三河屋さん的サービスの台頭
結果、生まれてくるのは、20世紀のマス文化で失った「個」に対するきめ細やかなサービスだ。
いわば、テクノロジーによって実現される『サザエさんに登場する三河屋さん』のようなコミュニケーション、サービス、セールスである。磯野家の家族構成や趣味趣向を知り尽くし、冷蔵庫の中の在庫量まで想像がついており、それにも関わらず「うざい」と思われることなく、サザエさんは三河屋さんに絶大な信頼をおいている。
この綿密なマーケティングを、まだ中途半端ながら具現化しつつあるのが、「アマゾン」が行っている購入履歴からのレコメンデーションであり、「この本を買った人は…」というアフィニティマーケティングである。しかし、未だ大いに改良の余地があり、それを実現するのは1社のみでは技術的にも「顧客を知る」という意味でも難しいと考えられる。
本当の意味での「三河屋さん的サービス」を実現するにはどうしたらいいのか。米国ではいち早く「ツールの連携」という答えが注目を集めつつあるという。たとえば、Web解析とCRMを連携させることによって、コンバージョンにまでつながる「本当の広告の効果」を測定したり、Webサイトでのドロップアウトのタイミングにあわせて購買を促進するメールを送ったり、さまざまな連携が期待できるというわけだ。
自動化を実現する「Omniture Genesis」
マーケティングの自動化を実現するツールとして注目されているのが、オムニチュアの「Omniture Genesis」(オムニチュア・ジェネシス)だ。
9月12日に日本市場投入が発表されたこのツールは、簡単なウィザード方式でツールとツールを連携させることができ、検索マーケティングパートナーとして、グーグル、ヤフー、そしてSalesforce.com、ダブルクリック、メールマーケティング会社、サイト検索、行動ターゲティングの企業など、130以上もの企業がパートナーになっている。
さらに、これらのサービスの連携を“自動化”させることによって、より多くの顧客に対し、より細やかなサービス提供が可能になるという。
たとえば、insidesales.comでは、電話セールスを含む自動マーケティングを提供している。代表電話に電話がかかってから5分以内にA対応を、1時間にはB対応を、24時間にはC対応をというように、最適と思われる対応を考え、時系列と可能性に沿って設定してあるという。おそらく、ぎこちないこともあるかもしれないが、後々洗練されてくるに違いない。
湯川氏は、これまでのCRMシステムに対して、自動マーケティングツールを「テクノロジー主導で能動的」と表現する。つまり、CRMは営業担当者の支援ツールであり、自動マーケティングツールはそれ自体が意志をもち、人にしかできない部分だけを人が担うというわけだ。
さらに先駆的な例として「ciena」が導入した自動マーケティングのシステムが紹介された。そこにはオムニチュアのweb解析ツール、vtrenz社の自動マーケティングツール、salesforce.comのCRMツールが連携している。
見込み客への製品のオファーから、リマインダー、フォローアップと順に進めていき、最後は「これが最後のチャンスです」というメールでだめ押しする。それらのメールを自動化によって送るこのシステムが獲得した顧客は、いまや全体の36%にものぼるという。
