デジタルとアナログはシナジーできるのか?
では、DRMの概念を頭に入れていただいたうえで、デジタルとアナログのメディア(手法)同士がDRMでシナジー可能なのかどうかを考えてみることにします。まず、DRMを提供する際に活用すべきメディアは何でしょう? 対象層で分けてみます。
- (1)不特定多数(Consumer)への訴求
- TV、ラジオなどの電波媒体
- 新聞、雑誌(有料)などの紙媒体
- フリーペーパー(無料カタログ、クーポン誌含む)
- アンビエント(環境広告)、OOH(注1)、店舗(ポスターなど)
- Webサイト
- (2)特定対象者(ProspectまたはCustomer)への訴求
- テレマーケティング(電話)
- ダイレクトメール
- Eメール(携帯電話含む)
- その他
ただし、(2)を活用するためには自前で対象者リストを用意しなければなりません。もしそれが潤沢にあるようならば問題はありませんので、ここではちょっと除外しておきます。問題は(1)です。電波媒体はどうでしょうか? 一度の露出で非常の多くの潜在顧客にアピールすることが可能で訴求効果も抜群ですが、何よりもコストが掛かりますので誰でもできることではありません。また、Consumerの事前セグメントが困難です。
紙媒体は伝統的な手法です。ある程度の情報量を掲載できますが、限られた紙(誌)面で商品のシズル感を出すことが難しく、クリエイティブの出来に大きく左右されがちです。また、新しいコンセプトの商品で説明に「動かして見せる」ことが必要な場合には適していませんし、ユーザーセグメントも媒体の読者層に引きずられてしまうことになります。
OOHなどの生活環境広告は、その掲示形態と内容によって効果が大きく異なります。ポスターから音を出したり立体に見せたりするなど、相応の工夫があれば話題を呼びますが、ただ露出させただけではConsumerに次のアクションを起こさせるのは難しいでしょう。
以上のアナログ3媒体は初見でインパクトを与えられるものの、情報の絶対量が限られますし、一度発信者の手を離れてしまえば内容をコントロールすることもできません。つまるところこれらは、ある意味でAISAS(注2)の最初の「A」=Attentionのみを担うものでしかないのかもしれません。
これらに対し、デジタルメディアであるWebサイトは明らかに性質が異なります。まず、サイトそのものにConsumerを誘引する能力がなく、他のメディアへの露出を図らねばなりません。その代わり、情報掲示キャパシティは抜群ですし、何よりも情報発信者が自らの手で情報を更新することで、内容と絶対量をコントロールできることが大きな魅力と言えるでしょう。
このように、不特定多数をターゲットにしている媒体でも、デジタルとアナログではその特性はまったく異なっているのです。何となく、シナジーは難しいような気がしてきました…。

