2009年、広告業界でほぼ唯一成長したモバイル
広告業界にとって、とにかく厳しい1年だった2009年。逆風の中、それでもモバイル広告は堅調だった。ディーツーコミュニケーションズ(D2C)代表取締役社長の藤田明久氏は「D2Cの売上高実績で、前年度比40%前後の伸び。広告業界の中でモバイルがほぼ唯一伸びたことになるのでは」と胸を張る。
好調だった要因については、「選択と集中が進んだため」と分析。全体の広告予算は削減された一方、モバイル広告の効果が認められ、無闇にマス広告向けで使われていた予算がモバイルにも適切に割り当てられるようになったと見る。
具体的には、いち早くモバイル広告へ出稿し、成功した企業に続こうと、様子見だった企業の中からも新たに出稿を始めるところが増えてきたこと、大学などの教育機関や地場の流通・小売企業がチラシからモバイルのローカル広告に予算をシフトさせ始めたことなどが貢献したという。
2009年のモバイル広告トレンド
2009年にモバイル広告の出稿量が増えた業種の傾向としては、まずコンテンツプロバイダーが挙げられる。これはプラットフォーム戦略等のサービス多角化に伴い、新サービス告知を目的に出稿予算自体が増えたためだという。
また、清涼飲料水を筆頭に化粧品・トイレタリーなどの日用品を扱うナショナルクライアントからの広告出稿量も伸び、ECサイト、映画などの広告も盛んだったそうだ。さらに、放送局や出版社などメディアからの出稿も増えている。
「2年くらい前から“逆クロスメディア”という現象が起きています。マスで告知してネットで詳細情報を調べてもらうのではなくて、まずネットで認知してもらってからマスで深い情報に接触する。2007年ごろから始まり、2009年に定着した動きですね」
広告プランのトレンドとしては、mixi、モバゲータウン、GREEの3大SNSへのピクチャー広告、iモードではiMenuトップの広告やメッセージF(フリー)の伸びが顕著。例えばプリングルズは、モバゲータウン上で広告とゲームを組み合わせたアドバゲームを使ったプロモーションを展開。テレビCMを上回る商品認知を得られ、約4人に1人が口コミを広めてくれるなどの成果を残した(参考:モバイルSNSタイアップキャンペーン広告効果検証調査)。一方、検索連動広告は主な利用客だった求人情報や金融系の企業からの広告費が著しく落ち込んだため、市場としては大きな成長には至っていないようだ。
広告での訴求内容を見てみると、サービスの加入や資料請求といった、モバイルの中で行動が完結するが完結する形の、見た人の「指を動かす」というタイプの広告だけではなく、「見た人を動かす」ことを狙うタイプの広告が増えている。地元小売店の特売情報などで来店を促す広告、サイトアクセスよりも電話による問い合わせにつなげるような旅行会社の広告など、実際のアクションにつなげようとするものだ。モバイルの「いつでも持ち歩いている」という特性を使った好例だと藤田氏は説明した。