まずゴールを明確化すること
「ライトタイムマーケティングをはじめるにあたっては、はじめに現状を把握し、ビジネスゴールを設定します。これはデータマイニングの考え方の基本で、ライトタイムマーケティングは切り口が時間軸になるだけです。ライトタイムマーケティングを実践する際も、ゴールが明確になっていないと効果検証もできず、分析中に目的を見失うこともあります。そういった事態を防止するためにも、しっかりと目標を設定することが出発点になります」(Daarf/白井氏、右写真)。
そのために、まずはサイト分析や顧客DB分析、メディア分析などで現状の把握を行う。そこで得られた分析結果から、何を持って理想的なユーザ(優良顧客)とするかを詳細に定義していくのだ。
ビジネスゴールとしては、コンバージョン率の向上やブランドイメージの向上、メディアの最適化などがあるが、例えば「購入した人」「特定のページを見に来た人」「たくさんのページを閲覧した人」といった具合に、一般の人との違いを見つけて、より具体的に理想的なユーザを定義していくのが望ましい。
理解を深めるために、ある事例を紹介しよう。ある病気の治療製品の販売を行っている某美容系医薬品メーカー。このメーカーには病名を啓蒙するサイト、製品の購買を促進するためのサイト、継続利用をさせるための会員向けサイトがあり、より効果的なWebマーケティングを行うために、ライトタイムマーケティングを活用している。
この例では、ターゲット(ユーザー)をいくつかの顧客ステージに分け、既存サイトに対して閲覧行動履歴の解析を行っている。どのページをどのような履歴で閲覧していったユーザーが多いかや、どのコンテンツでサイトから離脱しているユーザーが多いかなどを詳細に解析し、それぞれのターゲットの現在の行動パターンと、問題点を把握する。その解析結果を基に、それぞれのターゲットを次の顧客ステージにステップアップさせるための導線設計など、具体的な改善提案を行っていく。


離脱の少ない経路についても別途取り上げて、詳細に経路分析を行っていく。
これにより、どこで離脱していくのかを把握するだけでなく、
離脱をさせないための改善提案につなげることができる。
(「×」は離脱したページ、赤斜線(点線)は9割以上の離脱ラインを表す/クリックすると拡大)
ライトタイムマーケティングでは、この例のように現状把握と目標設定(STEP1)、そして改善提案(STEP2)が非常に重要となる。が非常に重要となる。今回は例としてWebマーケティングを中心に説明したが、このような分析の考え方に基づいて、経験を積んだ人が様々なデータを使ってトータルに分析を行うことが成功の秘訣だと言っていいだろう。この分析作業を整理しながら行うためには、白井氏のようなアナリストの力が必要となるのである。戦略が重要となるライトタイムマーケティング。iSiDとDaarfが、戦略のコンサルティングとツールの両輪でソリューションを提供している理由は、ここにある。
ゴールデンルールは存在しない
現状把握と目標設定、改善提案が終わったら、次はいよいよ実践に入る。実践に入ると、最適解をなるべく早く見つけたいと思うもの。だが、「この製品は日曜日の何時にメールを送れば良く売れる、といったゴールデンルールを導きだすことを想像される人が多いと思いますが、それはライトタイムマーケティングとは違います」と、白井氏は言う。よく始めから結果(ゴールデンルール)を紹介してほしいという要望もあるようだが、商材やターゲットが変われば最適解も変わる ライトタイムマーケティングでは、マーケティング要素である、ターゲット、メッセージ、伝達方法などのどれか一つでも変われば、最適解は変わるのである。
前述の美容医療品メーカーの例でも、ターゲットは複数のグループに分かれていたが、それぞれのターゲットにどのようなメッセージを伝えるかによって、タイミングは異なり、答えは複数パターンある。ライトタイムマーケティングでは、最適解が無数にあることをまず頭に入れて実践に移る必要があるようだ。また、ライトタイムだけに着目した実践に陥らないようにすることも、注意すべき点だ。
「“最適なタイミング”は、あくまでもマーケティング戦略のひとつ。タイミングだけで考えていくと、効果が半減します」(白井氏)。
- 誰に(ターゲット)
- 何を(メッセージ)
- どのように(伝達方法/クリエティブやチャネル)
- いつ(タイミング)
という要素の(1)~(3)の内容で、最適なタイミングは異なることに注意して実践していく必要がある。逆に、ライトタイムマーケティングは、(1)~(3)をしっかりと行った上で、さらに効果を上げるためにタイミングの要素を取り入れると考えた方がいいだろう。