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四家正紀のネオコミュニケーション遊談

CGM時代のパイオニア「関心空間」誕生秘話(後編)


 このコラムでは、「オンラインマーケティング」にまつわるテーマでIT業界のキープレイヤーの方々とチャットを利用した対談をしていきます。今、インターネット業界の中では、「ユーザ」重視のサービスが次々と登場しています。このような状況になる以前から、「ユーザ」重視の姿勢でサービスを展開してたサイトが、関心空間です。今回は、その関心空間を立ち上げた前田邦宏氏との遊談、後編をお届けします。(前編はこちら)

遊談相手
前田邦宏
前田邦宏(まえだくにひろ)
株式会社関心空間 代表取締役。1967年兵庫県宝塚生まれ。1990年より公共機関や企業向けデジタルコンテンツの企画制作ディレクションに従事。1998年ユニークアイディ設立(現:株式会社関心空間)。2001年口コミ情報コミュニティサイト「関心空間」を発表。同年に関心空間エンジンを利用したASP事業を、また2005年よりメディア事業を開始。
受賞歴: 2002年10月「関心空間」にてグッドデザイン賞新領域デザイン部門、入賞
2005年9月日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞受賞

関心空間のビジネスモデル

四家
で、徐々にビジネスの話に移りたいのですが、関心空間のビジネスは、関心空間が独自に運営するコミュニティ関心空間.comと、企業や団体にASPとして関心空間のシステムを提供する関心空間SP、主にこの2つですよね。僕もプロデューサーとして参加させてもらった味の素「らしさキッチン」など今では多数の企業が関心空間を利用しているわけですが、初めて採用したのは?

マヤヤのらしさキッチン
前田
最初の採用事例は佐野元春さんのMWSというオフィシャルサイトの中にある、カフェ・ボヘミアというファンコミュニティです。法人の事例としては、日経BP社さんのサイトや、小学館さん、あとLove-Italyさんによるイタリア関心空間がほぼ同時だったかな。2002年ですね。

カフェ・ボヘミア
イタリア関心空間
四家
3社のうち2社はメディア企業だったんですね。
前田
そうなんです。意外でした。メーカのように商品やサービスを中心とした顧客コミュニティが欲しいところがターゲットだと考えていたので…。
四家
その頃って企業のコミュニティ活用って凄く少ないですよね。
前田
2ちゃんねる全盛でしたし、危険だから掲示板はやるなって感じでしたね。
四家
ですよね。でもコミュニティに可能性があることもある程度見えていた人もいたので「荒れにくい・心地いい」関心空間は有利だと思ったんですけど。
前田
そうですね。ほとんど荒れにくいと、荒れないは企業にとって大きな違いなので、やはり躊躇する企業は多かったです。
四家
で、メディアが先に採用したと。
前田
はい、それも出版に近いところの方が理解者は多かったですね。やはり知識を編集して、コンテンツとして提供する会社だというのと、紙メディア以外の収益モデルを模索していたからではないかと。専門誌って、読者が取材先でもあるので、読者の方が詳しかったりしますよね。だったらいっそ読者に情報を提供してもらうということを想像する編集者は多かったんじゃないでしょうか。
四家
そういえば、僕もやりたかったんですよねえ。当時は僕も出版社でニュースサイトの広告担当をやっていたので、読者コミュニティを前提にしたビジネスを考えたんだけど、社内誰も相手にしてくれなかったですねぇ。むしろ紙媒体、それもIT系でない雑誌編集者のほうが、関心空間にはピンと来るものがあったんじゃないかな。
前田
あ、そんなことが。実は日経BP社さんとの間をつなげてくれた松岡裕典さんは、1970年代に橘川さんというロッキンオンのプロデューサーが立ち上げたPUMPという読者投稿だけの雑誌に携わっていて、これはいま考えるとリアルCGMなんですね。
四家
はいはい。たどっていくとビックリハウスとか、いろいろありますよね。もっとたどると僕の大好きな宮武外骨 の『滑稽新聞』もそうなんだけど、これなんか明治時代ですから。CGMの原型は雑誌にあったのかも。ただ、いまのCGMと違って、投稿者-編集者の関係は明確に分かれてたんですけどね。
前田
はいはい。大抵どれもゆるいですね(笑)ひとつひとつの情報にはあまり価値がなくて、編集によって価値が生まれる。

深夜ラジオはCGMの原型

四家
あ、思い出した。TBSラジオも初期からのクライアントですよね。ラジオ番組も投稿-編集型のメディアですね。
前田
深夜ラジオってCGMですよね。自分の出したハガキが読まれると、なんであんなに嬉しかったのかな?
四家
嬉しかったですね。たぶん、遠くにいる誰かと繋がる瞬間じゃないですかね。早くからネットコミュニティに参加している人って元ラジオリスナーが多いですよ。
前田
そうですね。TVとかラジオに名前とか顔が出ると必ず意外なところから見ましたよーって連絡が来る。それ、嬉しいですもんね。
四家
言われますねー。嬉しいですね。
四家
やっぱり、メディアに関わりたいんでしょうね。心の中のどっかで。ちなみに僕の場合は高校生の頃コサキンによくハガキを書いていました。一緒に投稿してたやつはそのまま放送作家になりました。
前田
ラジオのハガキって、編集された知識の単位のように思っていて。
四家
ハガキの大きさにパッケージされた知識。
前田
そうそう、CGMにもそういう単位が出てくるんじゃないかって思ってます。
四家
まあ、ブログのXMLもそんなもんですよね。
前田
そうですね。Web2.0ってやつなんですが。
四家
集合知のために単位をそろえる。もともとはハガキじゃんと。
前田
例えとしては、そうですが、まだWebには放送作家としてデビューさせる仕組みがないですよね。
四家
まあ、最近流行のブログ書籍化とか。
前田
それはそれでいいんですが、また既存メディアに戻ってますよね。
四家
それは、初期関心空間と一緒でいいものでもお金を取るシステムが難しいから。なのでメーカなどのマーケティング・プロモーション・ユーザサポートなどの活用より先に、情報そのものを売っている雑誌やラジオが関心空間をビジネスで利用したのかなと。
前田
確かに、あの時点ではコミュニティは「サービス」で、コンテンツでもメディアでもなかったです。
四家
リアルコンテンツの、サポートサービスですね。

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この記事の著者

四家 正紀(シケ マサノリ)

株式会社カレン次世代ビジネスリサーチ室長。インターネット広告の草創期からWebマーケティングに携わり、現在はカレンにて次世代販促コミュニケーションについての研究活動と、ブログマーケティング・ブロガーリレーションズ案件のプロデューサーとして活躍。寄稿、講演多数。 ブログ カレン次世代ビジネスリサーチ室ブログ

著書

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/09/04 14:26 https://markezine.jp/article/detail/99

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