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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2025 Autumn(AD)

楽天の1億ID×AIで広告配信の「WHO」はここまで変わる!顧客の過去~未来を捉える楽天のデータ革命

 国内で1億以上の「楽天ID」に基づく1stパーティデータを蓄積し、オンオフにまたがる大規模な経済圏を形成している楽天グループ。同社は、圧倒的なデータ量と独自のAI技術を掛け合わせ、広告事業を大きく成長させている。楽天の広告は、楽天市場の店舗だけが使うものではない。MarkeZine Dayでは、メーカー企業から非消費財企業まで多種多様な業界で広がる楽天の広告活用について、楽天グループの林雄之氏、前田恭典氏が講演を行った。

楽天市場出店者だけでない。多様な業種業界で広がる楽天の広告

 70超のサービスを横断した「楽天経済圏(楽天エコシステム)」を形成している楽天グループ。国内の楽天会員は1億超(2025年6月末時点)、国内ECの流通総額(GMS)は6兆円(2024年度)に達しており、その規模は圧倒的だ。

 この楽天経済圏で、楽天は購買・登録情報、行動情報などオンオフをまたぐ「FACT(事実)データ」を蓄積し、それらを楽天IDで束ねている

 こうしたデータ基盤の上に成り立っているのが、楽天の提供するマーケティングソリューションを集約した広告プラットフォーム「Rakuten Marketing Platform」である。楽天の広告と言えば、「楽天市場に出店している企業が使うもの」というイメージがあるかもしれない。しかし実は、消費財企業やメーカー企業だけでなく、金融・不動産・保険・教育などの無形サービス企業まで、幅広い業種・業界で活用されている。

MarkeZine Day に登壇した、楽天グループ株式会社 アド&メディアカンパニー 広告営業部 インダストリー営業課 シニアマネージャーの林雄之氏(左)と、マネージャーの前田 恭典氏(右)
MarkeZine Day に登壇した、楽天グループ株式会社 アド&メディアカンパニー 広告営業部 インダストリー営業課 シニアマネージャーの林雄之氏(左)と、マネージャーの前田 恭典氏(右)

 また、広告の配信面は楽天グループ内にとどまらない。2025年9月にリリースされた「RMP - Unified Ads Boost Reach」では、楽天グループ外のプラットフォームや提携メディアへの広告配信も可能になった。

 楽天グループが運営するサービスのプレミア枠に広告が配信できる「RMP - Unified Ads」上のユーザーは、主に楽天経済圏で活動している人が多く、楽天グループ以外のメディアとのリーチの重複率が低い

 提供開始前に先行して実施された検証では、「RMP - Unified Ads」と外部プラットフォームでリーチした人のID重複率はわずか7%、非重複率が90%超という結果が出たと言う。楽天のデータを活用し、楽天グループのサービス+楽天グループ以外のメディアの両方に広告を配信することで、リーチを大きく拡大することができる

 セッションでは続いて、楽天の広告の特長がわかる活用例がいくつか紹介された。

楽天のデータがあるから実現する、3つの精緻なターゲティング例

 前述のとおり、楽天の広告では楽天経済圏ユーザーが1つのIDでサービスを利用しているため、過去から現在までのオンオフデータを起点に、“現在の状態”を推定することができる。これにより、次のようなセグメントも作成可能だ。

過去の購買データを基に、子供の年齢を推定

 1つ目は、子供の年齢を推定し、配信セグメントを作成するケース。たとえば2021年にランドセルを購入した層なら、当時6歳と仮定して、2025年は小4(10歳)となる。このように、過去の購買データから現在の年齢/学年を推計してターゲティングできるのは楽天だからこそ。主に教育系商材や金融系の商材で有用なケースだ。

 20年以上にわたり運営してきた楽天市場で蓄積された購買データは、遡ることができる。ある層のデータを活用して子供の年齢を推定するだけでなく、ユーザーのライフステージを推定してターゲティングすることも可能だ。

「楽天ふるさと納税」での行動データから富裕層を特定

 次に、推計の収入額から富裕層を特定するケースが紹介された。たとえば、「楽天ふるさと納税」における直近の実行動を手がかりにすると「年間20万円の返礼品申し込みがあったから、年収約1,200万円だろう」という具合に推定できる。他にも、楽天銀行や楽天カードなどの会員情報などに基づいた広告配信も可能だという。

オフラインのID-POSデータと楽天IDを掛け合わせ、店頭購買まで計測

 さらにID-POSデータを活用したターゲティングも、全国スーパー、ドラッグストアの約6,000万人のデータを扱うTrue Data社との協業により実現している。True Data社のID-POSデータベースと楽天IDを連携し、セグメント作成、広告配信、オフラインとオンラインでの購買計測、分析・レポートまでを行うという仕組みだ。

