当たり前のことをするためのファーストステップ
ソフトバンクモバイルは、動画以外にもさまざまなコンテンツを2009年は展開してきた。ミュゥモと提携した音楽サービス「かんたんミュージックGOLD」は月額情報料210円で、自動的に毎月ポイントが付与され、そのポイントを利用して着うたフルをダウンロードすることができる。また、情報を分かりやすく提供するためのナビゲーションにもこだわっている。
「うちの母親は70歳を越えていて、最近やっと着うたフルを覚えて演歌を聴いていますが、やはり目的の曲に辿り着けないんです。辿り着けないのには、UIの問題と『お金が取られるのが怖い』という2つの理由しかありません」(蓮実氏)
デジタルコンテンツだけでなく、リアルビジネスとの連携も進められている。2009年11月からは飲食、レジャー、ショッピングなどの各種割引クーポンを配信する「とくするクーポン」の提供を開始した。通常クーポンを利用する場合、はじめに行きたい店があり、そこからクーポンを探す。だがその場合、目的意識の高いユーザーしか利用しない。この点を危惧し、「とくするクーポン」では曜日/時間帯別に、それぞれのシーンに適したクーポンを配信する。蓮見氏は、この試みを「サイトやメール、または店頭で、『朝昼夜それぞれの時間帯に最適なクーポンを提示することで来店につながる』という、当たり前のようで今までできていなかったサービスをするためのファーストステップ」と説明する。
ケータイWi-Fiによりもたらされる新体験
冬春の新端末と同時に発表された『ケータイWi-Fi』。最大54Mbpsの高速通信により、携帯で大容量のビデオ、PCサイトなどが利用できるサービスだ。高速通信を活かし、携帯電話で映画本編の試写会なども行うことが可能だ。携帯電話向けにこうしたプロモーションを実施することで、クチコミの波及や感想などのデータ収集を行うこともできる。映像コンテンツ以外にも、電子書籍として雑誌の販売なども行っていく予定だ。iPhoneから新聞一紙を丸ごと読めることで注目を集めた、産経新聞のアプリも利用することができる。
「Wi-Fiでいちばん気持ちがいいのはスピードです。我々の調査では、普通の人には何が早くて何が遅いのかまだ理解されていない方が多いことがわかった。Wi-Fiでサクサク通信できることを体感してもらいたい」(蓮実氏)
モバイルにしかできない動画表現が今後の鍵に
「テレビはその昔、映画で育った世代から『こんな小さい画面でいったい何を見るんだ』と大笑いされていた。その後、テレビ業界は映画ではできないニュースや、連続ドラマやスポーツ中継などがヒットさせ、大衆娯楽の中心として君臨した。同じような現象がテレビと携帯電話の間にも起きつつある」と蓮実氏は予測する。自身も、2年前は携帯で動画を見る習慣がなかったという。
最後に蓮実氏は、「テレビが当初映画に憧れていたように、携帯はテレビに憧れている。だからこそ、ニュース動画などに重きを置いていると思う。しかし、間違いなく携帯にしかできないことが出てくる。コミュニケーションツールやオークション、教育コンテンツにあわせて動画を見る、あるいは利用者が発信できるツールとしての携帯電話と動画がどう結びつくのか。答えはまだ出ていません。しかし、今後は間違いなく動画の世界で携帯電話が爆発してくると思います。そのための準備を進めていますが、個人的にはコミュニケーションと動画をいかに組み合わせるかが、非常に大きなポイントになってくると思っています」と今後の可能性を語り、講演を終えた。
