複雑化するマーケティング手法と、これからどう向き合っていくか
冒頭、原水氏は「これまでのWebサイトの変遷を振りかえってみましょう」と観客に投げかけた。かつてのWebサイトは、企業情報の公開、製品情報の提供など、情報を提供するだけでその役割は果たされていた。しかし、多くの企業が情報の公開をはじめると商品の企画力やオンラインマーケティングで差別化を図る必要性が出ているという。その結果、様々な取り組みにチャレンジすることが常識となりつつあるのが現在の流れだ。
「あらゆるツールを駆使してサイトを運営するのはいいが、ちゃんとそれらが一貫した取り組みになっているか、手段が目的化してしまってはいないか、一度見つめ直してみてほしい」と原水氏は警鐘を鳴らした。
最近、原水氏がお客様からよく聞く意見としては「マルチデバイスに対応していく中で、サイトの運営コストがかさんでしまう」「効果測定をしているのに売上が上がらない」といった内容。これらの悩みはWeb担当者に共通する悩みと言えるだろう。
「マーケティングは手段であって目的ではない。Webサイトを活用してビジネスを推進していくには、行き当たりばったりでツールを導入するのではなく、戦略を持ちつつツールの導入を進めていくことが必要」とした。
企業のマーケティング担当者が陥る3つのジレンマ
続いて、原水氏は、最新情報をキャッチアップしているマーケターこそ陥りやすい、3つのジレンマを指摘。マルチデバイス、SEO、ソーシャルメディアそれぞれについて以下のように言及した。
スマートフォンのトラフィックが増えているのを見て、安易にスマートフォンサイトを新たに作ってしまう。PCサイトやフィーチャーフォンのモバイルサイトを捨てるわけにもいかず、管理が煩雑になっている。
SEOのやりすぎは逆効果を招くこともあるので禁物。アルゴリズム変更も頻繁にあるのでアルゴリズムとのいたちごっこにもなりやすい。SEO対策は必要だが対策することが目的になってしまうケースも多い。
TwitterやFacebookのアカウントを作ることが目的になってしまっている傾向にある。既存の見込み客を誘導する仕組みがないと作っただけで終わる可能性が高い。
「これから何が流行るのかは誰にもわからないが、自社コンテンツをしっかり管理していくことは重要。そのために自社サイトに合ったコンテンツ管理のプラットフォームをきっちりと見なおしていくことが必要」と答えた。
サイト運営・管理~オンラインマーケティングの実践まですべてを網羅
サイトコア株式会社はもともとCMSのベンダーであるがオンラインマーケティング分野のサービスも早くから提供。サイト運営・管理~オンラインマーケティングの実践まで、Webビジネスを推進する上で必要な要素が揃ったSitecore ソリューションは海外を中心に多くの顧客から支持されている。
Sitecoreが提供するソリューションの1つがSitecore CMSだ。Sitecore CMSのバックエンドは柔軟性の高いシステムになっておりコンテンツ管理だけではなく、在庫データベースとの連動なども想定された作りとなっている。
一方、お客様の動向をトラッキングするシステムとして、CMSとともに提供されているのがオンラインマーケティングシステムだ。ユーザーが登録や資料請求をした時にはCRMにデータを格納できる。資料のダウンロードをした後にニュースレターを購読、といった行動をユーザーが行った際にも、その動向をしっかりと把握することができる。
「思い起こすと2年前にiPhoneが突然売れました。また、昨年はアンドロイドが爆発的に売れました。これは3年前では分からないトレンドです。これら新しいデバイスで利用されるテクノロジーはHTML5に変わっていきます。このようにめまぐるしくトレンドが変化する状況においては、まずコンテンツをしっかりと管理していくことが重要なポイントです」と原水氏は強調した。
では、Sitecore ソリューションで解決できる課題とはどのような課題だろうか。
まず、挙げられるのが近年ニーズが高まりつつあるマルチデバイスへの対応。デバイスによって画像が自動的にリサイズされ、デバイスごとにコンテンツを出し分けることも可能だ。またアクセス解析機能はもちろんのこと、SEO強化機能もあるのでキーワードやメタタグを管理画面から簡単に設定することもできる。その他、最近のトレンドであるソーシャルメディアとの連携や、顧客DBと連動させたマーケティング施策を実践する、などもできる。その他にも次のような機能が搭載されている。
ユーザーのGEO IPやGPS情報を使った所在地判別や、検索キーワード、リファラー情報などに加え、履歴データに基づいて想定されるユーザーの属性・特性に合わせたコンテンツを配信することで、簡単におもてなしを提供できる。
専門的な知識は必要はなく、テキストや画像などを複数登録してチェックボックスや項目を選択するだけで、A/Bテストを簡単に設定できる。
ページの中でどこがクリックされているのか、視覚的に判断することができる。
履歴データやプロファイルに基づいて、表示させる内容(テキスト・画像・バナーなど)をパーソナライズすることが可能。メール配信の件名などの多変量テストをすることもできる。
「Sitecore CMSを活用すればサイトを一括管理することで、レポートの作成やデザインテストなど、様々なプロセスを簡単に把握することができる。また、実際のデータを元に仮説・検証を繰り返すことが重要。企業としては効率が良くなるし、ユーザー側から見ればおもてなしをされているような感覚が得られ、ユーザーとのきずなが生まれる」(原水氏)。
事例で見るSitecore ソリューション活用法
講演後半ではSitecore ソリューションを導入している企業の事例が原水氏から紹介された。ダイジェストで紹介していこう。
Mazda Australia
車メーカーサイトの一番のコンバージョンは試乗予約。CMを見て試乗を申し込む人が多いようだ。いくつかの車を見た後に申しこんでいるのであれば、試乗の際にアクセスログデータの結果から、他の車の試乗もお勧めするといった施策を打つことも可能だ。どこにコンバージョンゴールを置くのかが重要であり、Webのログデータとユーザー情報をマッチさせることで、このような質の高い営業が可能となる。
マンチェスター・シティー・フットボール・クラブ
マンチェスター・シティー・フットボール・クラブはチケットの発券システム、ファンクラブのシステムなどいろいろなシステムが散在していたが、1つのプラットフォームにまとめるため、Sitecore CMSの導入を決定。Sitecore CMSは拡張性、柔軟性に優れているため、散在するシステムを1つにまとめるといったニーズへの対応も可能だ。
LEGO
サイトコアの本社はデンマーク。ヨーロッパ圏でビジネスを推進する際には他言語対応が必要となるため、Sitecore CMSも他言語対応はもちろん装備している。LEGOの場合は、Sitecore CMSを活用し各国それそれの言語に対応。アメリカではECも展開している。
ビジネスの速度を上げるつもりが逆に足を引っ張られることになりかねない
CMSを導入し、アクセス解析ツールを導入し、マルチデバイス対応をして、ソーシャルメディア対応もはじめて…と、いろいろなツールを導入しサイトを運営していると、ビジネスの速度を上げるつもりが、気づけば逆に足を引っ張られていることが多い。
これからは、お客様の声に耳を傾け、おもてなしをしながら、反応を評価するという姿勢で「きずな」を生み出すことに力を入れるべきだ。PVを稼ぐことに注力するのではなく、コンバージョンレートにフォーカスした成果ベースのサイト運営をしてもらいたいと語り、原水氏は講演を締めくくった。