BtoBサービスサイトのアトリビューション分析例
では、あるBtoBサービスサイトのWeb解析ツールに流入履歴を取得する設定を施し、アトリビューション分析を行った例を紹介しよう。
あるユーザーが「ビジネス課題A」の解決手段をキーワード検索し、リスティング広告を経由して来訪、その際『サービス商材A』のカタログをダウンロードし離脱。その後ブランド指名による自然検索で2回連続の流入を記録した。
次に「ビジネス課題B」のキーワード検索によるリスティング広告経由で再び来訪し、『サービス商材B』のカタログをダウンロード、最後にブランド指名による自然検索で再来訪し、「お問い合わせ」フォームに個人情報を入力・送信。そのユーザーの連絡先を獲得する成果に至ったというケースがある。(図参照)
ここでは、「ビジネス課題A」検索時点でのリスティング広告の力もさることながら、その時のランディングページの貢献も大きい。なぜならその後、同一のユーザーがブランド指名の自然検索による訪問を2回にわたって繰り返しているからだ。商材やカタログの魅力だけではなく、ブランドそのものに興味を持たせた力は大きい。
そして異なる課題である「ビジネス課題B」の検索で訪問した際、「過去のブランド体験」がアシストしたと思われ、一旦は『サービス商材B』のカタログダウンロードで終えたものの、通算3度目となるブランド指名の自然検索による訪問を誘引し、成果を獲得している。
その一方で、2回連続のブランド指名検索訪問の際に「できたこと」は多々あるはずだ。その時点で「ビジネス課題B」に関するテーマも提示できる可能性は秘めていた。
とはいえ、ブランド指名による中間2回の検索流入履歴自体が、どんな企業であるのか? という調査目的であることも考えられるし、またその時点では「ビジネス課題B」が発生していない段階、というケースも考えられる。
いずれにせよ、少なくとも「ビジネス課題B」発生の段階で、『ブランドを想起してもらえなかった』という事実は残る。
このユーザーは中間2回のブランド指名検索流入の際に、新たな課題解決手段を発見できると想起できなかったのか? 「ビジネス課題B」はこのWebサイトには関係しない課題と思い込んだのか? 流入後のユーザー行動解析、つまり各流入履歴のランディングページからの導線解析や流入後の行動履歴を掛けあわせれば、ユーザーのブランド理解へ貢献した要因、あるいは理解と啓蒙に達することの出来なかった訴求の抜け漏れが、ある程度仮説的に導き出せる。
BtoBのWeb解析で見られるユーザー行動パターンは、企業の上半期・下半期に合わせた半年のサイクルであるケースが多い。
そのため、エンゲージメントを高めるには、半年間のビジネスストーリーの中で起こりうる予算獲得や発注先企業選定のタイミングにあわせ、訴求すべき課題解決手段や最新のビジネストレンド、企業の導入事例を積極的に訴求し、ビジネスの現場情報を学べる場所であるという鮮度を保つことが鍵となる。
ユーザーの想いと共に歩むアトリビューション分析
もちろん、これら一人ひとりのユーザーに対して、一つ一つ施策を考えていては際限がないし、予算や工数も相当な規模になる。しかし、集客施策の思想が、消費のゴールに近いユーザー層への集客と成果獲得に特化しすぎてしまうと、やがてはリーチする対象ユーザーの重複傾向を招き、広告費用対効果も悪化する恐れがある。
近年のソーシャルメディアにおける企業ページ進出の例を見るまでもなく、ユーザーの選考プロセスの中間、あるいはユーザーがサービスを想起しない段階にアプローチしてブランド訴求する、Web上でのコミュニケーションシナリオの最大公約数を狙った施策設計は、新規の成果対象セグメントを開拓する上で非常に重要である。
アトリビューション分析は、広告効果とコストの最適化だけではなく、ユーザーとWebサイトのコミュニケーションを最適化する可能性を広げ、市場での優位性を確立するヒントにもなる。
ユーザーのブランド想起と利用意向の向上に至る生い立ちでもあり、点の接点から線の接点、面の接点そして立体の接点へと進化させる、「ユーザーとWebサイトを結ぶ信頼の物語」分析と言えるだろう。