自前のSNSでよりタイトなリレーションシップを築く
いかにソーシャルメディアを自社のマーケティングに取り込むかを知るには、まず自らが参加してみなければならない。否が応でも。そう、コトは現場で起こっているのだし、何事も量稽古が必要だから。そこで、アカウントを取って恐々腫れ物に触るように始めてみることになる。
するとこれからは、売込みよりも関係作りを優先し、イメージ作りよりも素顔をさらしながら、小さなことからコツコツと対応することが肝要と、どんなに勘の悪い人でもおぼろげながら判ってくる。できるかどうかは別にして。
しかし、そのうち他人の提供するソーシャルメディアの中でつながることに居心地の悪さを感じ始める。なにかしら、他人の家のリビングで自分の誕生パーティを、それも毎日開いているような感覚に陥ると言ったらお判りだろうか。汎用なSNSの中にいれば他のコミュニティとの連携を期待できるのは大きなメリットだが、期待だけで終わることもあり得る。
そもそも、ここ日本ではSNSの選択肢が存外少ない。おまけに、商用目的での利用はきつく戒められている(ただし、冒頭に書いたコミュニティもその対象なので、実際のところは有名無実化しているのか、それとも担当者が居眠りしていただけなのかは私には判らない)。要するにお仕着せでは何かと勝手が悪いのだ。
できれば独自に管理運営できる環境がほしい。大丈夫、そう思うのは何もあなたが最初ではない。私だってそう思う。コミュニティ内の動向を観察しながら、時に自分の商品やサービスについて意見を聞いたり、時にプロモートを働きかけたり、あるいは顧客サポートしながら、メンバーとのリレーションシップをより良好に維持していくことができれば、メンバー自身のクチコミによって、ほとんどコストをかけずに新しい顧客層にリーチすることも夢ではない。そうと聞いて膝を乗り出さない方がどうかしている。
そこで早速調べてみると自前のSNSを運営するためのサービスは、有難いことに日本でも既にいくつかある。しかし、海外サービスを紹介するのが務めの私としては、国産サービスを凌ぐ出来のここを紹介しておきたい。
もともと、2004年に設立されたカリフォルニアはパロアルトにある会社のサービスだが、一部を除いてちゃんと日本語に対応している。既に、世界中で3300万人がアカウント登録し150万以上ものSNSがこのNingで運営されているというから驚く。たとえば、これらがそう。
我々の慣れ親しんでいるSNSとは随分趣きが違うが、むしろそのせいで他のSNSサービスときっちり線引きできるのがビジネスユースには好都合に思える。
ちなみに、見た目に関しては50もあるテンプレートを入れ替え差し替えする以外にもCSSを使ってかなり自由にデザインに手を加えられる。ただし、このサービスの真骨頂はそのソーシャル機能の充実振りだ。いくつか挙げてみよう。
マイページを作ってプロフィールを掲載したり、

その場で写真(スライドショーにしてくれる)や ビデオ(エンベッドコードを発行してくれる)や音楽ファイルをアップロードしたり、

ブログを書いたり、ディスカッションを呼びかけたり、

テーマを決めてグループを組織したり、そのイベントを告知したり、

おまけに他のユーザーとチャットしたりできる。当たり前だが、RSSもフィードしているしメールで各メンバーに連絡することもできる。
管理者ツールもよくできている。SNS内でのメンバーの行動を示す「最新アクティビティ」などトップページに掲載するコンテンツは、管理者が自由に選択し、かつドラッグ&ドロップで配置できる。むろん、非表示にしても構わない。

まだメンバーになっていないネットユーザーには、たとえばトップページだけ公開するとか、まったく1ページも公開しないとか、あるいは何処も彼処も自由に徘徊してくださいとフルオープンにも設定できる。
と、ここまで書けばそろそろお気づきだと思うが、デザインをカスタマイズする以外はHTMLなどの知識はほとんど(どころか、まったく)必要ない。そう、まさしくブログ感覚で何もかもこなせてしまう。
新規メンバーがアカウントを登録しようとするときに、あらかじめ任意の設問を設定できる点は特に注目したい。

ここで書き込んだ内容は後から編集することは可能だし、自動的にプロフィールに反映されるが、管理者と本人だけが閲覧できるようにも設定できる。それに参加を承認制にしておいて、管理者サイドがこの人はちょっと肌が合わないなと思ったら、この段階でお引き取り願うことも可能なわけだ。もちろん、それがこの機能の主たる目的ではないにしても。
さて、Ningの魅力はそればかりではない。Ningではサードパーティが開発したさまざまなアプリケーションが盛りだくさんに用意されている。今この原稿を書いている時点で238もあるというこれらのアプリは、メンバー自身がマイページで自由に選択し設定できるようになっている。

例えば、UstreamやTokboxやBlogTaklRadio、(以前にも書いた)ShopitやCartflyの他、HuluやBox.net、Zoho、さらにはGoogleDocsにまで対応していて、まったく選ぶのに目移りする。このことひとつをとってもNingの至れり尽くせり振りがよく判る。
ただし、どこにも書いていなかったので気になって問い合わせたら、残念ながらデータのバックアップ機能は未実装でいずれ開発するとだけ返事が来た。だから、どこか他のサービスへ移動するというときには少々面倒なことになるかもしれない。その点を除けば、NingにはSNSを自ら管理運営するのに必要と思われる機能はほぼ完備してると言ってイイと思う。
ちなみに、Ningでは10GBまで無料で利用できるが、GoogleのAdSense広告が表示される。ただし、月に$19.95支払えば広告は表示されない。さらに10GB追加するごとに月に$9.95支払えばストレージ容量は拡張できる。独自ドメインを利用する場合は月に$4.95加算される。自分でサーバをレンタルしていちから構築する事を思えば大変リーズナブルだと思うがいかがなものだろうか。