ユーザー行動は既存のコンテキストにも左右される
なぜ、このように普段多くのWebサイトを利用しているユーザーでも、タスクを達成できない場合があるのでしょうか? これは、テスト終了後にアイトラッキングのデータを見ながら、インタビューを行うと一目瞭然でした。
チェックポイント1
・年間購読に含まれない7月号も購入するために、「売上ランキング」「同じカテゴリの商品」の中から7月号を探したが、見つからなかったため、検索を利用。
<被験者の声>同じDBマガジンなので関連情報などで掲載されているかなと思ったが見つからなかった。
⇒ユーザーがあわせて買いたいものが関連づけられていない。
チェックポイント2
・年間購読申し込みと他の商品の購入が同時にできないことに対してエラー表示がでているが、その部分は読まれずに、「お会計へ」ボタンをクリックしている。さらに、カートの中に1タイトルの商品が入っており、追加した商品が「後で買う商品」に自動で移動させられたことに気づいていない。
<被験者の声>全然気づかなかった。「お会計へ」のボタンを押したら、会計プロセスにすすめたので、カゴに入れた2つの商品を買っているつもりだった。
⇒エラーに気づいていない。後で買う商品リストは、ページをスクロールしなければ見ることができない。
青丸が大きいほど、その部分を注視している。

チェックポイント3
・被験者は、このようなECサイトの利用に慣れているので、初めて訪れたSEShopサイトでも他のサイトと同様に買い物ができるだろうと思って、「ヘルプ」などに含まれている「はじめてご利用のお客様へ」の情報には目を通さなかった。
<被験者の声> 普段ECサイトをよく利用するので、普通に利用すれば購入できるだろうと思った。
⇒サイトの利用がはじめてのユーザーが「はじめてご利用のお客様へ」を必ずしも読んでいるわけではない。
ちなみに、今回の被験者の購入プロセスをフロー図にするとこのようになります。
この被験者の場合、普段よく買い物に利用しているAmazonでの経験がECサイトを利用する際の概念モデルとして働いてしまったと思われます。そのため、SEShopが実際に提供するモデル(「後で買う商品」への追加や「同時購入不可」のエラー表示など)には目も触れなかったのでしょう。
このように、普段利用しているサイトでの経験が事前のコンテキストとしてECサイトの利用経験を規定してしまい、それがエラー表示に気づかないなどの視線の動きとしても現れることがあります。人間の視線は目の前にある刺激よりも、既存のコンテキストに影響されやすいのです。