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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

マーケティング最新事例 2025(AD)

花王ヘアケア全体でファンダムを形成していく。花王とCARTA ZEROの「EC×ブランドマーケ」戦略

 花王は2025年8月に、花王ヘアケアのEC旗艦店を楽天とQoo10にオープン。予想より早いペースでEC売上を伸ばし、事業全体の成長を支える武器となっている。この成功の裏側には、「EC×ブランドマーケティング」の高度な連携があった。ECをただの「売り場」にしないために必要なことは何か。本稿では花王ヘアケア事業を統括する野原聡氏と、花王ヘアケアのEC戦略に併走するCARTA ZEROの西奈津紀氏に取材。ブランド全体の価値向上に寄与し、店頭も含めた売上最大化につなぐためのEC戦略を紐解く。

EC導入は「売るため」だけではない。マーケティング観点の狙い

MarkeZine:まずは、花王ヘアケア事業部としてEC領域に注力されている背景をお聞かせください。

野原(花王):大きく3つの理由があります。1つ目は「ヘアケア領域におけるEC市場の拡大」です。現在、ヘアケアのEC市場は1,000億円を超える規模にまで成長しており、ヘアケア市場全体の25%ほどをECが占めるようになっています。この市場を牽引しているのは、ハイプレミアム商品やサロン系のシャンプーで、花王が現在注力している高価格帯商品が参入しやすい土壌が整っています。

 2つ目は「収益性の高さ」。ECでどうしてもネックになるのは配送料のコストです。低単価の商品では利益を担保できませんが、ハイプレミアム商品であれば商品価格に対する配送料の比率を下げることができます。一般的な商品より収益性が期待できることは、参入の後押しとなりました。

花王株式会社 ヘアケア事業部 ブランドマネージャー 野原聡氏
花王株式会社 ヘアケア事業部 ブランドマネージャー 野原聡氏

 3つ目は「マーケティングの観点」です。現在はコミュニケーションの大部分をデジタルで展開していますが、SNSや広告の遷移先を単なる商品紹介ページではなくECにすることで、フルファネルをカバーし、認知から購買までを一気通貫でつなぐことができます。また、購買データを基にPDCAを回しやすくなるため、ロイヤルティの向上やLTVの最大化を図ることもできるでしょう。EC導入はどこを取ってもデメリットのない施策だと考えていました。

MarkeZine:前提として、美容EC市場全体のトレンドについても教えてください。

西(CARTA ZERO):Qoo10やAmazonといった主要プラットフォームを筆頭に、市場全体が大きく成長し、幅広い年代に「ECで美容アイテムを購入する」という文化が定着しつつあります

株式会社CARTA ZERO ECマーケティング局 Commerce Container部 西奈津紀氏
株式会社CARTA ZERO ECマーケティング局 Commerce Container部 西奈津紀氏

 特にコロナ禍以降、自社でEC旗艦店を持つ動きが加速しました。従来、自社で実店舗を持たないブランドはどうしても顧客接点が間接的になりがちでしたが、ECであれば直接「お客様の声(データ)」を得ることができます。単純に「売るため」だけでなく、「マーケティングのため」にECに注力するブランドも増えている印象です。

物流、ITシステム、CSなど、ゼロベースから体制を構築

MarkeZine: ECモール参入にあたり、具体的にどのような準備や社内調整をされたのでしょうか?

野原(花王):ゼロから必要な機能ラインを整えていきました。ECを本格的にスタートするには、単にモール内にページを立ち上げるだけでなく、バックエンドの物流体制の構築から財務やITシステムとの連携、CS(カスタマーサービス)の整備まで、細々とした対応が必要です。私自身はEC領域の経験があるものの、 ヘアケア事業部としては実店舗を介したビジネスしか経験はなく、ECのノウハウが不足している状態でした。専門家であるCARTA ZEROにサポートしてもらいながら、一つひとつ構築していった形です。

MarkeZine:ゼロベースから体制を構築していくために、パートナー選定は重要だったかと思います。今回パートナーを選定する際に最も重視されたポイントについて教えてください。

野原(花王):2つあります。1つ目は「市場を俯瞰して大きな戦略設計を描ける力」です。当たり前ですが、ECは単に立ち上げるだけでは成功しません。たとえば楽天、Amazon、Qoo10といった各プラットフォームで、それぞれ仕組みも成功要因も異なります。各モールをどう使い分け、MD(商品施策)も含めてどう最適化していくか――全体像を構造的に捉え、戦略に落とし込める力を求めていました。

 2つ目は、「ブランド×モールへの深い理解と、PDCAを回せるコミュニケーション能力」です。ECを成功させるためには、ブランドのこともプラットフォーマーのことも、深く理解する必要があります。性質の異なる2つの要素を連結させ、PDCAを回していかなければなりません。また、そのためには円滑にコミュニケーションができるか否かも重視になってくるでしょう。CARTA ZEROは上流の戦略設計も、下流の細かな現場連携もできる理想的なパートナーでしたね。

楽天とQoo10の棲み分け戦略。CRM向きなモールか、瞬発力のあるモールか?

