消費者が情報を検索・収集するプロセスは、AIの登場で劇的に変化している。こうした中、企業は従来のSEOから、AIの回答を最適化するAEO(Answer Engine Optimization)へ焦点を移していく必要がある。MarkeZine Day 2026 Autumnのセッション「顧客がAIに質問したとき、あなたのブランドは適切に表示されていますか?」では、サイトコア株式会社の森澤仁氏が登壇。同社が提供するAI検索追跡・最適化ソリューション「Scrunch(スクランチ)」の調査データや実機デモを交え、AIの回答において「公式情報が引用される重要性」と、既存のWebサイトを改修することなくAI向けに最適化する技術の全貌を語った。
自社サイトとズレるAI回答
「自分がよく知っている領域や自社製品について、生成AIに質問してみたことはあるでしょうか」セッションの冒頭、サイトコアの森澤仁氏は参加者にこう問いかけた。
森澤氏自身がスマートフォンを買い替える際、ChatGPTなどのAIツールで「このブランドはどうですか?」と質問してみた体験を明かした。AIからはスペックやディスプレイの解像度といった一般的な情報は提示されたものの、そのブランドが最も訴求したいであろうコアな技術背景やブランドの価値は、最初の回答には含まれていなかったという。
「その領域に詳しい人ほど、この違和感に気づくはずです。AIはWeb上の記事などを参照して回答を組み立てるため、深く質問を繰り返せば情報が出てくるものの、ファーストアプローチでは最も大事なポイントが抜け落ちてしまうのが現状です」(森澤氏)
顧客が情報や“答え”を得る場所は、この10年間で3つの世代を経て変化してきたと森澤氏は分析する。検索結果の一覧から選び取る第1世代、検索結果の上部に表示される要約を見て納得する第2世代に続き、現在はAIツールに直接尋ねて一度に解答を得る方法が一般的になりつつある。

「これまでは、検索結果の候補一覧に入れることが企業のマーケティング担当者の仕事でした。しかしこれからは、AIが生成する『答えそのもの』に入れるかどうかが問われます」(森澤氏)
そのため企業は、従来のSEOからAIエンジンに対して自社情報を最適化するAEO(Answer Engine Optimization)への対応が急務となっているのだ。
「根拠が引用されているか」が最重要。AI回答の4つの評価軸
SEO時代の「順位」という単一の物差しでは、AI検索におけるブランドの影響力を適正に評価できない。サイトコアでは、AI回答におけるブランドの可視性を次の4つの軸で測定・分析している。

4つ目の「Citation(サイテーション)」こそ「従来のSEOには存在しなかったAI時代特有の軸」と森澤氏は指摘する。Webサイトへのクリックが発生しないゼロクリック環境下では、従来のアクセス解析ツールには数値として表れないため、実務上で最も競合との差がつく重要な観点となる。
サイトコアでは、スマートフォンのブランドを展開する複数社を対象に、AI回答における登場率を調査した。その結果、A社が43%、B社が40%と、市場シェアとは異なる割合が測定されたという。森澤氏は「2026年8月時点の測定値であり、あくまで当社が設定したプロンプトによって導かれたアウトプット」とことわりを入れつつ、AIを利用するユーザーの指向に寄った回答が表れることを示唆した。
リコールの続報が引用されず不利益を被るメーカーの例
同社では食品・自動車メーカーを対象にした調査も行った。測定対象のブランドが登場した割合(Presence)は50.5%、語られ方(Sentiment)の好意度スコアは89.8と高く、約9割のAI回答でそのブランドはポジティブかつ肯定的に評価されていた。

