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なぜ、エバラ食品「プチッと」シリーズは売上が伸び続けるのか?鍵は“汎用性”と戦略パートナーにあり

 2013年の発売以来、快進撃を続けるエバラ食品の「プチッと」シリーズ。『プチッと鍋』は、個食鍋つゆ市場でトップシェアを確立している。さらに同シリーズをうどん、中華へとカテゴリーを拡大し、2025年4~9月期では前年に比べて126.9%(※インテージSRI+推計販売金額)という高い成長を記録。その裏側には、単なる広告制作に留まらない、事業課題に深く並走するパートナーの存在があった。FIELD MANAGEMENT EXPAND(以下、FMX)が提供する「戦略・クリエイティブ・制作」の一貫体制は、なぜブランドの成長を加速させるのか。長期パートナーシップが生み出してきた、“売れる仕組み”に迫る。

個食化に応え市場席巻する「プチッと調味料」

──まず、今やエバラ食品を代表するブランドの一つとなった「プチッと」シリーズの概要と、現在の市場での状況についてお聞かせください。

湯川(エバラ食品):「プチッと」シリーズは、2013年に発売した「プチッと鍋」から始まりました。ポーション容器の中に1人前のお鍋の素が入っているのが特徴で、その後、うどん用調味料や、1人分から作れる中華調味料などへとラインアップを広げています。

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エバラ食品工業株式会社 クリエイティブ本部 副本部長 兼 Core Lab長  湯川恭彦氏

湯川(エバラ食品):おかげさまで、「プチッと鍋」は個食鍋つゆ市場で、「プチッとうどん」は個食うどんつゆ市場で、それぞれナンバーワンのシェアを獲得しています。昨今の世帯人数の減少といった外部環境の変化にうまくマッチし、お客様から非常に大きな支持をいただいていると感じています。

──「黄金の味」に代表されるように、エバラ食品といえば「ファミリー向け商品」に強いというイメージがあります。「プチッと」シリーズは、事業の中でどのような位置づけになるのでしょうか。

湯川(エバラ食品):確かに、これまでは家族団らんのイメージが強い商品が中心でした。しかし、実は「黄金の味」(1978年発売)も、ホットプレートの普及とともに家庭で焼肉を楽しむ文化が広まるという、当時の生活者の変化に対応した商品だったのです。その時代時代の生活者に寄り添ったモノ作りをする、という精神は創業以来一貫しています

 「プチッと」シリーズも、1人前から大人数まで、現代の多様な食シーンに柔軟に対応できるという点で、その精神を受け継ぐ商品だと考えています。

個食だけでなくファミリーにも、鍋だけでなく炒め物にも

──「プチッと」シリーズの売上伸長の背景にある、マーケティング戦略について教えてください。どのような課題認識からスタートしたのでしょうか。

山田(エバラ食品):「プチッと鍋」を発売した当初は、個食鍋という市場自体がまだ黎明期でした。そのため、まずは「1プチッと1人前」というコンセプトを軸に、人数に合わせて使える利便性を訴求することから始めました。

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エバラ食品工業株式会社 Core Lab 宣伝課 課長 山田俊輔氏

山田(エバラ食品):その後、個食鍋つゆ市場が成長する中で、個食の訴求だけではファミリー層を取りこぼしてしまう、という次の課題が見えてきました。そこで、「1プチッと1人前、3プチッと3人前」というコピーを打ち出し、個食からファミリーまで、あらゆる世帯で使っていただける商品だと訴求する方向に舵を切りました。

──近年は、「夏の長期化」という課題にも対応されているそうですね。

山田(エバラ食品):以前は、8月下旬頃から「プチッと鍋」のCMを流し始めていましたが、近年は記録的な猛暑が続いており、以前のように鍋商戦が盛り上がらなくなっています。そこで、「まだまだこんなに暑いのに、グツグツ煮える鍋のCMを見ても食べたいと思えないだろう」と考え、「プチッと鍋」を使って「肉野菜炒め」が作れるという“汎用メニュー”を訴求するCMを2024年に制作。

 これが功を奏し、同年9月の売上が非常に好調に推移。スムーズにシーズンインできました。鍋だけではない便利さを伝えていければ、夏や春などシーズン外でも商品を手に取っていただける。今後も、「汎用性」は重要なキーワードとなっていきそうです。

──プロモーションはテレビCMが中心ですか?