MarkeZine:花王ヘアケア事業部では現在、楽天Qoo10で旗艦店を立ち上げ、「Melt(メルト)」と「Essential(エッセンシャル)」についてはTikTok Shopも活用している状況です。どのような戦略をもって、各モールへの参入を進められたのでしょうか。

野原(花王):参入にあたっては、タイミングを重視しました。というのも、ブランドや商品への認知・理解がない状況で、いきなりECで商品を購入してもらえるとは考えにくいですよね。まずは店頭で香りを嗅いだり、ピロー(お試しサイズ) を購入したりといった、リアルな体験から接点を持つことが重要です。

 店頭でブランドの認知と信頼を築き、ロイヤルユーザーが増えて、ECで「いつもの商品を買う」状態になるまでにかかる期間は1年ほどその土壌ができてからECを立ち上げるという流れを計画していました。そのうえで、CARTA ZEROと各モールの特性を分析し、最適な全体像を描いていきました。

MarkeZine:各モールはどのように使い分けられているのでしょうか?

西(CARTA ZERO):楽天は「CRMとロイヤルティ形成のための場」として位置づけています。楽天ならではの特徴は、「お買い物マラソン」や「スーパーセール」といった定例イベントが充実しており、ユーザーとの接点回数が非常に多いことです。リピート購入がされやすい環境を活かしつつ、タイアップなどを通じて、店頭の限られたスペースでは伝えきれない商品の詳細な使い方やこだわりをじっくり発信する場としても活用しています。

 Qoo10に関しては、年4回の「メガ割」を最大の商機と捉え、「爆発的な売上を作る瞬発力のあるチャネル」として活用しています。楽天と比較すると若年層の割合が高く、店頭で興味をもった人が、気軽に新規トライアルしやすい間口としても機能している状況です。ユーザーゾーンもマーケティングファネルも、楽天とは棲み分けができていますね。

MarkeZine:一方、TikTok Shopは2025年に日本でスタートしたばかりの新しいサービスです。今後の可能性をどのように見ていますか?

野原(花王):非常に注目しています。中国ではライブコマースという形態で、ビューティー関連カテゴリーにおいて、他ECプラットフォームを一瞬で抜き去りました。日本においても、生活者側が「ライブ配信で物を買う」という文化が根付けば、十分に拡大の可能性はあるでしょう。

 一方で、日本でライブコマースを普及させるためには、クリエイターがしっかりと収益を得られるマネタイズモデルの構築が必要だと見ています。現在はまだベストケースを探りながら慎重に運用している状態ですが、引き続き期待を寄せながら注視していきたいです。

ECとブランドマーケを分断させない。強固な連携を実現させている仕組とは?

MarkeZine:西さんから見て、花王ヘアケア領域のEC立ち上げが成功し、よい滑り出しとなっている要因はどこにあると考えられますか?

西(CARTA ZERO):ブランドマーケティングとECが強固に連携できていることではないでしょうか。多くの企業では、ブランド担当とEC担当が組織的に分断され、いわゆる「縦割り」の状態になっていることが少なくありません。それでは一気通貫のマーケティングができず、ECが「売るだけの場所」になってしまいがちです。花王さんのようにしっかり連動できている企業は珍しいですね。

野原(花王):ECモールの旗艦店は「自分たちの店」ですからね。たとえば、表参道にポップアップショップを立ち上げる際に、ブランドマーケティングが関わらないというのは考えられません。それと同じことではないでしょうか。ブランド価値を正しく伝え、顧客体験を最大化するためには、ブランドマーケティングチームとECチームが一体となって取り組むのが必然でしょう。

MarkeZine:具体的には、どのような形で連携させているのでしょう?

