Case Study:「JAL」と「ANA」 ~ なぜバズボリューム分析だけでは不十分か?
これは定量的に調査を行ったわけではないが、筆者が思うに、一般的に企業が口コミ分析を行う際、その主な目的は「バズボリュームのトレンドを見て話題性(主に広告効果測定としての意味)を図る」という場合が多いのではないだろうか。
しかしながら、バズボリュームは多ければ多いほどいいというわけではなく、センチメントの観点から見て、それが企業にとってポジティブな意味を持つものなのか、ネガティブな意味を持つものなのかを分析することが必要不可欠である。
今回、例としてJALとANAのバズボリューム、およびセンチメントをトレンドで比較してみた(図表9、10)。
バズボリュームでは、2009年8月まで両者ともに均衡していた。しかし、2009年9月からJALの経営に関するさまざまなスキャンダルにより、バズボリュームが急増している。また、センチメントスコアを見ると、JALは9月以降、マイナス方向に振れている。センチメントスコアは、口コミに占めるポジティブな割合からネガティブな割合を引いたものである。従って、口コミにおけるレピュテーションがネガティブ優勢になっている状況と言える。
なお、同時期にANAのセンチメントスコアがポジティブ方向に振れており、競合がトラブルにあるなかANAの方に期待が集まっているという、ある意味、漁夫の利的な力が働いているのが興味深い。
12月にはJALに対するバズボリュームは減少し、センチメントスコアもほぼ0(ニュートラルポイント)にまで改善しているため、口コミがいったん沈静化したことが読み取れる。
筆者がこの原稿を書いている直前(2010年1月下旬~2月上旬)に、JALの経営破綻が確定し、口コミは再度ヒートアップしている。
ここで、バズボリュームとセンチメントの関係性についてまとめてみよう(図表11)。
JALのケースでは、図表11の「C」のポジションに位置している。このように、センチメントスコアがネガティブ優勢の状態でバズボリュームが急増している状態は、スキャンダルや企業不祥事のような際には多く見受けられる。もし、通常時でこのような状態に陥っているようであれば、その企業はブランドレピュテーション上、大きな課題を抱えていると言え、短期的にはリスクマネジメントを、中長期的にはレピュテーション改善に対する取組みが必要であることを示唆している。


