IPアドレスからのアクセス元の地域特定(1) TLDの利用
IPアドレス(とホスト名)からアクセス元となるプロバイダや学校、企業といった組織名がわかることはすでに紹介しましたが、IPアドレスからわかることは、それだけではありません。アクセス元の地域、つまりアクセス元のコンピュータが地球上のどの場所にあるのか、ということもわかってしまうのです。
最初に述べたように、IPアドレスはコンピュータの場所を表す「住所」なのですが、それはあくまでバーチャルな住所であり、リアルな住所にそれを一定の法則で変換できるわけではありません。しかし、IPアドレスを割り振られたコンピュータ自体は、地球上のどこかに必ずあるわけで、さまざまな情報からその位置をある程度特定することができます。アクセスもとの地域を割り出す方法はいくつかありが、どの方法を利用するのかはツールやサービスによって異なります。
まず一番簡単なのはTLDを利用する方法です。TLDとは「トップレベルドメイン」の略で、「jp」や「com」など、ホスト名の一番右側の部分です。このTLDは、そのドメインを管理する国の情報が含まれています。たとえば「jp」なら日本、「uk」ならイギリス、「it」ならイタリアです。このTLDを集計することで、どの国のドメインからアクセスが多かったのか、といったことがわかります(図9)
| 国名 | TLD |
|---|---|
| アラブ首長国連邦 | ae |
| カナダ | ca |
| チェコ | cz |
| ドイツ | de |
| フィジー | fj |
| イタリア | it |
| 日本 | jp |
| ミャンマー | mm |
| ペルー | pe |
| シンガポール | sg |
| トンガ | to |
| アメリカ合衆国 | us |
ただし、これでアクセス元の地域が完全にわかるかといえば、残念ながらそうではありません。なぜならば、TLDによっては、その国以外の人でも取得できるものがあるからです。たとえば「com」や「org」、「info」といった国の名前と関係の無いドメインは基本的に世界中どこに住んでいても取得が可能ですし、トンガのドメインである「to」やツバルの「tv」をはじめとして、インドの「in」や中国の「cn」、イギリスの「uk」などがその国以外の人でも取得可能です。それに対して日本の「jp」やフランスの「fr」など、その国に在住している人や、その国で登記している企業のみが取得できるトップレベルドメインもあります(図10)。
| 登録を海外に開放しているccTLD | |
|---|---|
| am | アルメニア |
| bz | ベリーズ |
| cn | 中華人民共和国 |
| cx | クリスマス諸島 |
| fm | ミクロネシア連邦 |
| gs | 南ジョージア島・南サンドイッチ諸島 |
| tc | タークス諸島・ナイコス諸島 |
| to | トンガ王国 |
| tv | ツバル |
| uk | イギリス |
| vg | イギリス領バージン諸島 |
| 登録を海外に開放していないccTLD | |
|---|---|
| bb | バルバドス |
| bo | ボリビア |
| br | ブラジル |
| ca | カナダ |
| es | スペイン |
| gr | ギリシャ |
| hk | 香港 |
| is | イスラエル |
| jp | 日本 |
| py | パラグアイ |
| uy | ウルグアイ |
したがって、外国からでも取得可能なTLDがアクセス解析結果にあらわれても、その国の人がアクセスしてきたとは限らないのです。もちろん日本やフランス、カナダなどのその国限定のドメインであれば、その国の人か、少なくともその国になんらかの関係がある人だと言えるでしょう。しかしTLDだけで、アクセス元の国がすべてわかる、と思ってはいけないということなのです。
