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MarkeZine Day 2026 Spring

【新年特集】2025→2026 キーパーソンによる予測と展望

2026年、最適化の閉塞感をどう超えるか?細田高広氏が示すAIに代替不可能な「ヒューマニティ」の本質

最適化を進めると世界は「均質化」し、行き詰まる

──AIの活用が進む一方で、見えてきた課題があれば教えてください。

 AIに限らず、ここ数年のマーケティングは、あまりにも論理的になりすぎたのではないかと感じています。人間は「理屈で動く」という前提でマーケティングをモデル化しすぎて、良くも悪くもない平均的な結果で行き詰まっているのです。

 身の回りでも「エージェンシーからの提案がどこも似てきた」という話が増えています。なぜなら、プレゼン内容を事前にAIでスコアリングして点数が高いものを採用しているからです。AIによる評価軸に合わせて修正すればするほど、提案は均質化してしまいます。

 この「均質化」は世の中全体で起きています。都市のメインストリートには同じようなブランドが並び、おしゃれなカフェといえばコンクリート打ちっぱなしに観葉植物を配置するレイアウトがパターン化されていますし、アプリのUIもショート動画のフォーマットも、どれも似たり寄ったりになっている。自ら進んで「埋もれる方向」に向かい、案の定、迷子になっているのです。

 今の状況を私は「論理の限界」だと捉えています。過去のデータから論理的に最適解を出そうとすれば、当然みんな同じ正解に辿り着く。均質化の無限ループから抜け出すためには、論理ではなく「自分たちは本当はこれが好きだ」「これは美意識に反する」といった、マーケター自身の人間的感覚が不可欠になってくるはずです。

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人間だけが持つ「センス」「共感」そして「価値観」

──均質化から抜け出すために、人間には何ができるのでしょうか?

 この1年で、AIには代替できない「ヒューマニティ」の本質が解像度高く見えてきました。それが「センス」「共感」「価値観」の3つです。

 まず1つ目の「センス」について。たとえば、昔はお店を探す時、「いい匂いがする」「古いけど、手入れが行き届いていそうだ」といった直感でお店のセンスを判断していましたよね。それが今は、口コミの点数やレビュー数という「論理」から入るようになってしまった。AIエージェントがこうした傾向を後押しするでしょう。

 しかし、だからこそ「なんかいいよね」という理屈抜きの感覚、言語化ではなく「感覚化」の力が、これからのマーケターにはもう一度求められるように思うのです。論理で模倣できるものはつまらない。商品もお店も企業も、AIには選べないもの、つまり「センス」としか形容できないものに逆説的に価値が生まれるのではないでしょうか。

 2つ目は「共感」です。皆さんのビジネスで、最も人の共感が必要なプロセスはどこでしょうか?その領域は人間の力がまだ必要な可能性が高い。たとえば、多くの企業が「コールセンターをAIに置き換える」検討をしています。確かに、手続きの案内などはAIのほうが効率的でいいかもしれません。しかし、クレーム対応に限ったらどうでしょう。AIが発する「本当に申し訳ありませんでした」という謝罪や、「大変でしたね」という労いの言葉は、果たして本当に顧客の心に響くでしょうか?

 医師や保険会社の担当者とのやりとりで「私がいるから大丈夫です」という言葉に救われる感覚は、苦痛を共有できる人間にしか生み出せないように思えます。

 ホテルのサービスも、チェックインなどの手続きは自動化できますが、たとえば「子供がなくしたミニカーをスタッフ総出で探し出し、キレイにして手紙を添えて返送する」といった対応は人間にしかできません。

 悲しい記憶さえ、一生の宝物のような思い出に変えられる。こうした共感を土台にした仕事にこそ、人間の本質が発揮されるはずです。

AIには不可能な「価値観の更新」がブランドを作る

──3つ目の「価値観」についても詳しく教えてください。AIは価値観を持てないのでしょうか?

 価値観を読み解くことはできる。けれど価値観をアップデートする作業は、AIでは代替できない部分だと思っています。AIは過去のデータを学習しているので、基本的には過去を土台にした価値観で駆動しています。「これからはこっちのほうが良くないですか?」と、まだデータのない新しい価値観を提示することは得意ではありません。

 たとえば、「育毛剤を使うのは恥ずかしいことだ」という認識が広がっている市場があるとしましょう。そのときブランドがやるべきことは、こうした過去の価値観を転換し、新たに「未来に備えて行動できるのは、かっこいい行動だ」と示すことです。次の時代に共感される価値観を定義し、文化を作っていく。そのために必要なのは過去の膨大なデータではなく、未来への理想や信念のようなものなのです。

 ここまでの話は、実は新しいことではありません。本来、論理と感性を行き来することこそがマーケティングの面白さだったはずです。すべてを数字や論理で説明しようとする今の風潮から、もう一度その面白さを取り戻すべき時が来ています。

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マクロなデータより「N=1」の偏愛を。2026年への提言

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/01/13 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50258

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