もうひとつのシナジーの意義を考えてみよう
アナログとデジタルのシナジーには、CRMとの連動という意義もあります。従来のダイレクトマーケティングには、冒頭の「1.ダイレクトコミュニケーション」に問題がありました。つまり、アナログ媒体だけではユーザーと情報交換を行うことができませんので、コールセンターや大規模な分析システムを構築しなければならず、収支を改善することが難しかったのです。
ところが、アナログを通してデジタルに導くことができれば、ユーザーの最新profileや行動履歴さえも収集できるようになってきました。この組み合わせによってDRMの可能性はさらに広がったのですが、同時にCustomer Insightを考慮するという意味でCRMとの境目が曖昧になってしまいました。では、この二つをどのように区別するべきでしょうか。
単純に同じ商品(サービス)を売り上げるためのコストを比較してみます。ここではDRMを一般消費者に訴求する手段、CRMを顧客に対する訴求手段としましょう。
- DRM:新聞広告による販売でのレスポンス率を3%
- CRM:顧客へのEメールでの販売におけるレスポンス率を30%
この場合、効果(レスポンス率)から見て単純コストで10倍の開きがあることになります。また、新聞広告への出稿コストとEメール配信コストを比べてみても、Eメールの方が安いのは明白です。
それならば、なぜDRMを行うのでしょう? その理由は一般消費者と見込み顧客&顧客を振り分けるために他なりません。先程の「1step型」と「2step型」購入フローの存在理由はここにもあるのです。整理してみるとこうなります。
- 広告に無反応→論外:Consumer
- 直接商品(サービス)購入→1step型:Customer
- 商品(サービス)は購入しないが資料(カタログ)を請求→2step型:Prospect
つまり、このようにユーザーのprofileを収集し、振り分けるためのGateway的機能がDRMでもあるわけです。
では、私たちはここで振り分けた3つの層に対し、どのような施策を取るべきでしょうか。あくまでもこれらを商品(サービス)を売るためのベースとして考え、未購入者(ConsumerとProspect)をターゲットとして捉えていくか、見込み顧客と顧客(Customer)を中心にそのニーズを探っていくか…前者ならDRM、後者ならCRMになるのです。
つまり、ここではDRMはCRMを行うための初期投資として考えることができるのです。当然、あくまで見込み顧客の有無を調べるための手段であれば、媒体に高いコストを掛ける必要はありません。重要なことは、まず媒体ありきでプランニングするのではなく、見込み顧客と顧客層の獲得数を想定し、それに見合った結果をもたらすことのできる媒体を選択する手法を取ることです。
もちろん、ROIを考えながらコスト的にバランスの良い媒体を選ぶ必要があることは言うまでもありません。例えば、前述の「2step型」のケースなどでは、第一の手段として「キャンペーンサイトでのインセンティブ登録者募集・許諾(Permission)」⇒第二の手段として「DM送付」というように、目的と合わせて媒体を組み合わせるのが効果的でしょう。
これらの連動の結果、単に商品を購入して去っていく刹那的顧客から、ロイヤリティの高い真の「顧客」を作り出していくことが可能になります。次回は、この優良顧客について考えてみましょう。