山田(エバラ食品):そうですね。特に流通の現場では、テレビCMの有無が商品の導入に影響することも多く、重要な役割を担っています。ただ、「プチッと」シリーズは、「黄金の味」の購買層(50~60代)と比べてやや若いので、デジタル施策にも力を入れています。特にYouTubeはリーチ単価の効率も良く、若年層へのアプローチを強化しています。

インサイト調査に基づいた「考える素地」を用意

──エバラ食品様の戦略に対し、FMXは長年のパートナーとして、どのようにCM・クリエイティブに落とし込んできたのでしょうか。

若林(FMX):エバラ食品さんとのお取り組みは、2018年の「浅漬けの素」のCM制作から始まりましたが、その時々の課題に応じて柔軟に対応することを大切にしています。

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株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND アカウントディレクター 若林豊氏

若林(FMX):「プチッと鍋」で最初に手掛けたCM(2018年)は、CMキャラクターである俳優の瀬戸康史さんが楽屋でお母さんに電話しながら1人鍋をする“個食”をテーマに制作。そこからファミリー層にも広げていくタイミングでは、「3プチッと3人前」というコピーを軸にしたクリエイティブをご提案しました。

 近年の夏の長期化という課題に対しては、「鍋」と「汎用(肉野菜炒め)」の2本立てでCMを制作したいというご依頼をいただきました。そこで私たちは、瀬戸さんが実際に厨房に立ち、フライパンを振るう「実演調理」という企画をご提案しました。

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『プチッと鍋 実演篇 寄せ鍋』篇

湯川(エバラ食品):この「実演CM」は、意外にも男性からの反応が非常に良かったです。放映後の調査では、男性視聴者から高い好感度が得られていることがわかり、新しいお客様の獲得にもつながる手応えを感じました。

──エバラ食品は、FMXの支援内容をどのように評価されていますか。

山田(エバラ食品):一貫しているのは、クリエイティブにしっかりとしたロジックがあることです。クリエイティブはどうしてもクリエイターの感性やエモーショナルな部分が強くなりがちですが、FMXさんは提案の裏側に必ずインサイト調査に基づいた「考える素地」を用意してくださる。「なぜこのクリエイティブなのか」という理由が非常にわかりやすく、我々も納得して前に進むことができます。

──その「考える素地」というのは、具体的にどのようなものでしょうか。

若林(FMX):私たちの社内には、事業戦略の知見を持つプロフェッショナルで構成された、専門のプランニングチームがいます。クリエイティブのアイデアを考える前に、まずそのチームがインサイト調査を行い、「各市場にはこういうイメージがある」「だから、こういう言葉で語るべきだ」という戦略の骨子を固めます。そのアウトプットを土台にしてクリエイティブを開発していくので、ご提案がブレないのだと思います。

 2022年の「プチッとうどん 釜玉うどん篇」では、当時、ブリーフにあったターゲット像をもとに調査を行ったところ、「子育て中のお母さんは、自分のお昼ご飯を簡素に、でも美味しく済ませたい」という強いインサイトが見つかりました。そこで、「お昼、カンタン、それもいい。」というメッセージを軸に、ランチシーンに特化したCMをご提案しました。このように、インサイトを起点にクリエイティブを開発することで、メッセージの精度を高めています。

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『プチッとうどん 釜玉うどん』篇、『プチッとうどん 具入り汁なし担々麺』篇

USPをシンプルに伝え、「食べたくなる」CMに

──「プチッと」シリーズは鍋にとどまらず、うどん、中華と横展開されていますが、CM制作で一貫して意識されていることはありますか。

山田(エバラ食品):すべてのシリーズで、「シンプルで、メッセージがわかりやすいこと」を最も大事にしています。数多ある商品の中から選んでいただくには、USPを15秒でいかにストレートに伝えるかが勝負です。もう一つは「シズル感」。鍋が煮えるシーン、お肉が焼けるシーン。食品CMである以上、まずは「1回食べてみたい」と思わせることがすべてのスタートだと考えているため、シズル感には妥協を許さないようにしています。

 また、「プチッと鍋」の認知度が高いからこそ、「『プチッと』なら、うどんや中華も美味しいだろう」と信頼していただけるような、ブランドを横断したコミュニケーションも意識しています。

湯川(エバラ食品):実際に購買データを分析すると、「プチッと鍋」を買われたお客様が「プチッとうどん」も買ってくださる、という良い循環が生まれています。CMのメッセージが一貫しているからこそ、シリーズのファンが増えているのだと実感していますね。

──シリーズのファンを増やしていく上で、特に手応えを感じた事例はありますか?

