生成AI利用者の約8割が「旅行の際に生成AIを活用して計画を立てている」という(JTB総合研究所の調査より)。そうした現状に対し、旅行計画に関する知見と、50年以上培ってきたガイドブックの編集知を結集してAI時代のあらたな旅行体験提供を目指しているのが、JTBパブリッシングだ。プレイドが開催したカンファレンス「X DIVE 2026」では、プレイドとともに新しいCX実現に挑むJTBパブリッシング 代表取締役 社長執行役員の盛崎宏行氏と、プレイドでData Mind/Business Lead of AIを務める西村達一朗氏、そしてモデレーターのプレイド 古市倫大氏が集い、AI時代における旅行メディアの新たな体験価値について議論を深めた。
年間約1億PVのメディアカンパニーが挑む変革
JTBパブリッシングは、交流創造事業を展開するJTBグループで唯一のメディアカンパニーだ。国内外200タイトルにもおよぶ『るるぶ情報版』をはじめ、創刊100年を迎えた『JTB時刻表』、大人世代向け定期購読誌『ノジュール』などの旅や交通にまつわる図書ブランドから児童書、ビジネス書まで幅広く発行している。
デジタル領域では、旅行情報サービス「るるぶ+」に加え、ファミリー向け「るるぶKids」、女性向け「るるぶ&more.」などのライフスタイルメディアを運営し、全体で年間約9,950万PVを獲得。新宿・紀伊國屋書店の地下ではリアル店舗メディア「るるぶキッチン」も展開するなど、事業は紙の出版にとどまらない。
現在の多角的な事業の背景には変革があった。その起点は同社の代表取締役 社長執行役員を務める盛崎宏行氏が現職となり、プレイドとの伴走が始まった2022年にさかのぼる。盛崎氏は「ほとんどの方は、旅行ガイドブックといえば旅行の行き先が決まってから1冊だけ買って使うと思います。そのマーケットから、ガイドブックのコンテンツを構造化・デジタル化することで、旅行の検討段階にいる方々へと接点を広げ、マーケットの拡大を実現してきました」と語る。
現在進行中のテーマと伝えられたのは、過去蓄積された膨大なデータと編集力を掛け合わせ、AIを活用した「コンテクストプラットフォーム」へと進化させることだ。
旅行検討は「検索・閲覧」から「相談・提案・代理」へ
(写真右)プレイド Head of CX Strategy Team Managing Director 古市 倫⼤氏
AIにより、顧客の旅行行動はどのように変化しているのか。セッションに登壇したプレイド Data Mind/Business Lead of AIの西村達一朗氏は、「旅行検討のプロセスが従来のキーワード検索から大きく変わりつつあります」と指摘する。
「たとえば『軽井沢 1泊2日』という従来のキーワード検索ではなく『今週末、家族と日帰りで出かけたいと思っているが、おすすめは?』と自然言語で相談し、出てきた候補を見ながら『雨が降りそうだけど大丈夫?』と悩みをぶつけ、最後は『あなたにはこっちが合うかも』とAIが提案するアイデアから旅行先を選ぶようになりました。さらにこの1年で、選択をサポートするだけでなく、その後の実際の予約や購入までAI Agentに任せる方向へ急加速しています」(西村氏)
その象徴として西村氏が挙げたのが、Googleが毎年春に開催する大規模な年次開発者会議「Google I/O 2026」での一連の発表だ。欲しい情報をAIが24時間自動で探し続ける「Search Agents」、検索結果の画面そのものをユーザー専用にその場で組み立てる「Generative UI in Search」、そして購入手続きを共通化する「UCP」、サイト横断の「Universal Cart」、AIに安全に決済を任せる「AP2」。「このようなWeb体験が当たり前になると、ユーザーは『もう個別のサイトに行かなくていいのではないか』という議論すら出てくる」と西村氏は語る。
AIがユーザーをWebサイトへ誘導する代わりに内容を要約するようになれば、作り手に収益と評価が戻らなくなる。モデレーターのプレイド 古市倫大氏は「Webの健全な再生産ループが崩れかねない」と指摘する。
顧客との接点も、従来のような「検索型」だけでなく、SNSなどで偶然出会う「推薦型」、ChatGPTやGeminiに相談する「会話型」、LINEなどでつながる「CRM型」、計画や予約を任せる「代理型」へと多様化している。こうした接点の細分化により、万人向けに作られた企業サイトやオンラインメディアへの流入が減少するという最悪なシナリオが、あらゆるオンラインメディアの前に鎮座しているわけだ。
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岩崎 史絵(イワサキ シエ)
リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:株式会社プレイド
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