検索結果ではなくAIの回答がブランドと消費者の最初の接点となる今、企業は自社の“語られ方”を正確に捉える必要があります。その把握には、社内データに加えてニュースメディア、SNS、比較サイトなど、AIの引用元となる外部データが不可欠です。「MarkeZine Day 2026 Autumn」では、世界有数の外部データを提供するグローバル企業のMeltwaterが登壇し、データを横断的に分析するメリットとその方法を解説しました。
おにぎり値下げにネガティブなのはどんな層?
全世界のニュース、テレビ、SNS上の膨大なデータをリアルタイムに収集・分析し、顧客企業におけるブランド・消費者理解やデータに基づく意思決定を支援するMeltwater。同社が実施するモニタリングの参考例として、中川寛義氏はコンビニ各社でおにぎりが値下げされたニュースに対する世の中の反応を分析したレポートを紹介した。
「消費者の反応を定量化し、AIで要約したレポートでは『値上げは早いのに、値下げは遅い』など、意外にもネガティブな意見が多く見られました」(中川氏)
それらの声はどのようなユーザーから発せられているのだろうか。ユーザーのフォロー先といいねした投稿の情報などから、属性分析も行った。その結果、主に政治家や投資系インフルエンサーをフォローする投資コミュニティの発言者が多いことがわかった。
「この分析では、投資リテラシーの高い政治関心層が、おにぎり値下げのニュースをややネガティブに捉えていることがわかりました。我々は、こうした分析データをもとにコミュニケーション戦略を設計するなどして、顧客企業の支援を行っています」(中川氏)
また同社では、近年ChatGPTやClaude、GeminiといったAI領域にも対応し「AIがサービスやブランドについてどのような回答をしているか」を示すデータの提供を開始。こうした情報をもとに、事業活動の改善につながるインサイトを提供している。

検索順位1位だけでは生活者に選ばれない時代
中川氏によると、Meltwaterが日々接するマーケターやプロモーション担当者からは、 最近次のような課題を指摘する声が多く聞かれるようになったという。
1.自社ブランドがAIに正しい形で表現・評価されているか不安
2.SNSやニュースで話題になっても、AIの評価につながっているのか見えない
3.AIによるサービス・ブランド選出基準や引用元がわからない
4.データが部署・ツールごとに分断され、分析やその後のアクションにまで落とし込めない
なぜこうした声が上がるかというと、近年AIによって消費者の購買行動や情報収集の方法が急速に変わっているからだ。米国の調査会社SparkToroが公開した調査データによると、Google検索をしたユーザーのうち68%が、検索後に表示されるリンクをクリックせずにセッションを終えている。その割合は、10年前の48%と比べて約23ポイント上昇しているそうだ。多くのユーザーが、検索画面で生成されるAIの回答だけで、知りたかったことの回答を得られていることが要因の1つと考えられる。
「たとえSEOで検索順位が1位だったとしても、AIが自社のブランドについてどう伝えるかによって、生活者の意思決定が左右されてしまいます。企業がAI上での存在感を高め、そうした状況に対応するには、AIの特性を理解することが不可欠です」(中川氏)
AI時代に選ばれるブランドを構築するためには、ブランドや企業からの発信、ニュースメディアやSNSでの紹介はもちろんのこと、AIの評価を上げるという新たなレイヤーに対応するプロセスが求められる。生活者の持つブランドイメージは、これら3つのレイヤーが合わさって形成されていくためだ。

マーケ・広報を横断したデータ分析がAI回答を制する
影響力が大きいにも関わらず、生成AI上のブランド分析やGEO対策に着手できていない企業は多い。「SNS分析とニュース発信・報道分析を別の部署が担当していて連携が取れない」「広範な分析に必要な人材・時間・ノウハウが不足している」などの要因から、具体的なアクションを起こせていないのだろうと中川氏は推測する。

まずはデータや部署、リソースの壁を越えて、AI時代に適した横断分析を行うことが重要だ。従来マーケティング部門が管轄していたSNSやVoCデータと、広報部門が担当していたメディアデータなどを掛け合わせ、部署を横断してAI領域を包括的に捉えることがアクションにつながるという。

