ブランドの“色”を出すためには非構造化データの活用が鍵
こうした時代の中で、ブランドの“色”を出すためにはどうすればいいのだろうか。その鍵となるのが、顧客の本音やブランドとの関係性といった情報が詰まっている「非構造化データの活用」だと座間氏は語る。

これまでのデータドリブン型マーケティングでは、購買データや行動データといった「構造化データ」を分析して、客観的な意思決定や業務効率化を進めていた。要は、構造化データから顧客ニーズを定量的に把握し、商品開発や施策改善に活かすことが一般的だったわけだ。
こうした取り組みはあくまで構造化データを中心とした分析・企画・実行が主流であった。一方で、世の中には、顧客との電話応対の音声データや口コミ・レビューの書き込み、店舗での接客内容など、構造化データ以上に圧倒的な量の非構造化データが存在しており、それをいかに活かせるかがブランドらしさや独自の価値を探るヒントとなる。
非構造化データ活用の成功ポイント
たとえば、あるECサイトではレビューコメントを収集・解析する仕組みを導入していたが、それだけではなぜ満足しているのか。あるいは、どうして不満に感じているかまではわからなかった。そこで、感情分析を取り入れた結果、「サイズ感が合わない」「商品は良いけど色が好みでない」といった細かい感情までを抽出することができ、商品改善のサイクルが数か月・数年単位から数週間単位に短縮することができたという。
また、電話やチャットの応対ログを解析することで、購入の決め手や迷ったポイントも可視化できる。インテリア商品を扱う企業では、「デザインが好き」と思っていた顧客が、実際には「配送が早いから購入した」といった理由が判明するなど、非構造化データを活用することで、構造化データだけでは見えなかった顧客のインサイトを可視化できるのだ。こうした分析をもとに、翌日配送サービスの導入や「すぐ届くインテリア」などの広告訴求を行うことで売上拡大に寄与できる。

今までは、定性的な非構造化データは分析が難しい領域だったが、AIの進化によって人間以上のスピードと精度で、顧客理解や施策立案につながる“気づき”を得られるようになった。まさに、ブランドの強みを再発見して、顧客体験を進化させていくには、非構造化データの活用が非常に大切になってくるのではないだろうか。
「これまでのマーケティングは、構造化データに基づく分析が中心で、取得できる情報も限られていたため、真の『One to Oneマーケティング』は難しかったと言えます。しかし、今後は非構造化データを活用し、その文脈や感情を理解したうえで、個々の顧客にパーソナライズされた体験に結びつける力が求められます。こうした手法によって、誰でもできるデータ活用の領域から脱却し、そのブランドにしか提供できない独自の価値や提案を実現できるようになります」(座間氏)