野原(花王):象徴的なのが、「マーケティングマスター」と呼ばれるマーケティングの年間スケジュールの組み方です。これまでは、新製品の発売日を軸にして年間カレンダーを引き、それに合わせて広告や販促施策を組み立てるのが基本でした。しかし現在は、楽天やQoo10といった各モールのセールカレンダーを1つの軸としてまず置き、そこに合わせてブランド側の動きを調整するというフローを取り入れています。

MarkeZine:各モールに合わせた動きをすることで、どのようなメリットが生まれるのですか?

野原(花王):わかりやすい例として、EC先行発売によるランキング獲得施策が挙げられます。たとえば新商品を店舗で発売する1ヵ月ほど前にECで先行発売し、「楽天1位」といった実績を獲得できれば、その称号をリアル店舗や広告クリエイティブでも活用できるため、店舗での売れ行きにも相乗効果をもたらします。

西(CARTA ZERO):また、最近では「Qoo10メガ割で買うべきものリスト」といったSNS投稿がインフルエンサーの間で活発です。当然ながら、EC販売をしていなければその土俵に乗ることはできません。インフルエンサーの投稿からECへ誘導し、そこで売り切れになってしまっていたとしても、レビューを見て店舗へ足を運んでくれるお客様も多いんですよ。SNS、EC、店頭を行ったり来たりしながら、ブランドへの関心を高めていく「情報の循環」が構築されています。

予想より早いペースで成長中。ECがブランディング強化の強力な武器に

MarkeZine:2025年8月から本格的なEC運用を開始されたばかりではありますが、現時点で実感されている定量的な成果があればお聞かせください。

野原(花王):新ブランドのひとつ「melt(メルト)」では、EC旗艦店を立ち上げて間もなく、プラットフォーム内のヘアケア関連カテゴリーで1位を獲得することができました。正直なところ、ECはもっとスロースタートになる予想をしていたので驚きです。詰め替え品の購入比率も高く、ロイヤルユーザーに支持されている実態も可視化できています。来年以降の成長に向けて非常に大きな期待を持てる結果となっていますね。

MarkeZine:組織としての変化も感じられますか?

野原(花王):そうですね、組織はこの1年で急成長を遂げました。CARTA ZEROと二人三脚でPDCAを回す中、「ECはブランディングを強化するための重要な武器である」という理解がチーム全体に深く浸透したと感じています。

西(CARTA ZERO):ブランドチームとも月1回はミーティングしており、ECの考え方をお伝えさせていただいたり、来年度の戦略策定に早期から関わらせていただいたりと、深く入り込んでいます。みなさま興味を持って前のめりにご参加いただき、自発的に質問や相談をされるのでありがたいですね。

ブランドを横断し、花王ヘアケア“全体”でファンを増やしていきたい

MarkeZine:最後に花王ヘアケア事業部として、これからの成長戦略や展望を教えてください。

野原(花王):ヘアケアは「ずっと同じブランドを使い続けてもらうのが難しい」領域です。どうしても途中で飽きが来たり、季節や気分の変化によって「別のものを使ってみたい」という気分になったりして、感情的なスイッチングが発生します。

 その点、「花王ヘアケア」全体のEC旗艦店を構えれば、たとえその中のブランドが変わったとしても、花王ならではの品質の高さやサイエンスクラフトの強さは変わらず提供し続けることができます。各ブランドで旗艦店を立ち上げる選択肢もありましたが、「花王ヘアケア」という大きな枠組みでのファンを増やしていきたいからこそ、全体での旗艦店を作りました。これからもお客様の感情の変化に寄り添い、ブランドを横断して、花王ヘアケア全体でファンダムを形成していきたいですね。

MarkeZine:CARTA ZEROとしてはいかがでしょう?

西(CARTA ZERO):今年度は、さらなるロイヤルティ向上と、ブランド間でのスイッチやクロスセルが自然に起きるような回遊環境の構築を目標にしています。

 ECで売れるということは、店頭でも売れるということECの戦略的な活用は、マーケティング全体の引き上げにつながっていくはずです。PDCAを回しながら、ブランド価値を最大化していくための活動を、今後も花王様と二人三脚で進めていきます。

CARTA ZERO / Commerce Container(コマースコンテナ)

メーカー企業の支援に特化し、大手ECモール、オウンドEC、ソーシャルコマースまで、EC市場における販路戦略を幅広くサポートしています。本記事で興味を持たれた方は、CARTA ZERO公式サイトからお問い合わせください。

Commerce Containerの詳細はサービス公式サイトよりご覧ください。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社CARTA ZERO

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/03/05 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50297