情報の99.9%をUGCが占める時代
SNSやUGCの領域に長く携わり、ゼロイチの立ち上げから上場まで幅広く経験を積んできた川上氏。現在、執行役員 CBOとして身を置くウィングリットは、業界随一の「UGC領域におけるプロフェッショナル集団」だ。「UGC DRIVEN.」という言葉を掲げ、UGC領域の施策を戦略から実行まですべて請け負っている。社名には、「やり切る力(グリット)で、成功に導く」という想いが込められているという。
MarkeZineでも連載した花王ヘアケア事業との取り組みをはじめ、同社の累計支援実績は5,000件以上。美容領域のみならず、食品や飲料、アパレル、観光、交通機関、金融、AI、行政まで、多種多様なカテゴリーを支援中だ。メンバーは約20名と少数精鋭ながら、創業7年で年間12億円もの売上を創出している。
ウィングリットでは前提として、企業が完全にコントロールして制作したテレビCMやWebサイトといったコンテンツを「PGC」、生活者視点で発信される口コミやインフルエンサー投稿といったコンテンツを「UGC」と区別している。
川上氏は本セッションのメインテーマに先駆けて、「UGCってそんなに必要?」という根本的な問いを提示した。
この問いに対する川上氏の答えは「条件付きのYES」。すでにカテゴリーを牽引するトップ企業である場合や、潤沢な広告予算を有し、PGCによる広告の“一本足打法”で押しきれる企業である場合を除き、大半の企業ではUGCがプラスアルファの売上や事業インパクトを生む。広告効果が鈍化するなかでのリスクヘッジや、将来的な事業インパクトを仕込むための投資として、企業が積極的に取り組んでおきたい施策だ。
「情報発信の民主化が進んだ現代、世の中にある情報の99.9%はUGCと言われています。情報媒体が多様化し、生活者の意思決定が複雑になっていくなか、施策をメディアファーストで考えるのは機能しづらい。そうではなく、コンテンツファースト、あるいはピープルファーストの発想を起点とし、その上で様々なメディアへコンテンツを横断的に展開し、最適化していくことがより求められていくでしょう」(川上氏)
では、実際どのようにUGC戦略を設計すればいいのだろうか。川上氏は、UGC領域“だけ”で考えず、全体最適を見据えるべきとして、5つのポイントを提示した。本稿では一つひとつのポイントを詳細に解説していく。
ポイント(1)「統一指標」で見る
UGC“だけ”で考えず、PGCと組み合わせて戦略を練っていくうえで、まずマーケターの頭を悩ませるのが「KPIや指標」だろう。施策全体のなかで各指標の相関を見ていくのが望ましいものの、PGCとUGCでバラバラのKPIを横断的に紐づけるのは難しく、重要度も異なる。そのなかで、川上氏は比較的コントロールしやすい変数として「配信量」を挙げた。
「『広告』と『インフルエンサーによるオーガニック投稿』では、あまりにも配信量の差がありすぎるのでは、と懸念されるかもしれません。しかし昨今、タイアップ投稿は第三者配信でブーストをかけることが当たり前です。つまり、タイアップ投稿もUGCというクリエイティブ素材でもあると捉えることが重要です。これにより、UGCとPGCが同じ“広告配信”というテーブルに乗り、Imp/再生数といった統一指標で比較できるようになります」(川上氏)
より深いKPI策定においては、インテージやカンターなどの調査データも欠かせない。しかし、PGCとUGCがそれぞれどれほどの成果を発揮するのか、確実にハンドリングできる統一指標であるからこそ、これら成果の記録はしやすく、試算もしやすい。「Imp/再生数」という統一指標の確立は、不透明になりがちなUGCの戦略設計や効果計測を、明確に数値で示す手段となり得るだろう。
ポイント(2)ヒト軸・モノ軸で考える
インフルエンサーには「ヒト軸」と「モノ軸」の2軸で整理するとわかりやすいと川上氏は語る。UGC施策でインフルエンサーを起用する際には、ユーザーが求めているのはどちらの軸なのか、商材やフェーズに応じて見極めることが重要だ。
「ヒト軸」は、芸能人や有名YouTuberなど、顔や名前が広く認知されていて、ファンから「その人」のパーソナリティが見えるコンテンツや発信を期待されているインフルエンサー層。詳しい情報解説というより、その人が使っていることや愛用感を発信することが重要で、著名人による「マストレンド感やお墨付き感」などを醸成していきたい場合に有効でもある。
一方で「モノ軸」のインフルエンサーは、ユーザーにとってわかりやすい商品紹介や、専門的な情報解説などを得意とする層だ。たとえば「美容」「ガジェット」といった特定領域で深い知識を有し、強い影響力や権威性をもつことが強み。顔と名前が一般に広く認知されているとは限らないが、ユーザーは発信されるコンテンツの「情報」を求め日々フォローしている。
「著名なタレントほど知名度のない『モノ軸』のインフルエンサー投稿でも、むしろその専門性の高い情報が支持され、広告配信でブーストをかけてみると、高い効果を発揮するケースがあります。UGCにおけるキャスティングの際は、『メジャーか』『タレントか』といった目線だけでなく、この2つの軸を意識してみてください。誰が発信するかで、ユーザーに届く情報の切り口も粒度も変わるはずです」(川上氏)
ポイント(3)知識の階層構造の有無を捉える
