【解析結果】実データと完成したレポート
実際の結果を見てみよう。今回は筆者のサイトを使って検証してみた。Google Analyticsで、次の2つのカスタムレポートを作成した。
1.外部リンクのクリック数
外部リンクをクリックした時にセットされるカスタムイベント変数をディメンションとしてカスタムレポートを作成。指標は、最終的に必要な5つを追加した。

2. 戻った時のウィンドウ状態
外部リンクをクリックした後、同一訪問中にサイトを再訪問した時にセットされる上記の「ExitAndBack」というイベントカテゴリをクリックすると、同一ページに戻ったか(つまり同一ウィンドウで遷移して戻った)、別ページに移動したか(つまり別ウィンドウ)に分類できる。

これらの数字を手でExcelにコピーすると、別のシートで統合・整形したレポートに値が反映されるようにした。APIとマクロを使えば、1クリックの自動更新も可能だ。
目的や対象を明確に定義し、設計デザインしたうえで、プロトタイプによって事前の妥当性検証を行う。形が見えてきたところで、課題や新たな要件を早期に発見し、軌道を修正していく。製品やWebサイトを作るのも、アクセス解析のレポートを作るのも同じなのだろう。
【考察】閲覧ページ数や滞在時間は変わったのか?
1. 直帰を除いた訪問のうち53%が外部サイトへのリンクをクリックしている
筆者のサイトは、メディアサイトへの寄稿記事(本記事もその1つ)や、出演するイベントの案内ページへのリンク、iPadアプリへのリンクが多いため、妥当な数字だろう。
2. 60%がまたサイトに戻って来ている
半数以上が、外部サイトを開いた後もサイトに戻って来ている。予想以上に多かった。
3. サイトに戻った訪問のうち86%は同一ウィンドウ
サイトに戻った訪問のうち、わざわざ別ウィンドウで開いていたのは14%。14%しかいないマイナー派ととらえるべきか、14%もいるとみるべきか。

4. 平均サイト滞在時間と平均閲覧ページ数の差は30%
「別ウィンドウでわざわざリンクを開くような人は、元のページを残して閲覧を継続したい意図があるに違いない」と予想していた。その予想どおり、別ウィンドウで開いた訪問の方が、閲覧ページ数と滞在時間が30%増えている。
まとめると、外部サイトへのリンクをクリックした半数以上のユーザーがサイトに戻ってきているが、ほとんどは同一ウィンドウでリンクをクリックしている。別ウィンドウで戻ってきた15%のユーザーは、元のサイトの閲覧が30%増える。
さらにテストすべきなのは、“同一ウィンドウでの外部リンクを受動的にクリックしている人が、受動的に別ウィンドウへ遷移させられた場合に、閲覧行動に影響が表れるのかどうか”だ。戻ってきた訪問のうち8割以上が同一ウィンドウを利用しているので、リンクを別ウィンドウのみで開くページを作成してA/Bテストを実施し、全体の平均閲覧ページ数や平均滞在時間に与える影響を調べると、決着がつきそうだ。
【今回のねらい】データドリブンな意思決定を可能に
仮に、A/Bテストを実施して別ウィンドウで開くように変更した結果、サイトの閲覧ページ数や滞在時間が増えたとしても、それは、別ウィンドウ派の主張する効果の1つが、単に数値化されたに過ぎない。「その効果は、ユーザビリティを犠牲にするだけの価値があるのか?」「ブランドへの長期的なダメージは無いのか?」。最終的には、総合的に判断する必要がある。
だが、ここで重要なのは、“その判断に必要なデータを少しでも多く準備できるかどうか”。そして、“その判断の結果をデータで検証できるかどうか”という点だ。組織とサイトをこの状態に持っていくことができれば、仮説の立案と実行、検証を繰り返すことで、ノウハウが確実に溜まっていくはずだ。慣れれば、大きく大胆な最適化も可能になる。今回の検証は、その準備段階にすぎない。小さな検証やA/Bテストを繰り返すのが「最適化」ではないのだ。
楽天グループ全体で最適化の考え方と実践を定着させるため、今後もクリエイティブに工夫しながら前進していきたい。
- クリエイティブに考えて工夫すれば、ユーザー行動を解析できる
- 解析の成果はアクションアイテム。結果を見る前に、判断と対策の方針を決めておく
- 解析ツールのレポートよりも、最終的に欲しいレポートをイメージし、それに近づけていく
- データドリブンな意思決定ができる環境を作るのが重要
『現場リーダー必見! アクセス解析実践日誌』バックナンバー