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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

クロスチャネルで伸ばす音声広告プランニング(AD)

【対談】嶋浩一郎×佐藤雄介|音は想像力のスイッチ。Spotifyで作る、選ばれるためのブランド広告

 マーケティングの第一線で活躍するクリエイターたちは、今、音声広告をどう見ているのか。2026年、国内のデジタル音声広告市場はさらなる拡大を見せています。そのクリエイティビティを牽引するのが、Spotifyが主催する広告賞「Spotify Hits」です。今回のインタビューでは、本アワードの審査員を務めた嶋浩一郎氏、佐藤雄介氏、橋本昇平氏の3名を迎え、受賞作の振り返りを通じて、リスナーの心を動かす「Spotify広告の成功法則」を解き明かします。

「ミスを愛する」ヤマハが示したブランド広告の新境地

━━今回のSpotify Hitsのグランプリである「Spotify Mic Drop」を受賞したのは、ヤマハの『#LoveYourMistake「Knock Turn」』でした。演奏のミスをあえて聴かせるという大胆な企画でしたが、評価の決め手は何だったのでしょうか。

佐藤:「ミスを愛する」というコンセプトが、ヤマハというブランドから発信されたことに大きな意味がありました。Spotify Hitsのグランプリとして何がふさわしいかを議論したとき、音楽の演奏者を肯定するこのメッセージは非常に強力でした。音声メディアで「あえて綺麗な音を使わない」というひねりも、チャーミングで面白かったですね。

ヤマハの『#LoveYourMistake「Knock Turn」』

株式会社電通 グループ・クリエイティブディレクター/CMプランナー 佐藤雄介氏
株式会社電通 グループ・クリエイティブディレクター/CMプランナー 佐藤 雄介氏

嶋:デジタル広告はこの言い方嫌いなんですけど「刈り取り」などと言われるコンバージョン目的で使用するものだと思われがちですが、Spotifyの広告は「ブランド広告」に向いていると思っています。動画メディアと違って倍速再生されにくく、集中して最後まで聴いてもらえるから、深いコミュニケーションが可能ですよね。

 ヤマハの作品は、音楽を習う人の「あるある」を活用して、ブランドの姿勢を鮮明に打ち出していました。AIが価格やサービスの比較検討を肩代わりする時代が近づいているからこそ、こうした「世界観を発信するブランド広告」が必要になって来ていると思います。

橋本:今回設定された3つの部門(Seized the Moment、Ear Candy、For The Fans)の要素が、この一作品にすべて備わっていたのも見事でした。ピアノを練習している人がつまずきがちな「離脱モーメント」を捉え、クラフト(技術)も素晴らしく、ファンの心を掴んでいる。ヤマハという音へのこだわりが強いブランドが、この企画をSpotifyでやり切ったことに拍手を送りたいです。

【グランプリ以外のSpotify Hitsの部門賞は下記の3部門】

Seized the Moment:特定のモーメントを捉え、クリエイティブなアプローチでユーザーとエンゲージしたキャンペーン。

Ear Candy:音声ならではのテクニックや特殊効果を活用し、最も没入感のある体験を実現したオーディオキャンペーン。

For the Fans:Spotify上の特定のアーティストや楽曲、コンテンツジャンルなどのファンをターゲットにし、彼らと効果的にエンゲージしたキャンペーン。

嶋:わざとらしく演奏を間違うのではなく、絶妙に「あ、ここ間違えた」と気づかせる塩梅。この“お湯加減”というか、丁度よい演出が、リスナーを心地よく引き込んでいました。

サントリー「金麦」が捉えた完璧なタイミング

━━特定のモーメントを捉えたキャンペーンを表彰する「Seized the Moment」部門では、サントリーの『金麦 家路言』が受賞しました。

佐藤:「帰り道」というモーメントと、Spotifyの視聴データが見事に掛け合わされていました。Spotifyは夕方から夜にかけての帰宅時間に聴取がグッと伸びる。そこに金麦の「帰れば、金麦」というブランドメッセージをぶつける設計は、設定の勝利といえます。

嶋:作り手がリスナーのシチュエーションを明確に想像できていますよね。「部長、まだチェックしてるな……」といった共感性の高い状況設定とか。帰宅時の環境音などサウンドの作り込みが絶妙でした。それから、「蛍の光」の使い方は天才的。あれを聴くだけで、日本人の脳内は勝手に「一日の終わり」モードになりますからね。

サントリーの『金麦 家路言』

橋本:この広告、実は60秒もあるんです。でも全く長く感じない。完聴率も非常に高く、リスナーが嫌がらずに最後まで聴き入ってしまう設計になっていました。

嶋:Spotifyならではのモーメントは他にもあります。例えば、Spotifyリスナーの多くが参加するであろうフェスに向けて気持ちが盛り上がる季節や、年末にミュージシャンの活動を振り返るタイミングとか。ユニ・チャームさんが「フェスを快適に楽しむためにタンポンを使おう」と提案した事例など、通勤通学などの一日のライフサイクルだけでなく、一年をつうじ音楽体験と絡めたモーメントを発見するのはクリエイターの腕の見せ所ですね。

最新技術を駆使し、音声の魅力を最大限引き出した大塚製薬「ポカリスエット」

━━音声ならではのテクニックを駆使した作品に贈られる「Ear Candy」部門。ポカリスエットの『サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」』が受賞しましたね。