続いて川上氏は「フォロワー数が多いからトップインフルエンサー」というありがちな認識を指し、「これを定義と考えて本当に良いのでしょうか?」と問いかける。
「たとえば、業界の権威でありながらSNSを始めたばかりでフォロワーの少ない専門家がいたとします。その人をただフォロワー数で整理し『マイクロインフルエンサー』と括ってしまっていいのでしょうか? 特に専門知識が重視される商材において、フォロワー数以上に重要なのは、ジャンルにおける情報の深さや専門性、信頼性であるべきでしょう」(川上氏)
とはいえ、すべてのUGCに専門性が求められるわけではない。そこで川上氏は、商材を「高関与商材」と「低関与商材」に分けて説明した。
「高関与商材」は、生活者が入念な情報収集や比較検討をする商材。スキンケアやヘアケア、高価な家電、車、家などが例に挙げられる。購買に慎重になっている生活者は、情報の信頼性や専門性を強く求めるだろう。この領域で重視されやすいのは専門性の高いインフルエンサー。その道に精通した専門家や、深い知見を持つ業界のトップランナーによるUGCが「お墨付き」として機能し、購買を後押ししていく。その後、マスに拡大していきたいフェーズには、ピラミッドの下層に位置するタレントや有名インフルエンサーをキャスティングすることで、幅広く一般層への浸透が期待できるだろう。
このように、ウィングリットでは情報選択における専門知識の有無に応じて、目的や役割に応じてインフルエンサーをピラミッド構造に分類している。これにより、見かけのフォロワー数やいいね数に惑わされず、ターゲットやフェーズに応じた施策を考案できているという。
ただ、飲料や日用品などの「低関与商材」は、このピラミッド型のロジックが同じく当てはまるとは限らない。低関与商材の購買行動において、生活者はそれほど深い知識を求めていないからだ。たとえば、低関与商材でのUGC戦略のコツの1つは、「今、この瞬間話題の人」のファンダムを捉えられるか。話題を生むためには、あちこちの界隈でホットなインフルエンサーを継続的に起用し続けることがカギとなる。
高関与商材と低関与商材で戦略設計や人選戦略のあり方は大きく変わる。取り扱う商材がどちらのパターンか、まずは整理してから戦略を練っていくのが望ましいだろう。
ポイント(4)複数施策を積み重ねる
UGC施策は一過性のバズに頼るものではない。断続的な施策の積み重ねによって、何度も生活者の発話を促し、SNSでの話題化・売上の最大化につなげることができるだろう。
一般ユーザーによるUGC創出フローは以下の4ステップに分類される。
- 商品を知っているか
- 商品を持っているか
- 商品 or 商品の体験について投稿できる(したくなる)か
- 継続的に投稿してもらえるか、継続的に投稿を促す仕組みづくりが可能か
それぞれの段階の課題に応じて、認知拡大施策や、ギフティング、勉強会、インフルエンサーPR投稿などの施策を当てはめて実施していく。その際、川上氏が非常に重視しているのが「SNSをアクティブに利用している(自発的に投稿する)ユーザーかどうか」だ。
「LINEで1万人にプレゼントキャンペーンを実施したとしても、SNSを精力的に活用しているユーザーが100人しかおらず、投稿率が10%なら、UGCは10件しか生まれないことになってしまいます。キャンペーンにはさまざまな目的がありますが、UGC創出を目的とするのであれば、そもそもSNS投稿が期待できるユーザーに商品を渡したりサービスを利用してもらうことが大前提となるでしょう」(川上氏)
そのうえで、特にUGC施策が活発な領域では、ただインフルエンサーに商品を渡すだけでなく、勉強会やオリエンテーション、体験会などを精力的に開催している企業も多い。継続的なインプットは“愛用者”を増やし、“愛用者”は自分の言葉で深くブランドを語れるようになっていく。このような地道な人と人との接点作りこそが、UGC施策で功を奏すと言えるだろう。
ポイント(5)複数文脈で訴求する
どんなに企業側が考えて絞り込んだキャッチコピーであっても、それが生活者に響くかは未知数。とはいえ、世界観が統一されているテレビCMやWebサイトといったPGCでは、何度も切り口を変えられるわけではないだろう。
そこで活きるのが自由度と柔軟性の高いUGCだ。「2番手、3番手の訴求も含め、複数文脈で生活者に当て続けることでPDCAを回し、UGCとして効果的な文脈を見つけ出すことが重要」と川上氏は語る。
「多くの場合、少なくない費用や時間をかけて調査や議論を行い、ブランドとしてのメッセージやキーワードを設計します。しかし、その作り込んだ言葉が生活者に響きづらかった場合、マーケティング施策としては効率の悪い結果になってしまいます。そこで、複数文脈による訴求を同時展開し、なにが響きやすいかUGCで検証します。勝ちパターンを見つければ、UGCとPGCの両方を改善することで、パフォーマンスの向上に成功しています」(川上氏)
なお、ウィングリットは花王での事例のみならず、多くの企業においてUGCの発話量を伸ばすことによる売上拡大に貢献している。今回語られた成功の要諦からも、UGCに必要なのはロジックに基づいた綿密な設計と、それを根気強く継続する実行力と言えるだろう。川上氏いわく「泥臭く並走しながらやり切るパートナー」であるウィングリットは、これからもUGC領域の最前線を走り続けていく。
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