Q. 事業開発の基となるアイデアやヒントはどのようすれば出てくるのでしょうか?
やり方は人それぞれだと思いますが、私の場合、人と話す中で世の中のニーズを拾い、それを事業として具現化する絵を描くだけです。
“事業として具現化する”というのは、サービスにある一定のクオリティを持たせ、それなりの規模のユーザーにサービスを提供し、そのサービスを継続させる、ということになるのですが、それを成功させる要素として、「サービスの実現性」と「マネタイズ」がポイントとなると考えています。
「サービスの実現性」は、物理的にそのサービスを作り上げることができるのか、ということです。いくら世の中にニーズがあったとしても、そのサービスを作り上げなければ、そのニーズを持つユーザーにサービスを提供することはできないので…。例えば、弊社は数十万件の求人情報を扱う求人情報サイトを運営していますが、「それをすべて営業開拓できるのか?」「できないのであれば、どのようにして実現するのか?」ということを考えます。サービスを作り上げられる自信がない限り、奇跡を待つしかサービスは実現する方法はないので、事前に方法論を深く考える必要があると思います。
Q. サービスの実現性を高めるための方法論とは、実際どのようなものでしょうか?
インターネットサービスの場合は、とてもシンプルだと思います。成功するサービスサイトの特徴は次の3つです。
- 情報量・質の高いコンテンツや機能がある
- ユーザー集客の手法がある
- お金を払ってもらえるクライアントが集められる
この3つの要素を混同することなく、1つ1つをどのように実現するかを具体的アクションプランに落とし込んで考えることができれば、実現性は高まると思います。
注意点は、“1)ができれば、2)は自然にできるだろう”と、自分の勝手な都合で楽観的に連動させて考えないようにすることでしょうか。
もう1つのポイントである「マネタイズ」は、サービスを作る上で、誰をお客さんに設定し、そのお客さんに何の価値を提供し、そのお客さんの開拓やサービスを運営するコストを上回る収益を継続的に上げられる商材を何にするのか、を考えるということです。先ほど申し上げたように、1)のような世の中に有意義なサービスを作ったとしても、3)のようにそれが収益に直結するかどうかは別の話にです。“良いサービス = 収益を上げられるサービス”ではありません。収益が上がらないサービスに継続性を見込むことは大変難しいため、事前にマネタイズを考えることは、非常に大切なことだと思います。
Q. 今後の目標を教えてください
ありきたりかもしれませんが、株式会社で事業を運営している以上、より多くの収益を上げ、利益を出し、事業の展開規模・領域を大きくすることが、最大の目標であり、責務だと考えています。
インターネット業界では、大体3~5年くらいのスパンでビジネスモデルが変わっていきます。仮に何らかのビジネスモデルが成功していたとしても、その継続性に対して疑問を持つことなく、新たなビジネスチャンスを模索し続けることを怠ると、事業規模をキープするどころか、たちどころにクライアントニーズから離れたサービスになるでしょう。その意味でも、当り前なことですが、常に収益と事業規模の拡大を追い求めることは最も大事なことだと思います。
ただ、これだけではユニークな事業を作ることはできないので、社内のメンバーが楽しみながら挑戦できるサービスを展開することが、第二の目標です。結局、作って育てるのは社内のメンバーなので、彼らが本心から「このサービスは、世の中に必要で有意義なサービスだ」という強い想いをもって事業に携われるようなサービスでないと、大成しないと思います。
インターネットサービス事業に携わる以上、No.1かOnly Oneにならないと生き残ることはできないと思いますし、それに挑戦できることが、他の業界にはない特徴であり魅力なので、この点を追及し続けていきたいと考えています。
インタビューを終えて
齊藤氏の言葉でとても印象的だったのが「自分の勝手な都合で、楽観的に連動させて考えないようにする」ということだ。
事業運営、特にそれがWebサービスの場合、他の業態と比較すると事後修正しやすいため、収益化に至るまでの集客方法、競合優位性などは綿密な設計の基に進めていくが、マネタイズに関しては意外とおざなりになりがちではなかろうか。ユニークさや奇抜さも事業にはもちろん大事ではある。しかし、それで収益化するのか否かという、当り前ではあるが事業運営上、最も考え抜かなければいけない点を齊藤氏は常に自社の事業で実践している。