2.繰り返すから記憶に残る、「Uber Eatsで、いーんじゃない?」シリーズ
山田:続いて紹介するのは、Uber EatsのテレビCM「Uber Eatsで、いーんじゃない?」シリーズです。こちらも福里さんがセレクトした広告でした。
福里:このシリーズは非常にユニークですよね。通常、広告主は商品やサービスを伝える時、「◯◯がいい!」と断定的に伝えたがるものですが、Uber Eatsはあえて「で、いーんじゃない?」と軽く提案するコピーを選んでいます。
さらに面白いのは、毎回「Uber Eatsを選ばなかったことで起きるマイナス」をユーモアたっぷりに描き、最後にそのコピーで落とす構成にしていること。積み重ねるほど視聴者に刷り込まれ、次回作を楽しみにしてもらえる仕掛けになっています。
三浦:「続ける」ことの力は一定あると思います。広告は単発の「点」で評価されがちですが、シリーズとして続けることで「線」になり、さらに「面」としてブランドを広げていける。Uber Eatsのシリーズはその好例ですね。
広告ってつい「銀座でシャンパンを開ける時」のように、派手に展開して、終わらせがちじゃないですか? でも銀座で本当に楽しもうと思ったら、通い続けて「あの人すごいよ」って認知されないといけない。広告も同じで、積み重ねが大事だよなと思うわけです。
福里:テレビCMが「もう効かない」と言われる時代でも、こうして続けることで、蓄積できるものがある。同じ手法で成功している例として、タクシーアプリ「GO」の広告もあります。竹野内豊さんがずっと「どうする?」と問い続けているので、「そろそろ学びなさいよ」と突っ込みを入れつつ(笑)、繰り返すから記憶に残るんですよね。
3.広告でも民主化が進んでいる?FRUITS ZIPPER センイル広告
山田:次に私から紹介したいのが、「センイル広告」です。センイル広告とは、韓国発祥で、ファンがアイドルや推しのために駅や街頭に掲出する、いわゆる応援広告のこと。今回は、アイドルグループ「FRUITS ZIPPER」の真中まなさんを応援する巨大広告が原宿・表参道に掲出され、制作委員会が数千万円規模の費用を投じたことでも話題になりました。当日ご本人が現地に立ち寄り、SNSに投稿したのもファンの熱量を示す象徴的な出来事でした。

従来、広告はメーカーや企業が出すものというイメージが強かったですが、今はファンや市民が自発的に発信できる時代。広告の裾野が広がっている証拠だと思います。
福里:広告の「民主化」が進んでいるとも言えるかもしれないですね。
三浦:実は僕らの会社でも「AD FOR ALL」という、応援広告を出したい人が利用できるプラットフォームを立ち上げています。広告って本来、みんなが遊んでいいものだったはず。今は炎上などネガティブな話題に引っ張られがちですが、それも一種の「いじり」と捉えれば遊びの一部です。そういう意味でいうと、広告を使って世の中と戯れることが、これからもっと面白くできる時代になるのではないでしょうか。
福里:センイル広告に限らず、「世の中の広告つまらないな、じゃあ自分が面白い広告やっちゃえ」みたいな人が現れてもいいわけですよね。
三浦:そうですよね。意見広告のように、自分の思いを表明する形でもいいと思います。メディアに投資する経験は、人生で一度くらいやってみる価値がある。その入口をつくったという意味でも、この流れは素晴らしいと思いますね。