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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート(AD)

AI、データ、人間的なつながりが描く顧客エンゲージメントの未来【Braze Forge 2025】

まとめ:Culture, Authenticity, Empathyが導く次世代マーケティング

 最後にForge 2025全体を通じて語られた、テクノロジー以外のキーワードについて解説して本レポートを締めたいと思います。

 テクノロジーが急速に進化する現代においてマーケターに求められる資質と戦略の核となるキーワードは、Culture(文化)への理解、Authenticity(真正性)の提供、Empathy(共感)の実践です。

Culture(文化)への理解

 Brazeのカンファレンス、Forgeでは著名なマーケター、デジタルマーケティング実践者に加えて、外部のマーケティング専門家や、著名な学者の方の講演も行われました。その中で数々の受賞歴のあるマーケターであり、ニューヨークのワイデン+ケネディ社で最高戦略責任者を務めたミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスでマーケティングの教授を務めるマーカス・コリンズ博士の基調講演が行われました。

 マーカス・コリンズ博士は、文化が人間の行動を形成する最も影響力のある外的要因であることを解説し、消費者は機能や性能といった価値ではなく、自己像や所属意識を反映できる商品を購入する傾向にあるとしています。つまりブランド、企業は単に顧客を人口統計学上の分類から捉えるのではなく、消費者の文化的アイデンティティや信念、イデオロギーを理解する重要性を提唱していました。

 コリンズ博士は、マクドナルドがファンの文化的慣習を理解するために民族誌学的調査を実施し、成功した「Famous Orders」キャンペーン(30日間で売上を5,000万ドル増加)を事例に挙げ、マーケターは、文化を一方的に消費するのではなく、新しい社会的事実や言語、物語を生み出すことで文化的な言説に貢献する「推進者」の役割を担うべきであるとします。

 この話を聞いて痛感することですが、顧客行動のすべてにその国や地域の文化や伝統がある一定レベルで影響を与えています。企業は改めて自社が提供する商品価値だけでなく、その商品やサービスが生まれた背景、そして顧客がそれらの商品を体験、消費してきた文化的背景の理解を改めて深める必要があると思います。そのような文化的土台の上に立つマーケティングこそが最強であると言えるでしょう。

Authenticity(真正性)

 この言葉も実はここ数年海外のマーケターから繰り返し使われている言葉であり、筆者自身も一橋大学ビジネスレビューでもAuthenticityの重要性に関する論文を発表しています。

 Forge 2025においては著名なマーケターであり、Brazeの社外取締役を務めるフェルナンド・マチャド氏からも講演がありました。彼のセッションでは、マスタークラス「マーケティングの7つの罪」と題し、マーケターは「虚栄心(Vanity)」の罪を克服し、ブランドの歴史、遺産を忘れることなく、真正性(Authenticity)を守ることの重要性を説きました。彼は、短期的な利益(Greed、貪欲)に偏重するのではなく、ブランド構築に予算の約60%、パフォーマンスに40%を投資すべきであるというデータを示し、長期的なブランド構築がもたらす遺産の重要性を解説しました。デジタルマーケティングツール企業のカンファレンスでこのような話があることもBraze Forgeの面白さかもしれません。

 ブランドが一貫性を維持し、過度に複雑化を避けること(ブランドの一貫性)が、消費者との信頼を築き、最終的に売上に貢献すると論じていました。Wendy’sがブランドの「本物らしさ」をアプリ内でも維持する姿勢も、この真正性の追求と一致していますし、それを実現するためにBrazeを使って欲しいという想いも伝わってきます。

Empathy(共感)

 こちらは先述した通りですが、実はForge 2025の最も強力なメッセージの一つは、共感の必要性でした。Sephoraの「Personalization = Empathy at Scale」という提言 は、AIとデータ活用が進む中で、テクノロジーの目的は人間の感情やニーズを大規模に理解し、対応することにあることを明確に示しています。

 マーカス・コリンズ博士は、データへのアクセスが増えるほど、かえって消費者の深い理解(親密さ)が疎かになるパラドックスを指摘し、テクノロジーを「人間性を拡張する道具」として活用し、人々の生活の摩擦点(課題)を特定し、意味ある体験を創出することの重要性をクリステンセン博士のジョブ理論を用いて提唱しました。

 AIは意思決定の効率と精度を向上させますが、BrazeのAI戦略自体が「創造性×自律性×文脈理解」の融合をテーマに掲げているように、最終的にブランドと顧客の間に信頼と価値を生むのは、データとAIによって裏打ちされた人間的な共感に他なりません。私の言葉で言えば、Human Touch Technology、人とテクノロジーの最適な融合が優れた顧客体験を創出するという言葉と同義となります。

 結論として、Forge 2025は、AIとComposable Intelligenceという最先端の技術が、Culture、Authenticity、Empathyという普遍的なマーケティングの原理を大規模に実現するための基盤となることも示されました。

 今後のマーケターは、マーケティング実践者の「指揮者」として、Brazeのようなテクノロジーを駆使しながらも、上記の3点にあるような、顧客が永遠に企業や消費行動に求める、人間的要素を戦略の中心に据え、学習と創造性を継続することが求められるのです。

 タイトルにある通り、BrazeのイベントForgeはまさに、AI、データ、そして人間的なつながりが描く顧客エンゲージメントの未来を考察するには最適な場として今後も注目していきたいと思います。

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この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Braze株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50137

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