとDeep Linkを組み合わせて使用することによって、ユーザーがクリックした広告から直接目的の画面まで遷移可能です。ユーザーフレンドリーであることはもちろん、コンバージョン率アップにもつながります。

Deep Linkを活用したリエンゲージメント広告
Deep Linkを活用したリエンゲージメント広告

 このようにAEMを活用することで、広告主様は施策のPDCAサイクルをよりスムーズに回せるようになり、かつアプリのインストールからリエンゲージメントまで、すべてのマーケティングのフェーズにおいてMetaがビジネスをサポートすることが可能になりました。

休眠ユーザー限定の配信、インクリメンタリティでの評価が可能

━━ここから、Metaを用いたリエンゲージメント配信の概要と、具体的な活用事例を教えていただけますか。

髙橋:最新情報の認知を広げたい場合や、実際の商品購入を促したい場合など、目的に合わせた最適化を行うことができます。EC、ゲーム、総合情報発信系のアプリで活用されているケースが多いです。

Facebook Japan合同会社 エージェンシーパートナー 髙橋 直也氏
Facebook Japan合同会社 エージェンシーパートナー 髙橋 直也氏

 広告主様の中には、ロイヤリティユーザーに広告を配信してしまうのではないかという懸念を持たれている方もいると思います。それに対してMetaでは、一部のMMP(Mobile Measurement Partner)と連携し、最大で、直近180日間ログインしていないユーザーに対してのみ配信する機能を提供しています。また、アプリ側から情報を提供していただくことで、広告主様の規定する“ロイヤルユーザー”をピンポイントで除外した配信を行うことも可能です。

 加えて、広告によって⽣じた純増ROIを測定し、どの戦略が最も⾼いパフォーマンスを出しているかを判断するためのテスト⼿法「コンバージョンリフト」を活用いただけます。インクリメンタリティ(純増分)は実験的⼿法を⽤いて計測される値で、広告が存在することによりもたらされた純増のコンバージョンを理解するための指標です。

インクリメンタリティを計測する手法:コンバージョンリフト
インクリメンタリティを計測する手法:コンバージョンリフト

藪下:再起動するだけではなく課金もしている、または継続率が高いといった深いところまで考慮する場合、どの広告を見て、もしくは見なければその行動を起こさなかったのかという観点は重要です。

 当社は、広告主様のサービス形態やKPIに応じてラストクリックとインクリメンタルコンバージョンを総合的・多角的に評価するようにご提案しております。

ラストクリックとインクリメンタルの考え方
ラストクリックとインクリメンタルの考え方

トラフィック増加、売上拡大……目的に合わせたキャンペーンを実施

藪下:Metaのリエンゲージメント配信では「認知拡大」と「エンゲージメント向上」「トラフィック増加」「売上拡大」という4つの目的からキャンペーンを選ぶことができるのですが、当社では、特に「トラフィック増加」と「売上拡大」を目的とした配信を実施するケースが多くなっています。

配信のユースケース
リエンゲージメント配信のユースケース

 アプリ再起動単価を抑えながら休眠ユーザーの復帰を促すことだけを目的とする場合はトラフィック目的のキャンペーン配信を活用するケースもありますが、復帰後のLTVにKPIを置く場合においては売上目的のキャンペーンを選択することで高いパフォーマンスを発揮することが多いです。

 とあるサービスにおいてトラフィック目的と売上目的の2つのキャンペーンを比較検証しましたが、再起動単価の差分以上に購入転換率の差異が購入CPAへ影響している結果となりました。リエンゲージ配信においては新規配信と比較してROASも2〜3倍高い結果を残すことが多く、サービス成熟期におけるアプリユーザー全体のLTV最大化に十分寄与していると考えております。

CPAの比較
CPAの比較

 また、このようなパフォーマンスをATT規制の影響を受けるiOSにおいてもAndroid同様に残せていることが他のメディア配信と比較してもMetaの強みになっていると感じております。

新規向け・既存向けキャンペーンの予算配分をどう考える?

━━ここまで、リエンゲージメントの重要性と効果をお話しいただきました。しかし、「新規獲得には広告、既存顧客はCRMで育成」という方針をとる企業にとっては、予算の投下先が変わるため、実施に二の足を踏むケースもあるのではないでしょうか。

髙橋:ここでもインクリメンタルの考え方が鍵を握ると思います。Metaのコンバージョンリフト計測機能を活用することで、広告で追加的に生まれたコンバージョンを計測すれば、投資対効果を明確に示すことができます。

藪下:広告主様の中には、CRM担当のチームと広告運用のチームが分かれていることが多く、「既存ユーザーの獲得を広告で行うのは予算確保の観点からも難しい」といった率直なご意見をいただくケースも少なくありません。

 このような課題を解決する考え方のひとつとして、Metaのインクリメンタルアトリビューションを採用して既存ユーザー向け広告配信の有効性を確認しつつ、最終評価の段階では新規配信と同じ計測アトリビューション配下でそれぞれのKPIを設計することがサービス成熟期におけるLTV最大化には重要だと考えています。

髙橋:CyberZ様は、Metaのアプリ推進チームとともに「KAIZEN for APP」という取り組みを通じて、Metaの新規プロダクトの検証や、既存プロダクトの効果最大化に向けた仮説検証を行っております。クライアント様のビジネスKPIにあわせた最適な提案を行えるような準備を常にしていただいている印象を持っています。

藪下:リエンゲージメント配信の最適解をMeta様と議論しながら、一緒に模索しています。そういった意味でも、リエンゲージメント配信に関する最新情報をいち早く入手し、広告主様に提供できる環境が整っていますね。

1年前と比較して、大きな進化が起きている

━━最後に、リエンゲージメント施策を検討したい方へアドバイスを頂けますか。

藪下:まず、リエンゲージメント施策を一度も実施したことがない広告主様に関しては、ぜひ一度チャレンジしてみていただければと思います。リエンゲージ配信はスモールに試せる施策になってますので、一度実施してCRM施策との比較をすることで適切な打ち手を検討することに繋がります。

 その中で「設定方法が分からない」「KPI設計や重視すべき指標に迷っている」といった点については、当社が最大限サポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

 一方、過去にリエンゲージメント施策にチャレンジしており、当時はなかなか成果が出なかったという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

 特にMeta広告に関してはソリューションの進化が目まぐるしく起きており、1年前と比べても大きく進化しているため、現在の環境下において再度チャレンジを検討してみることを推奨しております。

髙橋:Web配信では、リターゲティングは一般的に使われている一方、アプリではまだ一般的とは言えません。

 今回お伝えしてきた通り、Metaではリエンゲージメントの効果をきちんと計測できる仕組みを用意していますので、施策に意味があるかを確認いただくことが可能です。実際にチャレンジいただければビジネスに大きなインパクトを与えるという実感が得られると思います。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社CyberZ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/49756