大きなカテゴリ分類からはじめ、徐々に最適解を絞り込む
実際にライトタイムマーケティングを行うにあたり、ルールをどのように求めていくかもポイントのひとつだ。
「前述のように、ライトタイムマーケティングには最適解が無数にあります。一度に完璧を求めると、細かいルールがたくさんできますが、それでは実行が大変で、汎用性がないルールになってしまう。ルールをたくさん出せばいいというのではなく、実行サイクルなどとのバランスを考えながら最初は大きなくくりでルールを作って実行し、徐々に絞り込んでいくとよい」と、白井氏。
例えば、はじめは20代女性をターゲットにし、その結果をふまえて2回目は20代女性になんらかの条件を加えて実行するという具合に、ルールを絞り込んでいき、徐々に最適解を絞り込んでいく。大きなくくりでPDCAを回したあとに大枠を区切り、またPDCAを回すということを数回繰り返すと、最適な答えを見つけることができます。
「1度で結果を出そうとせず、PDCAを回しながらブラッシュアップしていくという姿勢で臨むことが重要です」(白井氏)
そのためには、1回実行するごとの効果検証も重要となる。効果検証を行う際は、“効果”の定義を明確にすることが重要なので、先ほど得られたルールが正しかったのかどうかを正しく測定して評価していくことが必要になるという。この実行の過程は、理系の実験で行われる分析工程に似た作業だ。
「得られた結果は、次の詳細分析のデータを取っているんだという考え方、結果のデータを得るために実験をしているんだという考え方で行うとよいと思います」(白井氏)。1回の実行を「更なる詳細分析のためのデータ収集」と捉え、PDCAサイクルをうまく回していくのが、ライトタイムマーケティングの成功の秘訣だ。
失敗しないために心がけるべきこと
最後に、ライトタイムマーケティングで失敗しないために心がけるべきことを、うかがった。
「最適なタイミングが、ターゲットとメッセージ、伝え方により異なることは先ほども述べましたが、ライトタイムマーケティングを実践した結果、仮に効果が悪かったとしても、タイミングだけが原因ではありません」(白井氏)
- 誰に(ターゲット)
- 何を(メッセージ)
- どのように(伝達方法/クリエティブやチャネル)
- いつ(タイミング)
1回の実行で得た結果が悪い場合は、(4)のタイミングだけではなく、(1)~(3)の要素も見直す必要があるとのこと。(1)~(3)のどこが原因なのかを見つけるテストを行うのも効果的だ。
また、時代のトレンドや時期による変動といった測定できない外的要因の影響があることも忘れてはならない。矛盾するようだが、同じことを行っても同じ結果になるとは限らないため、複数回同じ条件を試すことも、ときには必要になるとのこと。
「成功した時に分析するよりも、失敗した時の分析が効果的な分析になることが多い。失敗を失敗で終わらせないこと、何を持って失敗とするかも重要です」(草野氏)。このように、大変そうに見えるライトタイムマーケティングだが、「必ず最適な答えは出てきます」と、白井氏。一度で正解を出そうとはせず、トライ&エラーを繰り返す。ただし、ここで得られた結果は、その後のあらゆるプロモーションに適用でき、次の商品開発にも活用できるので、すべてに使える分析を行っているという気持ちで行って欲しいと語る。
はじめに目標を明確にすること、その目標に対して結果を正しく分析すること、欲張って一度で正解を見つけようとせずに徐々に正解を絞り込むこと。この回り道のように見える課程が、ライトタイムマーケティングの、成功への近道なのである。