可能な範囲で自主的に取り組み、実績を上げるのが理解への近道
江端氏によると、企業がモバイルサイトに取り組む上で大きな障害となる要素は2つあるという。1つは、新たにモバイルサイトへ投資するとなるとコストがかかるので、それを正当化する必要があるということ。もう1つは、企業のWebサイトを扱う広告代理店が、モバイルサイトを展開することで収益的メリットを得る仕組みが少なく、提案自体がなされていないということだ。
では、まだ実績が少ない時期に、江端氏はどのようにしてそれらの障害をクリアしながらモバイルサイトを展開していったのだろうか。最初の問題については、既にPCのWebサイト向けに割り当てられている予算の中から、事業を見直しつつ捻出できる分をモバイルサイトに割り当て、トータルコストを上げないようにしたという。次の問題については、広告代理店からの提案を待つのではなく、自らモバイルサイトの企画提案をすることで、積極展開を進めたのだそうだ。
当初は、社内でもやはりモバイルサイトへの取り組みに対して懐疑的な声があったそうだ。だがモバイルサイトでの実績を上げていくことで、その有用性を証明していったという。例えば2007年、コカ・コーラが世界的に若者向けのマーケティングを強化した際、日本ではモバイルサイトへの取り組みによって効率的なリーチを得たことで、社内での理解が得られるようになったという。
ちなみに、江端氏が所属するインターラクティブ・マーケティング部には現在6人が所属しており、それぞれコカ・コーラ パーク全体や、各飲料ブランドにおけるウェブサイトやインターネットネットを活用したキャンペーンのプロジェクトのマネジメントなどを担当しているという。実質的な作業を外部に発注することで、なるべく小人数でコントロールする方針をとっているとのことだ。
モバイルを有効活用する上での課題は?
モバイルサイトを有効活用し、的確なプロモーションへと結びつけている同社だが、モバイルをより有効活用する上での課題はあるだろうか。江端氏はそうした課題の1つとして、テレビとの連携を挙げている。
テレビCMのフォーマットは15秒が中心と時間的に短く、現在のシステムではWebサイトのように、状況に応じて後から修正を加えるということも難しい。またテレビCMは投資するコストが高いことから、商品情報やメッセージを伝えるという幅広いアプローチに活用することが中心となり、Webサイトの誘導だけに用いるのは難しいとも話している。
また、店頭の商品との連携も今後の課題であるという。無論、ペットボトルの蓋などにURLを記載したり、キャンペーン時にシールなどでWebサイトに誘導したりするなど、一部商品で連動をはかっているケースはある。だがパッケージにはバーコードをはじめ掲載しなければならない情報が多い上、そもそもパッケージデザインの目的は、店頭で商品を手にとってもらうことにある。デザイン全体に与える影響を考慮すると、QRコードなどを掲載すること自体難しいケースも多いのだそうだ。
この様に、モバイルを活用したマーケティングにおいて先進的な取り組みをしていると言われている日本コカ・コーラの場合においても、まだまだ課題として挙げられる部分があるなど、モバイルサイトの活用は、まだまだ発展途上の段階である。
しかしながら、これだけモバイルが普及した今、モバイルについてまったく何も手を打たない企業と、トライ&エラーを繰り返しながらも取り組みを始めている企業とでは、今後大きな差がでてくるのではなかろうか。