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eMetrics Marketing Optimization Summit, New York, 2011

購入まで約2年、長期購入サイクルの顧客分析にアトリビューションを活用したCRM事例


エンゲージメントに影響を与える要因をモデル化

 過去に蓄積された500近くのデータを集めて分析を行った。問い合わせ回数、保証の利用、登録状況、コールセンターへのコンタクト回数などの顧客インタラクションに加えて、過去の購買履歴、購買頻度や時期(Recency)、登録後の期間、購買に至ったチャネル、顧客満足度、店舗名、デモグラフィック情報など、既存の各種データが活用された。

 これらの線形回帰分析を繰り返した結果、以下がエンゲージメント率に大きな影響を与えると分かったという。

  • 最近購買した(リーセンシー)
  • 製品登録を行った
  • エンゲージしたチャネルの種類が多い
  • 高価格帯の製品を購入した
  • 年齢が高い

 詳細な説明は無かったが、これらの要因の関係性を表す計算式を作り、最終的にはエンゲージメントに至る確率順に並べ替えられた顧客リストが作成された。

モデリングの結果 ― さらなる分析とターゲティングが可能に

 顧客リストの作成後、それに基づいた「デシル分析」を行った。デシル分析とは、顧客リストを10等分して、グループごとの構成比を分析する手法だ。実験として全員を対象にメールを送付したところ、トップのグループは平均と比べて2.1倍、ボトムと比べると8倍と高い確率でエンゲージしたことが確かめられた。

 モデリング無しでランダムにグルーピングすると、これらはすべて平均値になっていたところだ。過去の結果で並び替えるのは簡単だが、これは事前に結果を予測して並び替え、実際にその通りになった、という点が重要だ。

 さらに、エンゲージメントスコアと購買率の相関についても検証を行ったところ、高い相関が見られた。エンゲージメントスコアで並べ替えてデシル分析したところ、最初のグループは平均値の5倍の確率で購買に至っている。

 この2種類の検証にあたっては、実験のために全員を対象としたメールが送付されたが、実際のキャンペーンでは一部を対象としたターゲティングを行う。対象となる人数が減るため、予測モデルから別の切り口でリストを抽出し、多様なキャンペーンを実施することで、カバー率を高めることができるだろう。

 エンゲージメントのスコアリングに使われたデータも紹介された。最初のグループ(1行目と4行目)の開封率とクリック率が顕著に高いことが分かるだろう。

継続的な改善が重要 ― アクセス解析の応用範囲は拡大している

 最後に、今後の予定として次の3点を挙げ、セッションを締めくくった。

  • 今回の予測モデルによる結果を、他のモデリングやセグメンテーションに基づく結果と比較検証する
  • (十分な期間を経たら)モデリング結果のエンゲージメントスコアと実際の購買率との相関を調べる
  • 今後のデータ増加に伴い、モデルを継続的に改善していく

 さて、日本では広告の間接効果を把握するための手法として「アトリビューション」が位置付けられることが多いが、今回のイベント全体を通じて「アトリビューション」は手段の一つに過ぎず、各種ツールを活用しながらゴール達成につなげている点が印象的だった。

 最後に筆者が重要と感じたポイントをいくつか紹介したい。

  • 過去を理解するだけでなく将来の予測まで踏み込むことによって、データに基づく意思決定が可能になる
  • 解析の最終目的は、売上増加などのビジネスゴールへの貢献である
  • そのためには、データを適切に処理すること(回帰分析など)も必要になる
  • 目的を明確にすれば、ツールや手法に振り回されたり、「なるほど」と自己満足で終わらない
  • アクセス解析は、全体の平均やトレンド分析から個人にフォーカスしたCRM的な解析へと広がりつつある
  • アクセス解析は、ダイレクトマーケティングやデータベースマーケティングなどノウハウが蓄積された他のマーケティング分野ともっと連携していく必要がある

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この記事の著者

清水 誠(シミズ マコト)

Webアナリスト/改善リーダー。

1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebコンサルティングやIA・UI設計に従事した後、事業会社側へ転身。UX/IAやデジタルマーケティングの導入による社内プロセス改善の推進と事例化を行っている。ウェブクルーでは開発・運用プロセスを改善し上場を支援、日本アムウェイでは印刷物のデジタルワークフローとCMS・PIMを導入、楽天では...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/10/25 17:37 https://markezine.jp/article/detail/14653

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