アマゾンはロングテールで二度笑う
そんな小売業における重要な経営指標のひとつが「総資産利益率(ROA)」だ。難しい説明は省略するが、要するにこの数字が大きければ大きいほど、少ない在庫で多くの利益を上げている優良小売業であるという、そういう指標である。アマゾンのROAは、9.0%。アメリカの有名リアル書店バーンズアンドノーブルの利益率は4.6%。やっぱりアマゾンの方が優秀だ。ちなみにパソコンメーカーのデルのROAは15.5%で非常に優秀である。スーパーマーケットチェーンのウォルマートは8.1%。
コンサルタントの鈴木貴博氏は、著書『アマゾンのロングテールは、二度笑う』の中で、面白い分析を試みている。アマゾンのROAに対して、「アマゾンの業績からロングテール分を引くと?」というもので、アマゾンの売上を、Web1.0部分とWeb2.0部分に分けて見てみるという趣向だ。
Web1.0+Web2.0=アマゾン
アマゾンの売上における「Web1.0部分」とは、アマゾンが「便利で買いやすいから・ユーザビリティが優れているから」売れている部分とする。一方、「Web2.0部分」とは、マイナー書籍の売上、ロングテールの売上と見立てる。
くわしい分析は同書の第7章を見てもらうとして、結果としては、アマゾンのWeb1.0部分だけの利益を試算した場合、ROAは4.6%で、リアル書店のバーンズアンドノーブルと大差はなかった。つまり、アマゾンがアマゾンたりえているのは、Web2.0のロングテール部分があるがゆえであると。
アマゾンにおけるWeb2.0(ロングテール)の売上とは、要するに「販売はしているけれど在庫は持っていない書籍の売上」のことである。一方、Web1.0の売上は「アマゾンが在庫を持っている書籍」、つまり注文ページで「通常24時間以内に発送します」と表示される書籍の売上のことである。こうしたマイナーな本の売上(在庫を持たなくてよい売上)が、積もりに積もって「長い尻尾」になる。そしてアマゾンとしてはROA(総資産利益率)は上昇し、9.0%となり、バーンズアンドノーブルを抜いていく。「アマゾンはロングテールで二度笑う」と言われるゆえんである。
と、ここまで言っておいて何だが、私は、アマゾンはロングテールビジネスではないと考えている。なぜならば…。

