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水野貴明の“技術から学ぶ”アクセスログの読み方

第2回 IPアドレスを理解してアクセス解析結果を“正しく”理解する(後編)


プロキシサーバでIPアドレスは隠される

 IPアドレスが共有されるもうひとつの仕組みとして「プロキシ」サーバと呼ばれるものがあります。プロキシとは「代理」という意味で、図8のように、Webサーバへのアクセスを中継して、「代理」でWebサーバにアクセスしてくれるコンピュータのことをいいます。

図8 プロキシサーバの仕組み

 プロキシサーバの用途としてはプロキシでデータを蓄積(キャッシュ)することで、ネットワークをやり取りするデータ量を減らしたり、不正なアクセスを食い止めるなどいろいろなものがありますが、目的にかかわらず、プロキシを使うことで、Webサーバ側で記録されるのは、実際の利用者のIPアドレスではなく、プロキシのIPアドレスになってしまいます。

 したがってプロキシを利用してアクセスをしている人の本当のIPアドレスは、知ることができません(ただし、プロキシの中には、本当のアドレスをサーバに通知してくれるものもあります)。

 それでも、プロキシサーバがある組織内にあって、その組織の人しか使っていないようなものであれば、そのプロキシサーバ自体のホスト名から組織名まではわかります。しかし、身元を隠すことを目的に、インターネット上には誰でも利用できるプロキシサーバも存在しています。

 こうしたプロキシサーバを利用したアクセスの場合、記録されるのはそのプロキシサーバのIPだけですから、実際のアクセス元はまったくわからないことになります。ただし、こうした外部のプロキシを利用している人はごくわずかではあるので、アクセス解析のように統計的な解析では、ほとんど無視できるといえるでしょう。

 こうしたプロキシサーバは、どこかのコンピュータに不正にアクセスを行う際、元を隠すために利用されたりしますが、それ以外にも、特定のIPアドレスからのアクセスを禁じているようなサーバにアクセスする場合などにも利用されます。たとえば筆者は以前、あるソフトウェア(そのソフトウェア自体はごく普通の合法的なものです)をダウンロードしようと思いましたが、そのMac版をダウンロードできるサイトが、日本からのアクセスをすべて禁止していたため、こうしたプロキシサーバを経由してダウンロードを行ったことがあります。

コラム:不正なアクセスとプロキシ
本文中でも述べたように、プロキシサーバは悪意のある人がサーバに不正にアクセスするためにも利用されてしまいます。 数年前、筆者が管理していたサイトが不正に書き換えられたことがありました。このサイトではフリーのプログラムを利用していたのですが、そのプログラムにセキュリティホールがあり、そこをつかれたのです。このときは、同じプログラムを使っていた多数のサイトが同じ犯人によって被害にあい、その結果警察が動く騒ぎになりました。 その際にアクセスログの提出を求められたので、実際に書き換えの際に利用されたログを自分でも調べてみたところ、タイのあるプロバイダが管理しているサーバからのアクセスになっていました。しかし本当はタイからのアクセスだったわけではなく、このタイのサーバで使っているプログラムにも管理者の意図に反してセキュリティホールがあり、プロキシとして利用できてしまっていたため、犯人はこれを利用して自分の身元を隠していたのです。 こうした場合、それ以上の追跡は筆者のような一般人には無理ですが、警察はそのタイのプロバイダにログの提出を求めたらしく(プロキシサーバは、そのコンピュータに自分自身のログを保存しているのが普通です)、その結果実際の書き換えを行った犯人は特定されました。 その犯人は日本人で、日本からアクセスを行っていたのですが、まだ未成年だったため、警察からは犯人がわかったという連絡があっただけですが、犯人が補導されたというニュースはテレビでも報道されました。 われわれ一般人では、IPアドレスから個人の身元を判断することはほとんどできませんが、それぞれの組織内には実際のアクセス元に関する情報が残っているので、警察がきちんと調べれば、その情報は特定されてしまうのです。

次のページ
IPアドレスからのアクセス元の地域特定(1) TLDの利用

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この記事の著者

水野 貴明 (ミズノタカアキ)

1973年東京生まれ。バイドゥ株式会社勤務の兼業テクニカルライター。学生のとき に父親が買ってきたパソコン(マイコン)と出会い、コンピュータとの付き合い を開始。大学は有機化学、大学院では分子生物学を学ぶも、就職で再びコンピュータの道を進むことになった。その後インターネットの普及により、様々な方に出会う機会を得て1999年より執筆活動を開始。 http://d.hatena.ne.jp/mizuno_takaaki/

 

著書
『アクセス解析でホームページの集客を極める本』 水野 貴明著、 ソーテック社、2005年3月 
『詳解RSS~RSSを利用したサービスの理論と実践』 水野 貴明著、ディー・アート、2005年8月

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2008/04/16 16:47 https://markezine.jp/article/detail/64

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