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四家正紀のネオコミュニケーション遊談

CGM時代のパイオニア「関心空間」誕生秘話(後編)


月間では160万ユーザが来訪!

四家
一方、独自に運営されてた関心.com)は無料サービスというか、実験プロジェクトというか、そんな感じでしたよね。グッドデザイン賞をもらったりして賞賛はされていたけど収入にはなっていなかったというか。
前田
そうですね。でもGoogleも検索ユーザからはお金を取っていなかったし、収益は最終的に広告システムが稼いでいる。
四家
まあ、ネット媒体はほとんどそうですね。
前田
ただ、あの頃と違うのは、リアルな商材や広告のロングテールを紡ぐことのできる時代になったということでしょう。
四家
広告媒体として関心.comが機能するようになった。関心.comってキーワードを登録できる参加ユーザの伸びより、来訪するユニークユーザの伸びのほうが速いでしょ。
前田
そうですね。登録ユーザは3万人なのに月間の来訪ユーザは160万人います。
四家
ね。やっぱりそうですよね。
前田
最初は互助の仕組みとしてつくったのに、今は閲覧者が多いためにビジネス機会が増えた。
四家
そうそう、そうですよね。広告を前提としたメディアビジネスモデルになった。
前田
でも読む人が多いほうが、書いている人も嬉しい。特定の興味関心に合わせて、自分たちの商品やサービスを知らせらればそれが一番良いし、それってもう広告と呼ばないかもしれないですが、CGMのビジネスは基本それなのかなと思ってます。興味関心が合う人に(広告を含めた情報の)つながりを与える。
四家
でもそれって、前田さんが探して見つけたことですよね。
前田
うーん、私が見つけたというより、ふだん皆がリアルな世界でやっていることで、ネットにないものをつくっただけなんですが。
四家
いや、ネットの中の新しいものってそんなのばっかりでしょ。関心空間の基本的なシステムは5年前と全く変わっていないので、ネットユーザが増えてロングテールの意味が出てきて。時代が関心空間に追いついたんだなあと。
前田
ありがとうございます。もちろん進化しないといけないとは思うのですが、人間の基本的な行為や文化に根ざしたサービスでありたいので誰もやっていないことをやって驚かそうとかそういうことではないです。
前田
今後実現したいのは、この情報を書いたユーザが、もしくはこの情報を好んで見ている閲覧ユーザなら絶対この情報を気に入るに違いない、私が思った時に適切なつながりをつけれるようにしたい。ちょっとまどろっこしい言い方になってますが。
四家
ああ、個人対個人のレコメンデーション。
前田
ええ、そこにビジネスユーザも交えても居心地が良い空間にしたい。そもそも相手が望む情報なら商行為も商行為ではない、広告も広告でない。
四家
でもそういう空間を実現させるために企業がスポンサーになってもいいわけで。
前田
そうですね。あんまり商品やサービスの質に自信がなかったら、いっそ他人のやっている良いことを支援する会社だって宣言するのもありだと思います。今はCSRっていうのかな。
四家
これももともと関心空間では近い事例がありますよね。ecoで。別に商品に自信がないからやることではないけど(笑)。
前田
そうですね。贖罪の意味でやっている訳でもない(笑)。

BRAND2.0的なプロモーション手法

前田
最近の発見なんですが、普通マーケティングって、短いキャッチフレーズに商品コンセプトを集約させて、それをマス広告使ってマスの脳裏に刷り込ませるというのが普通ですが。
四家
そうですね。
前田
関心空間でやっているCGMプロモーションの手法は、ひとつの商品やブランドに複数の商品コンセプトを持たせても成り立つ構造なんです。
四家
おお。これは面白いですね。
前田
たとえば、KENZOパルファムという男性用の化粧品をプロモーションした際には 遊び心のある男性をターゲットに設定していたので「BOY'S DAY SPECIAL」と銘打って、「少年の心をもった大人の男性」というキャッチフレーズが用意されていました。しかしながら、関心空間では3つのテーマでユーザからキーワードの投稿を行ったため、「少年」というテーマもあれば、パッケージデザインの象徴であった「青空」というテーマ、それに香水のイメージであった「紙飛行」や「風」というテーマのそれぞれでユーザにつながることができました。
四家
ある意味で、もともと商品は多様な意味を持っているのに、情報を伝えやすくするために、ひとつの言葉に絞っていた。これを、消費者の多様性の中に解放したような感じですね。
前田
結局、新商品というのは名前が知られていないので、なんらか知ってもらうためのキーワードが必要なんですが、メーカが想起するものとユーザが想起するものには必ずズレがあるはずです、そこでマーケティングをしながら、キーワードを変える手法があることに気が付いた訳です。
四家
ある意味で、ブランド生成にユーザが参加する 正確に言うと参加していることを可視化する、しかも、それをひとつに絞るのではなくて多様をもってよしとする。
前田
そうですね。BRAND2.0かもしれませんね。顧客に共同の幻想を持たせるのがマス広告だとすると、消費者に分散化したブランドイメージを持たせてロングテールを編むのが、CGMのマーケティング手法だと。もちろんそのコストをどう抑えるのか、そこに技術が必要ですが。
四家
ただ「テレビCM崩壊」の時代ですから。コスト的に見合ってくる可能性も大きいんじゃないかと。
前田
というか、テレビそのものがロングテールで変化する可能性もあります。YouTubeみたいなTVかな。
四家
それ楽しいですよね。読者投稿型のテレビ番組という意味では、今までもなくはないんですが、まあ尺という概念がある以上、しょうがないけど編集システムが古いのと、あと、CMではなくてコンテンツそのものにマーケティングを絡めるという発想は、多分まだないですよね。KENZOの事例も「関心空間-テレビ」のタイアップに仕立てたら、また面白い。というか、密かにそんな話は進んでるのかも。
前田
そうですね。必要なのは技術というより、それを支え、支援したくなる収益モデルがないのが問題なのかなと。
四家
でも見えてきたんじゃないですか?そのへん。もう少し企画を詰めて売りに行くかな(笑)。
前田
そうですね。Googleとかは視野に入っているでしょうね。テレビ版のAdSenseとかね。
(注1)
企業名やサービスブランド名としての関心空間と区別するために、コミュニティサイト www.kanshin.com のことをこう呼ぶ
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同心円のモデルをつくる

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この記事の著者

四家 正紀(シケ マサノリ)

株式会社カレン次世代ビジネスリサーチ室長。インターネット広告の草創期からWebマーケティングに携わり、現在はカレンにて次世代販促コミュニケーションについての研究活動と、ブログマーケティング・ブロガーリレーションズ案件のプロデューサーとして活躍。寄稿、講演多数。 ブログ カレン次世代ビジネスリサーチ室ブログ

著書

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/09/04 14:26 https://markezine.jp/article/detail/99

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