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“相似形”で考えよう!マーケティング脳を鍛える10のレッスン

ポジショニングが最強のマーケティングをつくる - レッスン3 ~絶好のポジショニングの生かし方~


あなたの商品のライバルを想定しよう

 上手いポジショニングとは、攻撃にも守備にもいち早く転じることのできる、適切で絶妙な距離感・位置関係の取り方だと言うことができます。前回、インターネットのブーケ屋さんの話をいたしました。その例を再び用いましょう。彼らの「バトル・ルール」は以下の通りでした。

  1. インターネット経由で、ブーケのカスタム・オーダーの受注
  2. 全て注文があってからブーケを手作り
  3. 大手フラワーショップの同等品より20%安い
  4. 注文から24時間以内に配送
  5. お届け先は、東京・神奈川限定

 このお店のポジショニングについて考える前に、復習を兼ねて「バトル・フィールド」について考えてみましょう。もちろん、ブーケを売ること自体には違いはありません。しかし「何の代わりに、このお店からブーケを買うのか」という質問によって、消費者の「サイフ」に目線を移して考えることで、「こだわったお祝いを、手軽に知人に贈ること」と規定してみましょう。

 すると、想定される競合とは、実店舗を持つ花屋のみならず、お祝いの電報、ネットの酒屋さんなどまでに、その全体集合を拡大して考えられます。バトル・ルールでは思い切って絞り込んでいるのに対して、バトル・フィールドでは創造的かつ攻撃的に考えていることで、そのポジショニングは切れ味鋭くなります。それは競合から見たときに、以下のような点で、このブーケ屋さんが攻撃的にビジネスを仕掛けていると考えられ、それが脅威に映るからです。

  • (電話注文ではなく)ネット注文できる
  • (既製品ではなく)カスタム・オーダーのブーケのみを扱う
  • (在庫を持たずに)注文を受けてからの、受注生産
  • (ブーケ同士で比べても)価格は大手より、20%安い
  • 無店舗
  • 24時間以内配送
  • 東京・神奈川限定

 これらの攻撃的要素が、いわゆる「差別化点(Point of Difference)」です。これはいわば「競合に対してどのような違いを打ち出すか」ということであり、レッスン2のバトル・ルールで紹介した必殺技に他なりません。しかし、どれもこれもが必殺技というのは、信憑性がありません。実ビジネスでは、選び抜かれた真の必殺技を磨き上げ、企業固有の差別化点としなくてはならないことを、付け加えておきます。

守備から鍛えるのが勝負の極意

 一方で、競合から見た場合に、このブーケ屋さんがなかなか侮れないビジネスをしていると思われるのは、どのような点でしょうか? 競合から見ると、案外堅い守備をしていると感じることのできるのは、どのような点でしょうか? ちょっと発想を柔らかくして考えてみましょう。

  • ブーケ品揃えは大手と同等
  • ネット注文を装備している
  • 注文から配送までの迅速な対応

 これらの守備的要素のことを、「同化点(Point of Parity)」と呼びます。この言葉にはあまり馴染みがないかもしれませんが、同化点とは、「相手の繰り出す技を無力にする、柔道の受身のような“技”」と考えるのがわかりやすいかもしれません。文字通り捉えるならば、競合相手を自らと同化してしまうことによって、相手の技を風化させ無力化してしまうということです。

 しばしば、マーケティング戦略を論じられるときに、差別化点のみを大きく取り上げて語りがちですが、攻撃面だけで戦略を組み立てることはできません。もうお分かりのように、戦いは攻守のバランスが取れてこそ最大の力を発揮できます。ないがしろにされがちな同化点を今一度、守備的観点から見直すことは、戦略の非常に大切なバランスを考えることに他なりません。

【レッスン3-1】
上の例を参考にしながら、自社の商品・サービスにとっての差別化点と同化点の候補となる事柄を、さまざまな視点から書き出してみましょう。(もちろん、真の必殺技づくりは、その後の作業ですので、ここではあくまでも候補探しです。)

次のページ
隣に置かれるライバル商品をイメージ

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この記事の著者

東急エージェンシー 神通 靖彦(ジンヅウヤスヒコ)

理系出身のマーケティング・プランナーを目指し、総合広告会社(株)東急エージェンシー入社。マーケティング局、デジタルマーケティング局などを経て、現在、ナレッジセンター所属。
広告主と一緒にマーケティング、戦略、ブランド議論などを効果的に行う新しいカタチを開発・提供中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/03/13 17:54 https://markezine.jp/article/detail/865

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