 腸活ヨーグルトの広告施策を例に挙げると、考えられる4つのセグメント(下図)のうち、「2.競合商品購買者」や「3.類似ジャンルの購買者」のセグメントを作成することが可能となる。また、YouTubeなどで広告を配信した後、実際に店頭で商品が購買されたのかを計測することもできる

 具体例として、食パンメーカーが「自社製品を買った人」と「競合商品を買った人」の2つのセグメントでYouTube広告を配信した結果、約1.45倍の購買リフトが出た事例も紹介された。

楽天、第4の挑戦は「AIの民主化」 AIで未来の購買者の予測まで可能に

 楽天は、「ECの民主化」「フィンテックの民主化」「携帯電話市場の民主化」に続く第4の挑戦として「AIの民主化」を掲げている。「全ての楽天社員がAIを使いこなせるように」という方針のもと、マーケティング/オペレーション/クライアント効率を20%向上させる「トリプル20」の目標が掲げられているそうだ。

 「まずは社内でAIを使い倒す。その上で、お客様のマーケティング現場でも役立つ形で、楽天のAI技術を提供しています」(林氏)

 講演では、楽天のAI技術を活用した2つのソリューションが紹介された。

圧倒的なデータ量からAIが購買傾向を導き出す「SQREEM」

 「SQREEM」は、AIによる行動パターン分析技術を用いた運用型の広告アセットである。旧来の手法では扱えない膨大な量のデータをAIに分析させ、人間の行動パターンを抽出する独自の手法が用いられている。

 具体的には、「SQREEM」が作成したペルソナと、主要メディアの配信セグメントを紐づけて、ウェブ広告のパフォーマンスを向上させる。この時、「SQREEM」が選定するセグメントは、人間の勘や経験、想像を大きく超えてくるという。

 たとえば、ウォーターサーバーの広告を配信する時、読者ならどのようなセグメントを選定するだろうか。美容や健康に関心がある人をターゲットとし、サプリメントや美顔器などの購買者からセグメントを選定するかもしれない。

 ところが、「SQREEM」が選定したセグメントでは、「教育」に関心のある人がターゲットにされていたそうだ。人間の理解を超えてくるセグメントではあるが、実際に配信してみると、下図のようにCPAが15%も改善したという。

 「教育というキーワードでウォーターサーバーの広告配信のセグメントを作成する――これはなかなか人にはなかなか思いつかないキーワードです。SQREEM では、人が思いつかない切り口で、本当の潜在層にリーチすることができます」(林氏)

近い将来CVするユーザーを予測する「未来購買予測」

 続いて紹介されたソリューションは「未来購買予測」。近い将来CVする確率の高いユーザーを予測し、広告を配信することができる。

 方法としては、楽天が蓄積するデータと、広告主が蓄積するデータを機械学習にかけ、CVする可能性の高いユーザーをAIでスコアリング。スコア上位を配信リスト化して、楽天内外の媒体で広告配信に活用する。

 AIはどのようなデータを学習させるかが肝心だが、未来購買予測の場合はCVユーザーと非CVユーザーのデータを収集し、学習させている点がポイント。学習用の自社データが少ない場合も、楽天の保有データだけで学習・配信まで実施できるメニューが用意されている。

 たとえば、「未来購買予測」を活用し、近い将来不動産を購買する可能性があるユーザー層を分析すると、「成約の約3年前から子育て関連の商品を購入している」「成約月の前後7ヵ月で家電や家具の商品検索をしている」といった傾向が明らかになる。

 住宅は展示場来訪の前にウェブ上で候補がほぼ絞られてしまうため、“顕在”の一歩手前にいる潜在層をいかに捉えられるかが重要だ。「未来購買予測」なら、近い将来の不動産購買者を予測することができる。

 実際に、食品メーカー、美容業種の企業が「未来購買予測」を活用した時には、下図のような成果が出たと言う。

 林氏は、「未来購買予測」を活用する時のコツとして「全セグメントに一律で投下するのではなく、CVスコアの高いセグメント、言わば“甘い部分”だけを先に試す方法がおすすめです。試験的に配信し、効果を確認してから、段階的に配信を拡張していくとよいと思います」とアドバイスする。他にも、CVスコアにデモグラフィックデータを掛け合わせ、ターゲット別に投資配分を調整すれば、自社の事業戦略に基づき中長期で顧客を育成していくこともできるだろう。

 マーケティングでは、LPの設計や広告媒体の選定・運用、効果検証、クリエイティブなどに関して、Howの議論が活発に行われている。しかし、誰に広告を届けるかという「Who」の部分はあまり議論されていないのではないかと、前田氏は指摘する。

 これまで深く考えられてこなかった「Who:ターゲティング/セグメントの設計」にこそ、広告成果をさらに改善できる可能性があるかもしれない。

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この記事の著者

中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

 株式会社エヌプラス代表取締役

 デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:楽天グループ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/25 11:00 https://markezine.jp/article/detail/49881