「A&E」実践の4ステップ(Assumption /仮説)
ここから、「A&E」を実践するためのステップについて、遠藤氏は解説をはじめた。サントリー酒類の事例を参考にしつつ、「A&E」を実践するためには、4つのステップがある。まずはAssumption /仮説のステップを紹介していこう。
ステップ1(Assumption /仮説):ゴール定義で目標を明確化する
まず始めに、ビジネスに貢献するゴールを定義する。目的や成し遂げるべき指標をあいまいにしたまま企画やデザインなど施策の議論をしても正解が見えにくく「的(ビジネス成果)を決めずに、どこかに矢(施策)を放っても当たるわけがありません」と遠藤氏は指摘する。
ではゴールとはどのように定義すればよいのだろうか。遠藤氏は次のようにアドバイスを送った。
「ゴール定義の際に重要なのは現場担当者と上長が数字を共有することです。施策を失敗するのはOKですが、ゴールを理解しないで施策を進めるということはNGです」
また、サントリー酒類のように購買行動とWebが直接結びつきづらいビジネスを展開している企業の場合、Webのゴールをどこに定義したらよいのか分からなくなるケースも多い。そのような場合は「多少乱暴でもよいのでビジネスに貢献している数字はこの数字」といったように定義してしまうことも必要になるという。例えば、不動産や車メーカーなど店舗型ビジネスの場合は地図ページのユニークユーザ数と来店数の相関を見てみる、などだ。
「ゴールを曖昧なままにせず、完全でなくともビジネス貢献に相関するゴールを決めることが重要です。また、社内を説得するための数字が欲しいのであればアンケートなどで検証することで、数字に落し込んでいきましょう」
ステップ2(Assumption /仮説):ユーザ定義で実在する個人をイメージしよう
ステップ2の説明を始める際に遠藤氏は「最近、ユーザに直接会いましたか?」と会場へ問いかけた。「ターゲットに会うことなく架空のペルソナをターゲットに設定したり、年齢/性別/地域などおおざっぱなデモグラフィックで定義したりすることは絶対に避けた方がいい」と遠藤氏は指摘する。
実際、ユーザ定義ができていない状態で、ボタンの配色などクリエイティブベースの最適化をしても成果はさほど上がらないどころか、1年繰り返して20%コンバージョンが落ちてしまった例もあるという。では、企業はどのようにユーザ定義を行っていけばよいのだろうか。各企業の事例を紹介しよう。
事例1:サントリー酒類
サントリー酒類では、資料請求のあった飲食店に飲みに行くことで実地調査を行っている。また、ターゲットユーザを実際に呼び、リアルな状況でWeb利用を観察することもあるという。「頻繁にターゲットユーザと接触する機会を持つことで、ターゲットユーザの変化をしっかりと把握できる」(遠藤氏)
事例2:「Amazon」と「クックパッド」
Amazonではリアルユーザの動向を掴むため、ジェフ・ベソスCEOを含む全社員が定期的にコールセンターで研修を受ける。すべての社員が、厳しいクレームを含む電話に直接受け答えしないと、顧客の本当の姿を理解できないと考えているからだ。
また、クックパッドの場合はユーザ定義を行う際に、ペルソナやターゲットセグメントといった手法を試してきたが、全然上手くいかなかったという。逆に本当に存在する一人の人間のためにサービスを企画する、という方針に変えたところプロジェクトが成功する確率が高まったようだ。
これらの事例に共通して言える点として遠藤氏は「コストをかけて何か行うというよりも、お客様を知る努力、肌感を持つ努力をするということがポイントです」とまとめた。