Q. 「シュフティ」の事業モデルは、どのような発想で生まれたのでしょうか?
“新しい労働力が新しいビジネスにならないか”ということを検討し始めたのは、2003年頃です。当時は、「2007年問題」(団塊の世代の一斉退職に伴う労働力不足)が話題になっていました。一方で、ブロードバンドやインターネットの普及、パソコン一人一台時代の到来などのキーワードも登場していた頃で、そこから「在宅ワーク」に興味を抱くようになりました。
最初は、企業と在宅ワーカーの間に入る仲介業としてスタートしましたが、このやり方だと在宅ワークという働き方は広まっていかないことに気づき、企業と在宅ワーカーが直接やり取りするマッチングサイトの方向へ進んでいきました。
ですから、シュフティの事業モデルは発想から生まれたというより、試行錯誤の上、必然的に今の形になっていったという感じです。
Q. 在宅ワーカーは、どのように集めたのでしょうか?
在宅ワーカーの方々の最大のテーマは「仕事の確保」なので、マッチングサイトに人を集めるのは、さほど大変ではありません。しかし、優秀な在宅ワーカーを集めるのは大変です。
私たちは、優秀な在宅ワーカーを集めるより、ワーカーを優秀にすることに発想を変え、在宅ワーカーがスキルアップできる仕組みを構築しました。
Q. 「シュフティ」を軌道に乗せるにあたり、苦労した点を教えてください
何よりも、発注する企業側に利用してもらえないと始まりません。しかし、個人である在宅ワーカーに仕事を発注するのは様々な面で抵抗があり、メリットよりもデメリットが先行しがちです。
そこで前述のとおり、登録している在宅ワーカーの能力を全て数値化し、過去の実績などの評価する制度を導入して、企業が在宅ワーカーを選ぶ際に必要とする指標を全て公開しました。これにより、仕事の種類に応じて最適な一人を簡単に選べ、安心して発注できるようにしました。その他にも、企業の手間を極限まで下げる工夫をしています。まだまだ道半ばですが、いかに企業に使ってもらえるサイトにするかが、努力のポイントです。
Q. 利用企業にとってのメリットを教えてください
何よりも「コストを削減できた」という声を多く聞きます。
また、通常のアウトソーシングの場合、数千円~1万円程度の業務を快く受けてくれる業者はないので、そもそもそのような超小規模な案件はアウトソーシングすることすら不可能でした。しかし、シュフティの場合、超小規模な案件がちょうど良く、そのためにスキルアップし、企業に満足してもらうために努力している在宅ワーカーがたくさんいます。今まで顕在化してこなかった業務が、シュフティというプラットフォームができたことでどんどん流通し始めています。
今までは、誰でもできるような単純な作業も自分でやるしかありませんでした。あるいは、部下に振ったり派遣やバイトを雇ったりしていました。そのために、机やパソコンを用意したり、雇用契約などを結び労務管理したり、とにかく手間とコストがかかるわけです。
しかし、シュフティではそれが簡単に発注できる。そのためのプラットフォームを、私たちは日々改善しています。そして、この新しい労働力をいかに使うかが、今後の企業の競争優位性になっていくのだと考えています。
Q. 今後、企業の在宅ワーカー活用はどのようになっていくと思いますか?

シュフティで簡単に発注と決済ができるようになればなるほど、流通する案件の単価も下がっていくと思います。
従来、発注には手間とコストが結構かかるので、例えば、数千円規模の仕事のために発注してくれる会社はありませんでしたし、そのような仕事も流通していませんでした。しかし、シュフティによって、発注にかかる手間とコストが限りなくゼロに近づけば、数百円規模の案件もアウトソーシングするメリットが出てきます。
本当にちょっとした業務でも、コスト削減を目的としたアウトソーシングが可能になります。働く人全てに、自分の助手がネットの向こう側にできるようなイメージです。好きなときに好きなだけ、最適な人に究極の低価格でアウトソーシングできるようになるのです。
一方で、受注する側も超小規模な案件を大量に処理することで、まとまった報酬にすることが可能になります。電車での移動中、待ち時間、入浴中、スマートフォン片手にちょっとした空き時間で仕事を処理していく新しい働き方が生まれます。
Q. 貴社の今後の展開を教えてください
新しい働き方を創造し、具現化するために必要な仕組みやプラットフォームの構築を、実直にコツコツ進めていくつもりです。
Q. 最後になりますが事業をすべらせないためのコツを教えてください
人の話を聴くこと。そして聴かないこと。そのバランス感覚を養うことがコツです。
インタビューを終えて
数値化は、対象の良し悪しを判断する際の分かりやすい指標である。企業であれば、人事考課の際の査定点数、インターネット広告であれば広告効果のCTRやCPAなどである。
今回紹介した「シュフティ」は、今まで数値化がされにくかった在宅ワーカーのパフォーマンスを数値化することで、企業にとって安心して仕事を依頼できる在宅ワーカーサービスへ昇華させた。
世の中には、まだまだ数値化されていないものが沢山ある。数値化されていないものを数値化することにより、そこから新たな産業が生まれるということを「シュフティ」が示しているのではなかろうか。