あなたの商品のライバルを想定しよう
上手いポジショニングとは、攻撃にも守備にもいち早く転じることのできる、適切で絶妙な距離感・位置関係の取り方だと言うことができます。前回、インターネットのブーケ屋さんの話をいたしました。その例を再び用いましょう。彼らの「バトル・ルール」は以下の通りでした。
- インターネット経由で、ブーケのカスタム・オーダーの受注
- 全て注文があってからブーケを手作り
- 大手フラワーショップの同等品より20%安い
- 注文から24時間以内に配送
- お届け先は、東京・神奈川限定
このお店のポジショニングについて考える前に、復習を兼ねて「バトル・フィールド」について考えてみましょう。もちろん、ブーケを売ること自体には違いはありません。しかし「何の代わりに、このお店からブーケを買うのか」という質問によって、消費者の「サイフ」に目線を移して考えることで、「こだわったお祝いを、手軽に知人に贈ること」と規定してみましょう。
すると、想定される競合とは、実店舗を持つ花屋のみならず、お祝いの電報、ネットの酒屋さんなどまでに、その全体集合を拡大して考えられます。バトル・ルールでは思い切って絞り込んでいるのに対して、バトル・フィールドでは創造的かつ攻撃的に考えていることで、そのポジショニングは切れ味鋭くなります。それは競合から見たときに、以下のような点で、このブーケ屋さんが攻撃的にビジネスを仕掛けていると考えられ、それが脅威に映るからです。
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これらの攻撃的要素が、いわゆる「差別化点(Point of Difference)」です。これはいわば「競合に対してどのような違いを打ち出すか」ということであり、レッスン2のバトル・ルールで紹介した必殺技に他なりません。しかし、どれもこれもが必殺技というのは、信憑性がありません。実ビジネスでは、選び抜かれた真の必殺技を磨き上げ、企業固有の差別化点としなくてはならないことを、付け加えておきます。
守備から鍛えるのが勝負の極意
一方で、競合から見た場合に、このブーケ屋さんがなかなか侮れないビジネスをしていると思われるのは、どのような点でしょうか? 競合から見ると、案外堅い守備をしていると感じることのできるのは、どのような点でしょうか? ちょっと発想を柔らかくして考えてみましょう。
- ブーケ品揃えは大手と同等
- ネット注文を装備している
- 注文から配送までの迅速な対応
これらの守備的要素のことを、「同化点(Point of Parity)」と呼びます。この言葉にはあまり馴染みがないかもしれませんが、同化点とは、「相手の繰り出す技を無力にする、柔道の受身のような“技”」と考えるのがわかりやすいかもしれません。文字通り捉えるならば、競合相手を自らと同化してしまうことによって、相手の技を風化させ無力化してしまうということです。
しばしば、マーケティング戦略を論じられるときに、差別化点のみを大きく取り上げて語りがちですが、攻撃面だけで戦略を組み立てることはできません。もうお分かりのように、戦いは攻守のバランスが取れてこそ最大の力を発揮できます。ないがしろにされがちな同化点を今一度、守備的観点から見直すことは、戦略の非常に大切なバランスを考えることに他なりません。