「AI領域が、左側のSNSとも右側のニュースとも重なりあっている点に注目すべきです。AIは、SNSでの口コミやメディア報道のどちらも参照して、独自の理解をします。そのため、すべてを1つのデータセットとして捉え、横断的に分析をすることが重要です。そこから『なぜAIがそう理解したのか』を深掘りしていきます」(中川氏)
「どこに掲載されるか」が自社ブランドの可視性向上の要
AIがどのSNSを多く引用しているのかをMeltwaterが調べたところ、1位は米国版の2ちゃんねるとも呼ばれるReddit、2位がX、3位がYouTubeという結果になった。InstagramやTikTokといったビジュアル中心のSNSは、AIへの影響力が大きくない。この点から、AIはテキスト情報が多く議論が交わされやすいプラットフォームや、情報価値の高い動画を重視する傾向がうかがえる。
同社では、AIツール別に「SNS以外も含めてどういったメディアの情報を参照しているか」を明らかにする調査も行った。比率はそれぞれ異なっているものの、どのAIでもニュースメディアが最も多く参照されていた。次に多い「その他」には、ブログやオウンドメディアなどが含まれる。SNSの参照割合については、AIツール6つのうち2つでは10%前後を占めるものの、ツールごとにばらつきが見られた。

「これらの結果から、AIは情報の正確性が担保されやすいニュースメディアや公式情報をメインの参照元としながらも、情報を補完したり、トレンドやリアルな声を取り入れたりするために、SNSでの話題も一部参照していることが読み取れます」(中川氏)
「SNS話題量は最多なのにAI推奨度は最下位」のカラクリ
AIのブランド認識にアプローチするためには、自社ブランドがAIやSNS上でどのように語られているかという「言及データ」と、AIが根拠としている「参照データ」に加え、自社サイトなどへの「流入」を注視すべきと中川氏。特に言及データと参照データを効果的に検証し、アクションへとつなげる必要があると語った。

ここで中川氏は、通信会社A社のマーケティングの課題を例として紹介した。その課題とは「SNSキャンペーンのCV数は維持できているが伸び悩んでいる」「Webサイト経由での流入・契約が年々減少してきている」「Webでサービスを検索した際、 AIの回答で自社ブランド名が1番に表示されない」の3つだ。
「この例では『新社会人におすすめの通信キャリアは?』という問いを立て、競合を含む3ブランドでAIの回答結果を分析・比較してみました。MCPを使ってMeltwaterのツールをClaudeとつなぎ、プロンプトを入れるだけでダッシュボードに分析結果が生成されます。その結果、A社はSNSでの話題量が最も多かったにも関わらず、AIの推奨では最下位の3位となりました。何が要因でそのギャップが生まれているのかがわかると、AIが認識する自社のブランドを変えていくことができます」(中川氏)
SNSキャンペーンのCV数は維持できているが伸び悩んでいるという課題については、SNS上でA社が評価されているポイントと、AIが評価する軸にズレがあることが要因だとわかった。SNSではセキュリティ対策やブランドのキャンペーンが話題となっていたが、AIは料金やサービス品質といったスペック情報に重きを置いていたのだ。
また、Webサイト経由での流入・契約が年々減少してきているという課題の要因は、AIの引用元ランキングから読み解ける。比較・アフィリエイト系サイトが上位を占め、A社の自社サイトは引用元ランキングで最下位となっていた。つまり、AIが優先的に参照する比較サイトに自社の情報がうまく載っていなかったことが、課題の要因だと言える。
Webでサービスを検索した際、AIの回答で自社ブランド名が最上位に表示されないという課題については、AIが最上位に推奨した競合B社のデータを紐解くと、要因が見えてくる。B社はSNSでの話題量が3社の中で最も少なかったものの、AIが参照している10媒体すべてで引用数が最多だった。SNSの話題量が多ければ必ずしもAIが推奨してくれるわけではないことが、この分析結果からも見て取れる。
最小限の工数で選ばれるためのブランド力を強化できる
AIに評価されない要因がわかれば、改善方法が見えてくる。A社の例では、SNSの話題量とは別に「スペックなどの定量的なデータが訴求できているか」というKPIを設け、施策を行った。それに加え、比較サイトやアフィリエイトサイトとの連携も強化。そこでも料金やデータ量といったスペックの発信に注力した。
このように、最終的にどの媒体で、どのような内容を強化し、何をKPIにするべきかといった具体的なアクションにまで落とし込むことができた。
「AI検索が主流となった今、自社のブランド力を強化し、競合と差別化を図ることはますます難しくなっています。今後は従来のニュース、SNS、メディアなどから得られる生活者のニーズに加え、『AI上での自社ブランドの可視性』を正しく計測・把握し、総合的に捉える姿勢が重要です。しかし、これらのデータを横断的に捉えようとすると、時間と労力がかかります。今回お見せした通信キャリアA社のレポートのように、皆さまがお使いのAIツールと当社で取得可能なデータを連携すれば、自社ブランドの可視性を横断的に捉えられ、最小限の工数と労力で選ばれるためのブランド力を強化できるのです」(中川氏)
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平田 順子(ヒラタ ジュンコ)
フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:Meltwater Japan株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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