1997年SEOサービスを開始、2002年に会社設立(株式会社イー・プロモート)後、2003年に退社。2005年4月より株式会社アイレップにてサーチエンジンマーケティング総合研究所所長を務める。主な著書に『検索にガンガンヒットするホームページの作り方―SEO(検索エンジン最適化)テクニックで効果的にPRしよう』『検索にガンガンヒットさせるSEOの教科書』(ともに、翔泳社刊)など。CNET Japan「渡辺隆広のサーチエンジン情報館」(2005年~)他、多数連載記事を担当し、人気を博す。
欧米のリスティング広告への投資状況
── ROI(費用対効果)に対する評価が厳しくなる中、欧米企業のリスティング広告への投資状況はどのような状況になっているのでしょうか。
いまだ米国企業のリスティング広告への投資は縮小されていますが限られた予算の中でも、これまでどおりの成果を出すために広告主や代理店は必死で施策の改善を行っています。そのため、広告費は縮小しても、前年同期とほぼ同水準のROIを維持しています。
── 日本と違い欧米企業の場合、自社でリスティング広告の運用を行うことが主流になっていると聞きます。その状況はさらに進んでいるのでしょうか。また、日米の違いはなぜ起こったのでしょうか。
確かに、欧米では大手を中心に自社内で運用を行う企業が増加してきています。これは
- 企業側がSEM(サーチエンジンマーケティング)の重要性を認識しはじめたこと
- 自社内で他のマーケティング施策と統合して管理したいという要望の高まり
- 自動入札ツールの発達
- SEMのリテラシーを持つマーケティング担当者の増加
などが重なり、一般化してきました。
日米の差異が大きく開いていったのは、企業側のSEMに対する重要性の認識の度合いとリスティング広告の運用プロセスの煩雑さにあると考えられます。
日本語と英語では扱う文字数が圧倒的に異なりますが、加えて広告掲載規定や薬事法などの専門的な知識も必要とします。また、一般的に言えるのは、文化的に日本の方が緻密な運用を行う(求められる)という点も挙げられます。
このような状況の中で、日本企業が社内で最初から運用体制を構築してリスティング広告に対応していくということは非常に困難です。そのため、この分野に特化した代理店と共に取り組むというケースが多くなっています。
── 自社で運用を行う場合、Google AdWords、Yahoo! JAPAN リスティング広告 といった、リスティングサービスを一括で管理する必要性がでてくるため、自動入札ツールを利用することで効率化を図るかと思います。Efficient Frontier(エフィシェントフロンティア)、SearchIgnite(サーチイグナイト)などいくつかの選択肢があると思いますが、ツールのシェアはどのようになっているのでしょうか。
欧米では各ベンダーが自社のツールのシェアを公開していません。
また、欧米のマーケットを見ると、クライアントやエージェンシーを選択する際はシェアで判断していません。なぜなら、クライアントの課題やビジネスモデル、予算規模によってそれぞれ異なっているとともに各ベンダーがそれぞれのクライアントへフォーカスしたさまざまなツールが提供しているためです。
大規模向けや小規模向け、EC企業へ最適な商品在庫連動入札機能を搭載したものやオンラインマーケティングチャネル全体の最適化を目的としたものなどさまざまなツールの棲み分けがされておりクライアントは自社に適したものを選択しています。
具体的には、大規模向けはEfficient Frontier、Marin Software(マリンソフトウェア)、KENSHOO SEARCH(ケンショーサーチ)、Omniture SearchCenter(オムニチュアサーチセンター)中小規模はYeild Software(イールドソフトウェア)やWord Stream(ワールドストリーム)などが挙げられます。