情報源は携帯よりもPC テレビには接しないが、本は読む
オトノリのサービス化について、実験を重ね、特許取得や企業への提案といった野心も覗かせる二人だが、彼らが普段接しているメディアや、メディアに対する印象についても聞いた。
本を読むのも端末を使い、家には4つのディスプレイをデスクに載せてPCを活用しているという鈴木氏は「僕は電車の隙間時間を効率的に利用するために、紙をスキャン、PDF化し、デジタルデータにしてから端末に入れて、持ち歩いています。情報を得る媒体は、パソコンですね。テレビは話題に追いつくためにワンセグで見ています。新聞については、情報ソースが誰なのかがわかるという点で利用しています。Webだと署名がなかったりしますよね」と独自の観点からメディアを活用している。
友人から“情報アニマル”と言われているという六反氏は、主に携帯よりPCで情報収集していて、書籍や雑誌はたくさん読むが、新聞もテレビもまったく見ないという。メディアとしての携帯については「自分が知りたいと思った情報のフックになるものを、ちょっと探してみる、ぐらいのスタンスで携帯を活用していると思います。それ以上に何かを得ようとすると、携帯の場合は、そこで表現できる内容が限られると思っているので、“メディア”にはなりきれていないと個人的には思います。携帯で動画見ようとは思いませんし、ケータイゲームもやろうとは思いません」とのことだった。

普段からメディアを研究し、今後もメディア業界に関わっていく二人。検索連動広告市場が拡大し、クリエイティブよりも技術が偏重されている感のあるインターネット広告業界についての率直な印象聞いた。
マスビジネスの延長線上では意味がない
鈴木氏は、「Web2.0と騒がれていましたが、ネット広告のビジネスにおいて行われていることは、結局、大手広告代理店が得意とするマスビジネスです。現状、Googleが一番集客力のあるメディアなので、そこの枠を売ろうという発想だと思います。そのアンチテーゼのひとつとして、口コミの研究に取り組んでいます。研究テーマは『企業のオンラインマーケティングにおける消費者ブログの活性化要因についての考察』で、これだけ人の興味が細分化しているのに、ひとつのメディアにみんなが集まるという発想に違和感を持っています。
特にネットの場合は、無数のメディアがあり、それぞれに人が散らばっています。散らばったものでどう利用者を動かせるかという仕組みが、そろそろ出てきてもよいのではと感じています。マスビジネスは、クライアントにもプレゼンしやすいので楽ですが、新しいビジネスを分かりやすく伝えていく必要があると思います。そう考えると、ストーリーやコンテクストに巻き込みやすいゲームやおもちゃといったエンターテイメント分野の人たちが打開していっても面白いかと思います」と、インターネット広告の将来の展望を語った。

“コンテンツ”を意識したメディア作り
六反氏は「結局、旧来からある“枠”のビジネスの議論が続いているだけだと思います。オトノリの場合も、利用者が増えればそこを広告枠にするという話もあるでしょう。でも、自分はインタラクションが「モノ」と「ヒト」とをどう結びつけるか、に興味があるので、単に強制的に聞かせる枠にはしたくないです。
自分のアイデンティティを投影する携帯によって関係を作るメディアにしたいから、もっと好きになってもらうとか、見たい・聞きたいと思わせるとか、ちょっとコンテンツ化する必要があると思います。障壁はいろいろとあると思いますが、エンゲージメントを意識した手法の方が、今後は伸びると思います」と、新しい広告表現へのチャレンジ姿勢を示した。「経験のなさ」はときに、すばらしい発想を生み出し、イノベーションへとつながる。これから、彼らはどう成長していくのか、今後の活躍に期待したい。
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