ワーカーと事業者に対応するプラットフォームの難しさ
――最初に中川さんの経歴とタイミーでのミッションを教えてください。
中川:タイミーには2020年3月に入社しました。それ以前は広告代理店、IT事業会社、タクシー配車アプリGOの前身であるJapanTaxiとメルカリで働いてきました。図らずも、ツーサイドマッチングプラットフォームが続いていますね。
タイミーでのミッションは、アルバイトを探すワーカーに対してはマッチングの創出とそこにつなげるための態度変容を起こすこと、求人を出す事業者に対してはリードの獲得です。
――タイミーが、従来のアルバイト求人プラットフォームと大きく異なる点は何でしょうか。
中川:働くまでのハードルを大きく下げた点です。従来は、派遣や単発アルバイトに応募する際に説明会への参加や登録手続きが必要だったり、面接を経て翌月のシフトを提出したりと、働き始めるまでに時間がかかりました。さらにお給料の振り込みは1ヵ月先になります。さらにミスマッチが生じても、長い手続きを考えると妥協してしまいがちです。創業者の小川嶺がそうした時間を全部カットできないかと考えたことからタイミーが生まれています。
――ツーサイドプラットフォームは双方の課題が異なる点が難しいと言われますが、どのようにしてタイミーを軌道に乗せてきたのでしょうか。
中川:タイミーはマーケティング側がワーカーの応募を増やすよう務め、セールス側で利用する事業者を増やしています。おっしゃるとおり、どちらも変数となる中でマッチングを作っていかないといけない点に難しさがあります。
創業からしばらくは資本も人手も限られ、リソースが分散するとなかなかマーケットが立ち上がらないため、商圏を東名阪に絞っていました。そうして商圏の中でマッチングを作り、徐々に47都道府県へと拡大していきました。
単発から発展する、ワーカーと事業者の理想的な関係
――中川さんは、ワーカーと事業者の理想的な関係をどのように考えていますか?
中川:単発アルバイトのマッチングを超えて、継続的な関係になることです。タイミーはその仲介役と考えています。まずは事業者の人手不足が単発で解消され、その際にまた働いてほしいと思ったワーカーと関係を形成し、長期雇用に転換できないか声をかけるといった流れが理想ですね。
一方でワーカーの方に話を聞くと、お金を稼ぐという基本的な価値だけではなく、職場に行って「来てくれてありがとう」と言われて貢献した実感を得られたり、そこで人間関係が生まれたりすることにも価値を感じてくれています。我々は、そうした良い関係を最大化することが役割だと思っています。
――そのためにプロダクトとして工夫している点はありますか。
中川:事業者がまた来てほしいと思ったワーカーをブックマークする機能があり、その人たちだけに向けて求人を出すことができます。
――ワーカーからは、事業者が特別に選んだメンバーに出した求人だとわかるのですか。
中川:はい、特別なオファーだとわかるUIになっています。それをモチベーションに感じて応募してくれるケースもあります。準レギュラーのような形で、同じ事業者に何度もアルバイトに行くワーカーも少なくありません。
他に工夫している点としては、レジや調理といった経験に応じてバッジ機能を設けることで、ワーカーのスキルを可視化しています。これにより事業者とのマッチング精度を上げるのはもちろんのこと、「これだけのスキルを持つ人には時給をいくら以上お支払いしてください」と条件交渉ができるようになります。ワーカーのスキルに応じて時給を上げられるように取り組んでいます。

