5ステップから判断するAnalyticsの成熟度
北條氏はデータ、エンタープライズ、リーダーシップ、ターゲット、アナリストの5つのステップについて、頭文字を取ってDELTAモデルと呼び、それぞれのステップについて詳しく解説した。
まずAnalyticsに取り組むに当たり、自社のデータの独自性を明確にすること。「アンケートを行うと88%の企業が『差別化されたデータを持っていない』と回答するが、実際はまったく他社と同じデータだということはない。独自性を知り、それを活かすことが重要です」と北條氏。
次に、Analyticsに全社(エンタープライズ)を挙げて取り組むこと。全社で取り組めていると感じている企業は全体のわずか20%。データ分析の結果をアクションにまで結び付けること、全社レベルでシステムやプロセスを統合していく必要があるとした。
続いて挙げられたのは、リーダーシップ。経営層の実に70%は、客観的事実に基づく意志決定を全面的、あるいは十分にサポートしていると感じているという。北條氏はそこからさらに一歩進み、現場のマネジャーなども先頭に立ってAnalyticsに取り組む必要があるとした。
そして、ターゲット。Analyticsはあらゆる面で活用できる。実行したい重要な目標は何なのか、投資対象とするのは顧客理解・管理、オペレーション・財務など、どの機能なのか。ターゲットを決めてAnalyticsを進めていかなくてはならないという。
最後に、アナリスト。分析に当たる人材が社外のアナリストなのか、社内にいるのか。どれくらいのレベルなのかというのも成否を分けるカギになってくる。
以上、DELTAモデルの5つのステップを軸に企業を見てみると、Analyticsの成熟度を5段階に分けられるという。5つの軸で企業を5段階に評価した分析表は次の通り。
「日本企業はだいたい第2~第4段階くらい。ただ、すばらしいデータウェアハウスを持っていて、分析環境も整っていたとしても、トップの理解が得られていなければ、活用の幅は限定されてしまいます。ですから、この5ステップについてバランス良くステージを上げていただくことが、Analyticsを武器とする企業には必要なのです」(北條氏)
北條氏は、こうしたAnalyticsを武器にしている企業として、製造業の大手B社などの事例を紹介。同社はマーケティングの投資対効果(ROI)向上を図り、アクセンチュアの専門部署のサポートによってROIを可視化。テレビやネット、屋外広告にインセンティブといった施策ごとの影響を浮き彫りにして、次年度以降の予算配分を最適化できるように役立てたという。
北條氏は、Analyticsという言葉からはシステムがクローズアップされがちだが、企業でAnalyticsを進めていくためにはDELTAモデルを改善していく必要があるとし、最後に「人材の育成や企業文化の変革など、Analyticsの要素は一夜にして構築できるものではありません。従って、今すぐにでも着手する必要があるのではないでしょうか」と講演内容を総括した。
MarkeZine Day Premium 2010でのSAS Institute Japanによるセッション『ソーシャル・メディア時代を勝ち抜く、ビジネス・アナリティクス - 分析を武器とするマーケティング』の講演資料を無料公開中。【ダウンロードはこちらからどうぞ】
MarkeZine編集部が業界キーマン達にインタビューを行ったスペシャルPDFコンテンツ『データ分析最前線』も無料公開中です。ぜひご一読ください。
