自分の「好き」と相手の「好き」をつなげる
四家
繰り返しになっちゃうけどもともと人間の関心って分散してるもんでしょう。中学生の頃に読んだ
北杜夫のエッセイ本とか、一つ一つの話題に何の脈絡もないほんとに雑文の集まりで、「北杜夫」って人格だけでコンテクストになってる。
前田
四家
関心空間 を初めてみたのは
佐野元春さん のWebサイトでしたが あのころはまだ僕の中に 「佐野元春」というコンテクストが強かったので関心空間を見ても正直なんだかよく分からなかった。
前田
佐野さんはすごい理解者でした。中心が無のコミュニティをつくりたかったという僕のコンセプトに共感してくれたんです。
四家
はい、あの人はホントすごい先駆者だから。あと、これ言っちゃいますけど、
関心空間 が導入される前の佐野さんのWebサイトって、掲示板やってて、けっこう荒れちゃってたんですよね。
前田
そうなんです。それでも懲りずにまた始めるのがすごい。そして関心空間は5年間もってる(自慢)。
四家
つまり、ここがひとつのポイントだと思うんですが関心空間って荒れにくいじゃないですか。なんでなんでしょうね?
前田
なんというのかな、互助の精神がある人向けに設計されているというのがありますね。教えるのが好き、教えられるのも好き、人をつなげたがる。そういう性格の人向けなので、どうよ? とだけ、投げかける場所がないんですね。
四家
ああ、余計な突込みを要求しない。
前田
そう、自分が何かに対して持っている気持ちをストックして、つながりたい人とだけつながる。
四家
そもそも自分の好きなものだけを自分の空間に並べて、自分の「好き」と相手の「好き」をつなげるわけですから。
前田
そうですね。ゆるーいコミュニケーションですね(笑)。
夜中にふらっと入れるBar = 関心空間
四家
ちょっとわかってきたんですけど。音楽でもグルーブのあり方はいろいろあるじゃないですか。リズムだけでもいろんな種類があって。
関心空間は、前田さんの好きなリズムというか、スタイルというか、そういうグルーブなのかなと。
前田
そう言われると確かにミニマルミュージックのような?
四家
片やもっと過激な
2ちゃんねるみたいなものがあって、無名性と集積度によってとんでもないグルーブも、いっぽうでマターリもあったりしてて。あとブログもSNSもまたグルーブ感が違いますよね。
前田
そうですね。ブログって自己表現であり自己発信なので、たとえ匿名であっても肩書きを背負って会話している雰囲気あるような気がします。関心空間って、気の合う仲間とカフェで、仕事の話しやら趣味のことを断片的な会話をしながら時間を過ごしている空間というのかな。他人のおしゃべりが少し聞こえるぐらいの良さがあるかなと。
四家
うん、そうですよね。そう考えると、きのうは居酒屋、今日はカフェと、気分によって店を変えるように、いろんなコミュニティシステムでを使い分けるユーザがいてもおかしくないですね。異なるグループ間、参加者の距離感をいろいろ楽しむ。
前田
そういえば、あるユーザさんは夜中にふらっと一人で入れるバーと表現していましたね。 しゃべりたかったら会話の相手もしてくれるマスターがいて、話しかけないでくれ光線を出していたらわざわざ話しかけない。
四家
いい感じですね。そのたとえは。ただ、同時にそれは、ユーザが爆発的には伸びないということも表していたりして(笑)。
前田
おお、痛いところなんですが。