デザイン決定プロセス
ターゲティング手法の進化に合わせて、デザインを最適化する試みは近年進化を遂げています。例えば、バナーのクリエイティブをスプリットランで最適化したり、ABテストによって効果の高いデザインに変えたりなど、効果を数値化し、最適化しようという動きが起きています。
同時に短期的な成果だけではなく、長期的なエンゲージメントやブランディングなども計測し最適化しようという流れもあります。しかし、明確な評価指標を元にデザインの意思決定を行うというプロセスは存在していません。デザイン、特にビジュアルデザインの判断材料となるものが圧倒的に少ないのが、現実なのです。
デザイン構築の5段階モデル
一般的に、Webデザインにおける構築プロセスとして有名なのが、UXデザイナー James Garrett氏が提唱した5段階モデルです。
今でも利用されているので、ご存知の方も多いと思いますが、5段階モデルを簡単に説明すると、ターゲット・ペルソナ→コンテンツ→サイトマップ・導線→ワイヤーフレーム→ビジュアルデザインというように、各ステップを意識的に階層化して、検証しながらデザインを構築していくという考え方です。
仮説検証の方法としては、初期でネットアンケートやグループインタビューなどを行い、その後、ユーザビリティテストやユーザー調査を行います。例えば、導線やワーディングを検証するために、ユーザーにタスクを与えてスムースな遷移が行えるか、などのテストが行われます。
これによって、事前に想定していたものが正しかったのか、想定通りの効果を挙げているか、などを検証することができます。
このように、ビジュアルデザイン以外はユーザーにフォーカスした検証プロセスが存在します。しかし、肝心のビジュアルデザインについては、先述のように少数の感性によって最終決定されているのが現実です。しかし、マーケティングの局面においては、ビジネスゴールにフォーカスしたビジュアルデザインが必要とされます。
一貫性を持たせるための構築プロセス
ビジネスゴールという目的に対して一貫性を持ち、かつ成果に対して最適化を行うために、デザインの決定プロセスに対するルール作りが求められている状況です。
それにはまず、「デザインは分からない」「デザインについては誰かが決める」という観点ではなく、デザインをビジネスゴールを達成するための重要な要素として捉え、どのデザインがユーザーに好まれるのかを知ることが大切と言えます。
実際、デザインを構築する方法としては2つのアプローチがあります。1つは、作り手側の視点から、ゴールをぶらさずに作るアプローチ。もう1つは、受け手側の視点から仮説検証を行うアプローチです。一貫性を保つため、ビジネス視点とユーザー視点という2つの視点からデザインを構築していくのです。
作り手側の視点からのアプローチとしては、まず企業が持つビジュアルアイデンティティを始めとする各種ガイドラインを精緻化するという方法があります。
具体的には第二回で詳細を説明しますが、弊社でデザインを作成する場合は、まずデザインガイドラインを作り、デザインに対する理由を明確にし、一貫したルールによって企業とユーザーがコミュニケーションを図れるように想定します。
また、受け手側の視点からのアプローチでは、弊社が開発した「クリエイティブサーベイ」という印象評価システムを活用する方法があります。
クリエイティブサーベイは、大量のユーザーに印象評価を行うことで、印象値の傾向、年代による傾向の違い、または見え方に対するリスクなどを抽出し、仮説に対する検証を行ったり、ユーザーの印象の傾向をふまえた素材作成やデザイン開発が可能になるシステムです。
クリエイティブサーベイを利用して、印象スコアの違いがクリック率に結びついた事例や、事前の傾向値をふまえてデザインを開発したことで、企業サービスのイメージが改善された事例もあります。
このように、ビジネスとデザインを分断させずにデザインを構築していくことが、成果につながるデザインを作りだすための第一歩となります。


