タオバオを追随するライバル達 ~ 楽酷天はどこまで太刀打ちできるのか
中国でのECの8割以上を握っているタオバオ。圧倒的なナンバーワンは、このまま独走を続けるのだろうか。
前述のとおり、タオバオが立ち上がったころはeBay系列のイーチがライバルだったが、eBayは2006年に中国から撤退。中国の大手ポータルサイト「TOM 在線」と合弁会社をつくり、イーチの運営を任せることになった。

イーチに代わり、タオバオの追撃を始めたのは「拍拍(パイパイ)」。「QQ」という中国で普及しているインスタントメッセンジャーを提供する騰訊(テンセント)の系列サイトで、イーチを抜いて中国2番手に浮上している。QQは深夜早朝を除き、1億人前後がコンスタントに利用している中国で大人気のメッセンジャー。パイパイのシェアは、まだタオバオの10分の1にも満たないが、ECサイトに不可欠なメッセンジャーを差別化要因・集客装置とすることで急成長を遂げてきている。

日本からは楽天が中国検索エンジンの最大手「百度(バイドゥ)」と組んで、「楽酷天」を2010年後半から開始する(参考記事:楽天、中国向けのサービス名称を「楽酷天」に決定)。eBayの事例から考えると、中国事情にどれだけ適応できるかが気になるところ。Googleの撤退により、圧倒的なシェアとなったバイドゥの検索トラフィックをいかに活かせるかが、成否のカギになりそうだ。
日本からタオバオへの出店~なかなか高いハードル
ここまでタオバオの概要について取り上げてきたが、日本からタオバオを利用するシーンを考えてみよう。
まず、タオバオを使って商品を購入するというケース。中国から物を買うときには、送料や関税、出店者が対応してくれるかなど、考慮しなければならない要素が多い。ヤフーが「Yahoo! チャイナモール」を始めているので、個人として利用するのであれば、同サイト経由で済ませた方が無難だろう。
逆パターンのタオバオに出品しようというケース。Yahoo! チャイナモールの逆版として、中国からYahoo! ショッピングの商品が買える「淘日本(タオジャパン)」も立ち上がっているが、Yahoo! チャイナモールと同じく、タオバオの本サイトとは別のサービスとして扱われている。タオバオのトップページからのリンクは、左上のナビゲーションに申し訳程度に貼られているだけで、あまり目立っていない。

当然、得られるトラフィックは本サイトに見劣りするだろうし、中国国内のショップで購入するよりも送料等の諸費用がかかる。それでも「買いたい」と思われるような特徴的な製品でないと、売れ行きは期待し辛いだろう。
そこでタオバオでの収益を最大化するためには、「直接出店する」という選択肢が出てくるだろう。だが、CtoCのECサイトとはいえ、国外からタオバオに出店するハードルは高い。申込書を準備する以外に、パスポートの提出、決済システムであるアリペイへの登録、中国での銀行口座の開設、さらには中国人の保証人を見つける必要がある。
出店後の運用フェーズではチャットで即時の問い合わせ対応をする必要もあることも考えると、さらにハードルは上がる。ショップの出店や運営を代行してくれる業者はある程度存在するので、既に中国とのパイプを持っていたり、よほど中国語に堪能でない限り、パートナーとなる代行業者を探した方が安全かもしれない。
中国市場の巨大さ、タオバオの市場占有率に加えて、EC化率の伸びしろなども考えると、ECサイト運営者にとってタオバオは無視できない存在のはずだ。出店や運営のハードルは高いだろうが、成長している市場で勝負した方が勝率は高い。中国で勝てる差別化できる商品を持っているなら、一度は出店をまじめに考えてみても良いだろう。