サステナビリティ訴求が特別なものではなくなった今、消費者の中には「本当に環境に配慮しているのか疑わしい」と感じる人も増えている。環境保全に対する取り組みを、消費者に適切に届けるためには、どうすればよいのか。単一企業ではなく、業界全体で取り組むべき課題として、考えていく。
「環境にやさしい」が当たり前になった先で起きていること
近年、環境配慮やサステナビリティを前面に打ち出した商品や広告は、もはや一部の先進企業に限られたものではなくなっている。食品や日用品、アパレル、家電など多くの分野で、「持続可能」「サステナビリティ」「環境にやさしい」といった表現が、日常的に用いられるようになった。環境訴求は、企業にとって特別なメッセージというよりも、標準的なコミュニケーション手段の一つになりつつある。
一方で、環境訴求が当たり前になるにつれて、消費者の受け止め方にも変化が見られるようになっている。「環境に良い」という言葉そのものが珍しくなくなり、その中身をより慎重に見極めようとする姿勢が強まっているのだ。環境広告は、評価を高める可能性を持つ一方で、「本当にそうなのか」という疑念を呼び起こす存在にもなり始めている。
サステナビリティ・環境訴求は差別化のための特別な武器というよりも、どのように伝えるのか、どこまで説明できているのかが問われる段階に入ったと考えられるだろう。
日本では商品パッケージが入口に~環境配慮を知る最大の接点
それでは、日本の消費者は、それぞれの企業の環境配慮やサステナビリティの取り組みをどのような場面で知るのだろうか。この点を考える上で、まず押さえておきたいのが、「商品パッケージ」の表現であり、その存在感は想像以上に大きい。
消費者庁の調査によれば、環境配慮商品を「かなり購入している」「ある程度購入している」と回答した層は、全体の半数を超えている。その人たちに、環境に配慮された商品やサービスを知ったきっかけを尋ねたところ、最も多かったのが「商品パッケージに書いてあったから」という回答であり、その割合は8割弱(76.6%)と非常に高い。テレビ番組や動画コンテンツ、環境ラベルといった他の情報源はいずれもこれを下回っており、店頭で目にする表示が、環境配慮の認知において大きな役割を果たしていることがわかる(数表1)。
この結果は、日本の消費者が商品購入時に環境について考えるとき、広告やキャンペーンよりも、商品そのものに付された情報を重視することを示している。商品パッケージは、購入の直前に目にする情報であり、その場で判断を下すための材料として機能する。消費者は、限られた時間と情報の中で、「見て信じられるかどうか」を一つの基準として選択していると考えられるだろう。
こうした状況を踏まえると、商品のパッケージデザインや表示は、単なるマスコミュニケーションやSNSなどの補足的な情報というよりも、環境訴求の最前線に位置づけられるとも言える。一般的に、短い言葉やシンプルなマークで伝えられる情報ほど、消費者の判断に与える影響は大きいとされている。環境訴求がパッケージを通じて伝えられる以上、その表現のあり方は、企業の姿勢や信頼感を左右する要因になっているとも言えるだろう。
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小口 裕(オグチ ユタカ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 主任研究員
多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。持...
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