ところが、肝心のCitationの観点で見ると、AIが回答の根拠として企業の公式情報(WebサイトやSNS、プレスリリースなど)を使用していた割合は、わずか7.5%(約13回に1回)にとどまる結果となった。
スマートフォン、食品、自動車という様々なジャンルにおいて、AI回答でブランドは登場し、好意的に語られるが、公式情報はほとんど引用されていない。このことは、AI時代のマーケティングにおける共通の課題であると言えよう。
AI回答のCitationが低い、つまり公式情報が引用されないと、企業はどのような不利益を被るのか。森澤氏は、リコールの続報が引用されず、消費者にネガティブな印象を与え続けたあるメーカーの例を挙げる。
そのメーカーが製品の回収・改修を行い、公式サイトで対応完了や安全性を報告していたとしても、ユーザーがAIに質問した際に「不具合発生当時」の記事のみを回答する可能性がある。「その後どうなりましたか?」と質問したユーザーに公式の最新対応情報が引用されない場合、安全性について誤解を与えることになるのだ。
「AIの回答は、たとえ同じプロンプトでも今日と明日で出力内容が異なります。そのため(AEOの対策は)SEOのように一度対応して終わるものではありません。運用サイクルを恒常的に回していく必要があるのです」(森澤氏)
AEOを実現する「Scrunch」2つのコア機能
AI時代におけるブランド最適化(AEO)を実現するためにサイトコアが展開しているのが、統合型ソリューション「Scrunch(スクランチ)」である。
Scrunchの主軸は「Monitor(モニター)」と「AXP(Agent Experience Platform)」の2つの機能だ。
Monitorで、主要LLMにおける自社ブランドの可視性を把握
Scrunch MonitorはChatGPT、Perplexity、Gemini、Google AI Overviews、Meta AI、Claude、Grok、Copilot、SearchGPTなど、主要9種類のLLMにおける自社ブランドの可視性を追跡・把握する機能だ。
AI検索は検索する日やAIの種類によって回答が変動するため、あらかじめターゲットとするプロンプト(想定質問)を登録し、毎日自動でトレースを行う。これにより、自社ブランドがどのように表示されているか、競合と比較してどの位置にあるか、なぜそのように表示されるのかという生成理由まで明らかにすることができる。

今日引用されたプロンプトで明日引用されなくなる
森澤氏は、実際にScrunchの管理画面を用いたデモを披露した。最初の設定は、分析したいWebサイトのURLを入れるだけで完了する。

「弊社の公式サイトを入れると、自動的に競合製品・ブランドも登録されます。CMSを扱っている当社の場合、アドビさんやAquiaさんが自動的に認識され登録されます」(森澤氏)
プロンプトを登録しておくと、自社製品がAIにどう言及されているのか、競合と比較した評価などが分析・提示される。なお、プロンプトは独自に設定できる。
たとえば「複数言語・複数ブランドを一元管理できるエンタープライズCMSはどれか?」といった、自社名を直接含めないプロンプトを登録して測定を行うとしよう。すると、過去10日間のデータが一覧で表示され、Presence、Position、Sentiment、Citationのそれぞれの評価が「OK」または「課題あり」でわかりやすく視覚化される仕様だ。主要なLLM別の評価も表示される。
PresenceやCitationの割合は、ダッシュボードでグラフの形で確認できるため、データを見ながら資料を作る手間は不要となる。
森澤氏は「評価は毎日変化し、引用されていたプロンプトで突然引用されなくなることもある。一度測定して終わりではなく、日々の運用として回していきましょう」と、提言した。
既存サイトを崩さずAI専用の「もう1つの入口」を設ける
Scrunchのもう1つのコア機能である「AXP(Agent Experience Platform)」は、AIに公式情報を正しく読み取らせて引用率を高めるための役割を担う。AIは、構造化テキストやラベルなどを参照するため、情報を補足する必要があるのだ。
AEO対策を検討する際、多くの企業が「WebサイトやCMSを全面改修しなければならないのか」という懸念を抱くが、AXPを活用すればその心配はない。AXPはサイトを作り替えるのではなく、既存サイトの上にレイヤーを追加する仕組みで、AI向けの「もう1つの入り口」を追加するようなイメージだ。

自社運用サイトはもちろん、他社のCMSを活用したサイトでも、見た目は既存サイトと同一のままAI向けの情報のみを別レイヤーで渡す構成になっている。森澤氏は「今あるWebサイトに手を入れることなくAEO対策に取り組める点が特徴」と本機能の強みを強調した。
正しい情報をAIに届け、ブランドの信頼につなげる
冒頭で森澤氏が述べたスマートフォンブランドの例のように、企業のWebサイトにはユーザーが知りたい技術のバックグラウンドや製品の価値が確かに掲載されている。しかし、それがAIに正しく届いておらず引用されないために、顧客の信頼につながらないという機会損失が発生しているのが現状だ。
多くの企業は「情報としては発信しているが、AIに引用されていないだけ」と、森澤氏は課題を改めて指摘。「まずはScrunchのようなツールを使って現状を測り、見えてきた課題に対してAXP機能で正しい情報を渡せるように修正していく。こうしたサイクルが理想的だと思います」と語り、セッションを締めくくった。
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岡田 果子(オカダ カコ)
IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:サイトコア株式会社
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