広告を“体験の延長”に。サッポロビールが実践したクリエイティブ戦略
MZ:具体的な施策内容を教えてください。
堀内(サッポロビール):アーティストの書き下ろし楽曲を起用した新CMと、連動した限定デザイン缶のローンチに合わせ、Jリーグの1試合でDAZNの「FanZone」を活用したプロモーションを実施しました。具体的には、CMと同じクリエイティブを配信したほか、試合の盛り上がりに合わせたモーメント連動型の広告や、投票機能を使ったインタラクティブな施策などを展開しました。
MZ:ゴールの瞬間に“乾杯”を促すようなクリエイティブもあったそうですね。複数パターンを用意していたのでしょうか。
堀内(サッポロビール):はい。FanZoneの良さは、感情が盛り上がる瞬間に自然なブランド接点を持てることだと考え、ハイライトに同期したクリエイティブを複数用意しました。ゴールや好プレーといった熱量が最高潮に達する瞬間に寄り添うことで、コミュニケーションが“押しつけ”ではなく“体験の延長”として受け取られることを狙いました。
MZ:施策を実施するにあたり、特に意識・工夫された点についても教えてください。
堀内(サッポロビール):今回の施策では、体験を重視し、楽しい観戦体験の横に黒ラベルがそっと寄り添う設計を重視しました。たとえばFanZoneの投票機能ではブランド色を出し過ぎないことを意識し、「黒ラベルのイメージは?」といった直接的な問いではなく、「ついビールに手が伸びる瞬間は?」のように、観戦を楽しみながら思わず参加したくなる設問を心がけました。
ファンの心を動かす体験の裏側。DAZNが「感情のピーク」を作る仕組み
MZ:FanZone施策において、DAZNのクライアントサポートの体制やメニューについて教えてください。
酒井(DAZN):技術面では、イスラエル拠点のDAZN Xという開発チームが各地域のニーズに応じたFanZoneの開発にコミットしています。ブランドやユーザーのニーズを素早く取り込み、機能を最速で進化させられる体制がDAZNの大きな強みです。
サービス面は大きく2つあります。1つ目は、グローバル事例の即時共有で、海外で生まれた成功事例をすぐに日本へ展開できます。現在グローバルでは「Daily Challenges」というクイズ機能が実装済みで、ユーザーが毎日DAZNを訪れた際にブランドと楽しく接点を持てる仕組みが動き始めています。こうした新機能が日本でも続々登場予定で、ブランドとファンが継続的に触れ合える接点を広げていきます。
2つ目は、シナリオの設計支援です。視聴者の感情の動きに寄り添い、ブランドのKPI達成に繋げるシナリオを事前にご提案します。たとえば「このタイミングでは投票」「ブランド色をもう少し薄めたほうが参加しやすい」といった演出を設計して実装まで並走します。
サッカーでいえば、ゴールの瞬間はもちろんですが、判定が揺れるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の場面なども感情がピークに達しやすい瞬間です。そこに合わせた表現を用意することで、体験が記憶に残りやすくなります。ライブ中継の最中に自在な表現ができる点は希少な価値だと考えています。