粟田貴也氏から学んだこと——言語化できない「商売繁盛の本質」
MarkeZine:まずは丸亀製麺時代を振り返って、ご自身の中で最も大きな資産となったものは何でしょうか?
南雲:一番の財産は、粟田さん(トリドールホールディングス代表取締役社長兼CEO)から直接学んだ「商売哲学」です。僕は、粟田さんは稀代のマーケターだと思っています。「マーケティングとはこうだ」などと粟田さんが話すことはないのですが、彼のしていることはいつもマーケティングの本質そのものでした。
一般的に常識と言われることや効率化の逆を行き、非合理の強さを信じて、世の中にない価値を生み出すこと。新たな市場を創造し、圧倒的な繁盛を生み出すこと――こうした粟田さんの商売哲学を通して、改めてマーケティングとは「商売」そのものであり、「経営」そのものであると確信しました。
早稲田大学大学院商学研究科卒、MBA(経営学修士)。コナミスポーツ、サザビーリーグなどで様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年にトリドールホールディングス入社。2022年より執行役員CMO兼(株)丸亀製麺 常務執行役員 マーケティング本部長として、「感性×データサイエンス」で持続的に勝つ確率を高める“感動ドリブンマーケティング”、「内発的動機」にフォーカスしEXとCXのスパイラル構造でビジネスを伸ばす独自のマーケティングメソッドで国内外の事業成長を牽引。2026年4月より現職。
もうひとつ培ったのは「やり切る力」です。丸亀製麺では、データサイエンスを取り入れながら、自分の主観と感性を信じ、「KANDO(感動)」という非合理なものを追い求めてきました。常識の逆を行くような選択をすることも多く、社内での反対がなかったわけではありません。ですが、相反する二つを諦めず両立させる、そして周りから反対されても「絶対成功するから俺を信じてほしい」と腹をくくってやり切る。その胆力を養うことができたと思っています。
成功も失敗もありましたが、丸亀製麺では僕のやりたいことはほぼ9割方実現できました。もちろんすべて僕ひとりの力では成し遂げられなかったことであり、店舗スタッフの皆さまやチームの皆には本当に感謝しています。
リテールマーケティングの面白さは「速さ」と「近さ」
MarkeZine:南雲さんは、ずっとリテール領域でマーケティングに携わってこられました。この領域のマーケティングの面白さは何でしょうか?
南雲:二つあります。まずは何と言っても、結果が出るスピードが早いことです。自分たちが考えた商品や施策の結果が、ほぼ即日で返ってきますから。このスピード感と手応えはリテールならではの醍醐味です。
もうひとつは、生活者との距離が圧倒的に近いこと。店舗に行けば、自分たちの商品やサービスを手に取り喜んでいるお客さんの笑顔をリアルに見ることができます。新商品発売の日は、今でも現場に張り付いて、お客さんの様子を観察していますね。この早さと近さは「やってよかった」という仕事のやりがいに直結していると感じます。
また、リテールビジネスには、店舗でしか体験できないリアルな価値と驚きやワクワク、人と人の繋がりを生むエモーショナルな価値があります。外食も小売も、リテールビジネスは生活インフラとして重要な役割を担っているからこそ、マーケティングの力が社会の豊かさに直結する面白さがある。24時間この仕事のことを考えていても苦じゃないくらい、自分の天職だと思っています。
