次期ブラウザに求められるのは?
JavaScript性能とウェブ標準という二大指針は、ウェブブラウザはもはや単体のアプリケーションではなく、ウェブアプリケーションを動作させるプラットフォームの一部になるという方向を示している。Chromeにメニュバーやタブバーが最低限しかなく、コンテンツの表示エリアがとにかく広く取ってあるのもそういう意図からだろう。
まとめると次世代のブラウザが指向している要件は次のようになる。
- 複雑なJavaScriptアプリケーションでもサクサク動作するスピードと軽快さ
- ウェブ標準に準拠して書かれていればどんなサイトでも正しく表示する正確さ
どんな便利な機能が充実していても、この2点がクリアされていなければ次世代のウェブブラウジングには向かないブラウザということになるだろう。思えば、Forefox 3のリリース時にも“こんどのキツネは爆速だぜ!”のキャッチフレーズで、なにを置いておいてもまず「速いキツネ」をアピールしていたのもその傾向の表れだろう。
そして、マイクロソフトただひとりが、JavaScript処理スピードアップアップ+ウェブ標準準拠合戦から距離を置いているのもおもしろい。IE7に自動更新できるにもかかわらずいまだIE6を利用しているようなライトなネットユーザーにとっては、ChromeやShiretokoが提供しようとするウェブアプリケーション性能は必要とされていないもの事実で、そういったユーザーによってIEの優位は保たれている。

むしろマイクロソフトは(少なくともIE8では)、ウェブ標準準拠も進めてはいるものの、それよりもウェブアプリケーションやuserscriptで提供可能な機能までIE自身に取り込んで、よりリッチなインターフェイスのアプリケーションをユーザーに提供しようという方向のように見える。
果たして、スピードの向こう側を追いかける新興ブラウザがシェアを延ばしていくのか、それともIEが保守的なユーザーをガッチリとつかむことができるのか。ウェブブラウザをめぐる状況は冬(そして2009年)に向けて、とても興味深い局面にあるようだ。