佐藤:耳が喜ぶ「クラフト(技術)」が素晴らしい作品です。バイノーラル録音(3D録音)を使い、円陣の真ん中にいるような体験を360度の立体音響で実現した。ポカリがこれまで築いてきた「部活を頑張る人を応援する」というブランドアセットを、音声だけで力強く表現していました。

嶋:音声広告はラジオの時代から技術が磨かれてきたので、すでにパターン化されていると思われがちですが、今、まさにイノベーションが起きています。イヤホン視聴という聴取スタイルの変化に合わせて工夫をしたり、録音手法など制作のテクノロジーも進化したりしている。映像のような情報の足し算ではなく、音声広告は音だけ使う「引き算」のコミュニケーションだからこそ、リスナーが頭の中で余白を埋め、ブランドの世界観へ没入できる。

株式会社博報堂 執行役員 嶋浩一郎氏
株式会社博報堂 執行役員 嶋浩一郎氏

佐藤:ウイスキーの『Talisker』の事例も良かったですね。街の雑踏から、いきなり大自然の海の音へと切り替わる。あれを夜にイヤホンで聴くと、一瞬でスコットランドの海岸へ連れていかれるような感覚になる。

橋本:シーンの切り替えで「移動感」を出すのはSpotify広告の得意技です。金麦の「蛍の光」もそうですが、言葉で説明せずとも音だけで「今、ここじゃないどこか」へ連れて行ってくれる。それがSpotifyの没入体験をより深いものにしています。

ファンダムとの「掛け算」が生むヒットの兆し

━━ファンとのエンゲージメントを評価する「For the Fans」部門。日本コカ•コーラの『い・ろ・は・す』と藤井風さんのコラボレーションが印象的でした。

佐藤:アーティストのファンダムとい・ろ・は・すのブランドメッセージの足並みが、非常に綺麗に揃っていました。無理にアーティストを広告に合わせるのではなく、お互いがWin-Winになる設計。藤井風さんという絶大な影響力を持つ存在と、ブランドがセットで記憶に残る、完成度の高いキャンペーンでした。

嶋:1970〜80年代に多くのヒットソングがCMから生まれた時代を彷彿とさせました。Spotifyの広告から新しいヒット曲が生まれる可能性を強く感じますね。単なるタイアップではなく、楽曲の世界観とブランドの世界観が「掛け算」になっていました。

日本コカ•コーラの『い・ろ・は・す』と藤井風さんのコラボレーション

橋本:アプリのトップページをジャックする広告メニューから、コアなファンが集まる「This is 藤井風」プレイリストへのスポンサードまで、ファンダムの濃淡を意識したメディアプランも素晴らしかったです。別のアニメの番宣事例では、オンエア前は大きなファンダムを持つ主題歌アーティストの楽曲紹介、後はアニメの内容を中心に、前後で声優のナレーション内容を変えるなど、ファンへのリスペクトが細部に宿っていました。

嶋:お互いが得をする「共創関係」をプラットフォーム上で作っていくことが、デジタル時代のクリエイティブにおいては重要です。特に対象が「音楽」である場合、リスペクトを欠いた表現はすぐに見透かされてしまいますから。

Spotify広告は「世界観をまとわせる」のに最適

━━今回の審査全体を通じて、Spotify広告の「現在地」をどう感じられましたか。

佐藤:人間の耳は時代に合わせて進化しているな、と感じました。ナレーションを処理しながら、背後の音楽やSEから文脈を読み取り、瞬時に頭の中で映像を保管する。リスナーの想像力を刺激し、スイッチをカチンと入れる。そんな高度なコミュニケーションが、Spotifyなら可能です。

嶋:まさに、販促広告でありながらブランド広告でもある、という二律背反を両立できるメディアの可能性を感じました。スペックの説明を超えて、ブランドが持つ「空気感」や「世界観」をまとわせて伝える。これは映像よりも、むしろ音声の方が向いているのかもしれません。

橋本:クリエイターの方々が、音声という制約の中で自由にチャレンジされているのが伝わってきました。若手のソーシャルネイティブなクリエイターが、これまでのラジオの文法とは違うアプローチでイノベーションを起こしているのも、非常にポジティブな変化です。

スポティファイジャパン株式会社 広告事業クリエイティブ戦略統括 橋本昇平氏
スポティファイジャパン株式会社 広告事業クリエイティブ戦略統括 橋本 昇平氏

2026年、Spotify広告のクリエイティブをさらに進化させる

━━最後に次回以降の「Spotify Hits」に期待することを教えてください。

佐藤:シンプルに「見たことがないもの、聴いたことがないもの」に期待したいです。大きなチャレンジだけでなく、既存の文法をちょっといじってみるような、繊細なグラデーションのチャレンジも歓迎したいですね。

嶋:制約があるからこそクリエイターは燃えます。生成AIや新しい録音手法の活用、あるいは「この瞬間のリスナーの気持ち」といった聴取シーンへのこだわり。まだまだアイデアのボタンはたくさんありそうですね。

橋本:世界的に見ても、日本はSpotify広告でリスクを取って新しいことに挑戦している国だと言われています。これからはポッドキャスト文脈でのクリエイティブな挑戦も増えてくると嬉しいですね。音声から新しいカルチャーが生まれるたくさんの瞬間と、今年のHitsで出会えるのが今から楽しみです。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:スポティファイジャパン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/02/27 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50311