山田(エバラ食品):音楽に合わせて踊る明太子のキャラクターが登場する、「プチッとうどん」の「明太子うどん登場篇」はおもしろかったですね。SNSにお子さんがCMソングを歌っている動画がアップされたり、明太子のキャラクターの二次創作が生まれたりと、これまでのCMとは違う反響がありました。

 売上も非常に好調で、「明太子うどん」は放送直後に一時品薄になるほどヒット商品となり、現在では「プチッとうどん」シリーズ内で2位の売上を占めるまでに成長しています。

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『明太子うどん登場』篇

若林(FMX):プチッとシリーズではないですが、同じく瀬戸康史さんに出演いただいている、「なべしゃぶ」のCMは非常に印象深いですね。「千切りキャベツと豚肉で食べる」というエバラ食品さん発のメニュー提案が画期的でした。発売後、長期にわたって品薄になるほど大ヒットした時は大きなやりがいを感じました。

課題解決のため事業に並走する「戦略パートナー」

──FMXはご自身を、課題解決のための「戦略パートナー」と位置づけられています。クライアントと向き合う上で、最も大切にしているスタンスは何でしょうか。

若林(FMX):会社として「1人ひとりがプロである」ということを強く意識しています。私たちは、戦略からクリエイティブ、制作まで、それぞれの領域のプロが集まるクリエイティブプロフェッショナルファームです。単に良いクリエイティブを作るだけでなく、そのアウトプットが、湯川様や山田様が掲げる事業目標の達成にどう貢献できるのか。

 その視点を常に持つことが、パートナーとしての我々の責任だと考えています。状況は刻々と変化するので、そこにも柔軟に対応できるよう、並走していく姿勢を大切にしています。

──エバラ食品にとって、FMXはどのような存在ですか?理想的なパートナーシップを築くために意識されていることはありますか?

山田(エバラ食品):商流でいうと、どうしてもお金を払う側が「上」になりがちです。しかし、特にクリエイティブの領域において、その関係性は良いものを生み出さないと考えています。だからこそ、クリエイティブの方々とは常に対等な「横の関係」であるべきだと強く意識しています。上下関係では、本音で話せなくなり、結果として良いものは作れない。若林さんがおっしゃった「パートナー」という言葉が、まさに私たちの理想とする関係性です。

生活者視点で戦略を考える新組織「Core Lab」

──エバラ食品は2025年にマーケティング部門を「Core Lab(コアラボ)」へと再定義されました。ここに込められた意図と、今後のチャレンジについてお聞かせください。

湯川(エバラ食品):「Core Lab」は、生活者視点を起点に中長期の価値戦略を考えていく組織です。変化の激しい時代だからこそ、目先のトレンドに惑わされず、お客様が本当に大事にしている価値を見極め、新しいチャレンジを加速させていきたいと考えています。

山田(エバラ食品):具体的なチャレンジとしては、ブランドの若返りです。調味料はどうしてもメインの購買層が50〜60代になりがちですが、未来のお客様を育てるという意味でも、20〜30代の若い方々にもっと「プチッと」シリーズを使ってもらいたい。そのためのデジタル施策には、今後さらに力を入れていきたいですね。

──エバラ食品の今後のチャレンジに対し、FMXとしてどのように貢献していきたいとお考えですか。

若林(FMX):「プチッとだから買う」だけでなく、「エバラ食品だから買う」というお客様が、今よりもっと増えていってほしいと心から願っています。そのためのブランド作りやアクティベーションを、これまで以上に積極的にご提案していきたいです。

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この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/02/02 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50123